本能乗っ取り期
本能が、自意識を飛び越えていました。
全く意識のない、2年間を過ごしていました。
本能が自意識を、押さえつけていたのかもしれません。
その意識が戻ったとき、僕はもう、高校を卒業していました。
高校三年の後半の記憶は、思い出そうとしても、全然、思い出せません。
なぜだか、今、僕は、クラスのマドンナと結婚しています。
しかも、小さく可愛らしい娘までいます。
モテない僕の本能は、イケメンなのでしょうか?
彼女に僕は、正直に「覚えていない」と言いました。
すると「『本能乗っ取り期』だね」と言ってきました。
最近、研究が進み、明らかになって浸透してきた、アレでした。
ニュースなどで、聞いたことがありました。
まだまだ、隣にいるマドンナには、慣れることが出来ません。
もちろん、娘にも慣れるはずがありません。
彼女は、その『本能乗っ取り期』に、まだなっていないと言っていました。
歳を取っているほど期間が長く、重症化するみたいです。
だから、少し心配になってきました。
彼女の本能が、ヤバかったらどうしようと、何度も考えていました。
すると、彼女は、僕にこんなことを言い始めました。
『私はどんなあなたでも、好きだからね』
『あなたは、あなただからね』
『あなたは、この世界に、ひとりしかいないからね』
彼女のヤバい本能を想像していた、自分が情けなくなりました。
彼女は、素直な、世界一可愛い女性だと思いました。
「私『本音だだ漏れ期』なのかもしれない」
そう言って、彼女は美しい笑顔をこちらに漏らしてくれました。