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年下の女上司



 俺は27歳、助川裕也すけがわゆうや

 大卒の新卒で入社して順調に出世して主任を任されている。

 主任とは数人の部下を率いて1つの仕事をする小隊長みたいなもんだ。ちなみに部下は2人。


 俺たちの班がやった仕事を渡す上司が課長なんだけど、異動で今日から新しい人が課長になる。課長ってのは会社の上から下まで接する立場で、俺のような主任を纏める中隊長だ。


 前評判によると25歳の女性でとても優秀な人物らしい。

 前は超大手で働いていたけど自分から活躍の場を探して我が社へ来たんだとか…ああ、とても心当たりがあるけどきっと違うだろう。



 朝礼でみんなの前で課長のお披露目がされた。四角いフレームの伊達メガネ。サイドポニーの黒髪。就任の挨拶も堂々としており、25歳とは思えない堂々っぷりで彼女の優秀さがうかがえる。



「今日からお世話になる別所苺べっしょいちごです。皆さんの上司として恥ずかしくないように頑張ります」


 

 年下の女上司の挨拶も終わり、今日も業務が進んでいく。俺の席からは少し視線をずらせば女上司の課長席が見える。あの女上司を見ているだけで俺はドキドキが止まらない。頼むから余計なことは言うなよと祈る事しかできない。余計な事言うなよ本当に、頼むぞ。


 初見の人間の眼鏡を見て伊達かどうかなんて普通は分からない。そう、俺はこの上司を元々知っている。祈りが通じたのか向こうも空気を読んだのか特に余計なことは言われずに済んだ。1日の仕事を終えて…よし、声をかけるか。



 ちょうど向こうも退勤する準備をしていた所だった。恐らく俺を見ながら帰るタイミングを合わせたのだろう。相変わらずの優秀さだ。



「別所課長。今よろしいでしょうか?」

「あら助川主任。今なんて言わずあなたの仕事を見ていたら色々聞きたいことができたの。今晩付き合いなさい」

「…はい」



 他の社員や部下がいる前で威圧感のある怖い微笑みを見せる年下の女上司。

 この態度は俺と2人きりになれるようにわざわざこうしただけなのだが…彼女を怒らせないようにしようと社内で噂が走るのは仕方のないことだった。





 会社の入っているビルから外に出る。ここら辺は東京でも都会の方なので飲食店がそこら中にあるが…ありすぎて慣れないうちはどこへ行こうか迷うような場所だ。



「この辺には詳しくないの。どこか助川主任のおすすめの場所を教えてもらえないかしら?」

「そうですね…マグロの煮つけが美味しい個室の居酒屋があるのでそこにしましょうか」

「うん。いいチョイスね」



 先ほどの会社での威圧感が嘘のようにご満悦気味に頷く女上司。

 さっきのは演技だったのもあるがこの機嫌の良さは好物をチョイスしたからだ。

 ビルの中にある居酒屋へ入り、2名で6人用の座敷へと案内される。メニューは覚えているので女上司が満足するメニューを数品その場で注文する。


 それを見てむぅ、と口を突き出されてしまう。



「手際がいいのね助川主任。だけど上司にメニューの伺いを立てなくていいのかしら?」

「聞いても同じものを選ぶでしょう?」

「本当に私の事をよく分かっているわね…ここまで分かっている癖に…」



 女上司と対面して座り。軽く仕事の雑談をする。前は九州の超一流会社にいたのにどうしてこの会社に?好きな人を追いかけて?へーそいつもそろそろ観念するんじゃないでしょうかね。

 しばらくして注文したものが届き始め、全てが届き終わって――







「あーやっと素で話せる!兄さん!兄さん!兄さん!」

「こーら落ち着けって。近所の妹分の感覚まだ引きずってるのかよ苺。」

「プライベートだからいいんですー!久しぶりに名前呼んでもらえた嬉しいっ!」



 人目が無くなったことを確認して座る位置を俺の隣へ移動し、俺の胸へ飛び込んで甘えてくる女上司。ご覧の通りだ。俺が余計なことを言われないようにと祈るのも仕方がないだろう。


 女上司の皮を脱ぎ捨てた別所苺の正体は故郷の近所の2歳下の妹分。

 とても優秀で昔から勉強もできるし、よくわからん偉い賞も色々取っていた。中学からは遠い私立学校に通っていたほど…俺と住む世界が違う人間だった。



「ねえ兄さん!私もう25歳で社会経験だって積んでるし、同じ会社なんだよ?」

「そうだな」



 何を言いたいのかは分かっている。幸せにできる自信が無かったんだ。

 苺と比べて自分があまりにもちっぽけに思えて俺は断り続けていた。



「じゃあもう告白するたびに『俺じゃ釣り合わない』『遠距離だから諦めろ』って断るのはダメだよね?九州に就職してから急に遠距離も理由にされたときは流石に私も怒ったよ?」

「…距離は問題ないとして、俺よりいい男なんてたくさん居たんじゃないのか?」



 優秀な苺に並び立てるような、俺より顔が良い。俺より仕事ができる。俺より金がある。そんな人物は世の中にたくさんいるだろうし。苺ならきっと出会えたはずだ。



「お馬鹿な兄さん。違うよ。私が『一緒に幸せになりたい男』はずっと1人しかいないんだよ」

「…いいのか俺で?」

「うん!私ずっと、これからも兄さんが好き!助川裕也と一緒になりたかったの!!」



 うん、もう観念しよう。自分に正直になろう。



「苺。ずっと俺を好きでいてくれてありがとう。恋人からでいいか?」

「うん!いずれは結婚しようね兄さんっ!」



 こうして2歳下の優秀すぎる妹分は俺を追いかけてきて年下の女上司に。そして恋人になった。

全8話予定

私は甘い癒やしが欲しいんだあああ!!って気持ちを込めて書きました!

連載が出来るようになりたくてがんばったよ…!

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