女上司は職場では
昼はクールな年下の女上司。
デスクに呼びつけた複数の主任相手に堂々と案を出す。
「三浦君の班でやってる仕事、これ井上君の班で今考えている内容と合わせたらもっと良い物になると思うの」
「えっ、これ合います?」
「ここをこうしてあれをああすると…どう?」
「ああっ!なるほど!さすが課長!」
ざわざわとフロアが騒ぎ出す。俺の部下たちも興奮が隠しきれていない。
「山田先輩、確か三浦さんの班がやっていた仕事って」
「ああ、滅茶苦茶デカいコンペの奴だな」
「ですよね!気合い入れてこのフロア全員から意見募ったやつだったのにあれがもっと良くなるんですか!」
「別所課長有能すぎる」
「「さす別」」
まだやってきて1週間なのにフロア内ではさすが別所課長、略して『さす別』が今年の流行語大賞になりそうだ。
俺の前の前で喋っている部下2人。男は山田。タフなメンタルをしていてトラブルがあっても落ち着いて対処できる24歳の男だ。女子は佐藤。元気いっぱいの後輩キャラで23歳の新卒女子。
佐藤は元気に、山田は頷くように苺を褒める。
「別所課長ってデキる大人の女!って感じですよね。あーカッコいいなー!」
「ビルの高い所にあるレストランで夜景を恋人楽しむとかも似合いそうだな」
「あー分かりますっ!優雅な大人の楽しみ方が似合いそうというか…恋人さん、いらっしゃるんでしょうか?」
「自分で言ってなんだけど、優秀すぎてみんな尻ごみしそうな気もするな」
好き勝手言う部下。手は動いているからまあいいか。
「助川先輩は別所課長と付き合いたいと思ったりします?」
「助川さんは課長が魅力的に見えるか恐れ多く見えるかどっちですか?」
こっちに矛先が振られ、じぃっと課長席の方から視線を感じる。
魅力的だと言えば面倒な事になりかねない。だけど恐れ多いなんて言うのもどうかと思う。
なのでどちらも言わずに真実だけを言う。
「俺は結婚を考えている恋人がいるからノーコメント」
ぽかーんと固まる部下からそっと視線を逸らす。にこやかに苺は笑っている。うん、いい返事が出来たな。そこに再起動して食いついてくる部下2人。
「助川先輩恋人いたんですか!?」
「そこまで驚かなくてもいいだろう失礼な」
「いや、休日に一人遊び大好きな助川さんが彼女とか結婚とか言い出したら誰でもビビりますって」
そう言われてみればそうか。苺と再会するまで他の女性には目が向かなかったし、忘れようとして色々趣味に手を出したっけ。 ずっと忘れられなかったけど。
「本当にいつの間に…彼女さんとはいつ出会ったんですか?」
「いつだったかちょっとよく覚えてないなぁ」
「助川さん、まさか泥酔していた所を女性に拾われたとかじゃ無いですよね?」
「違う違う」
手を動かし仕事をしながら口も動かす。適当にはぐらかし切ったけど結婚式には呼んでやると言ってしまい。あしらい方に満足したのか視界の隅で満足そうに頷く年下の女上司が見えた。