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おいでませ地獄二丁目

「ちょっ……!! いやっ……今日何回目っ!? っああアあぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 凄まじい衝撃波と轟音が吹き抜ける機関室で、今日もミナが風に舞うビニール袋のようにもみくちゃになっている。


「ったく、お前いい加減慣れろよ……毎回助ける側の身にもなれっつーの」


「か弱い乙女の細腕でこんな嵐みたいなの耐えれるわけないでしょ! ってかクールタイム完了即発射三連って! どんだけバカスカ撃ってるんですか!」


「俺に言うなよ!! 艦長の考えてることなんか理解できるわけないだろうが!!」


「……二人とも……仕事……動いて……」


 嵐が収まると同時に始まる言い合いも最近では機関室の名物になっている。まあ、名物とはいえ観覧者はピーターのみ、しかも作業の手も止まるので堪ったものではない。


「だからちったあ筋トレしろって昔から言ってたろうが! そしたらそのまな板も少しはマシになるんじゃねえか!!」


「っ……その言葉っ! マリーさんにも言えますか!」


「だ~か~ら~! あいつの話は出すなっつってんだろうが! 泣くぞ? 俺泣くぞ? いいおっさんが号泣すんぞ??」


「泣いたってマリーさんは帰ってきませんよ! あ~っ! 腹立ってきた! 流石に今日という今日は言ってやるっ!」


「……あの……仕事……二人とも……ねぇ?」


 怒り心頭で機関室を後にするミナ、対するスティーブは古傷を抉られ床に伏したまま動かない……。暫くスティーブを転がして様子を見ていたピーターだが、大きく溜息をついて補修箇所の点検を再開した。


……


「艦長っ! 流石に今日は言わせて貰いますがっ! ……っっ」


 機関室を飛び出したミナが艦橋に着くなり開口一番苦情を申し立てるが、眼光鋭いタウロスの視線に完全にたじろぎ戦意を喪失する。

 そのままへたり込みそうになるミナを確認し、タウロスがニイッと口の端を歪め窓の外を指差した。


「おう、ガキンチョ! 丁~度いいとこに来たな! 外見て見ろよ! おんもしれ~ぞ!」


「はっ? 外? 面白いって……っっ!?」


 気勢を削がれたミナがタウロスに促されるままに艦橋の窓から宇宙空間を眺める、そこには満天の星々に紛れ人工物らしき明かりが無数に……。


「へっ? ……はっ? あ、あれは……?」


 窓の外に展開されていたのはイカロスの進行方向を塞ぐ無数の丸いシルエット……。確か歴史の授業で習った、あの丸い特徴的なフォルムの戦艦は敵性宇宙人の……。


『#∀&∵≡⊂&&∀###&∵』


「何言ってんのかわかんねぇ! リサ! 通訳!」


「簡潔に申しますと『くたばりやがれ』『今日がお前の最後だ』『ぶっ殺す』その他取るに足らぬ雑言です」


「いよぉ~し、やる気満々ってぇこったな! んじゃ主砲撃つぞぉ!」


「ちょっ! ちょっと待って下さい! 今クールタイム入ってますからあと一時間はセーフティ掛かって撃てませんって!」


「ああん? なら外せ!」


「熱が抜けきらない内にそんな無理したら砲身が融解しちゃいますって!! だから早く撤退を……」


「あ゛あ゛? 撤退だあ??」


 ミナが思わず放った言葉にタウロスが反応し、肩から陽炎を上げながらジリジリと詰め寄る。


「お前ぇ俺に逃げろってのか? そんなつまんねぇことやってられっか! 道を塞ぐ奴は叩いて潰して踏み付ける! 全部ぶっ倒しちまえばそれで解決だ! おい! トーマス!」


『は~い、艦長いつでも出れるよ~』


「細けえの出て来たら潰しとけ! 主砲が使えるようになったら避けろ!」


『あいあい~……当てないでよ?』


「当たりたくないなら避けろ! さっさと行ってこい!」


 タウロスの迫力にまたも床にへたり込んだミナの視線の先に、旧式の戦闘機が出撃してゆく姿が映る。旧式……いや、旧式どころか骨董品? あれで? 出撃?? 呆気にとられたようにそれを見ていたミナがタウロスに縋るように抗議する。


「って艦長!? 相手の戦艦十隻はありますよ! 戦闘機だってあんなに! それに対して戦闘機一隻って死にに行くようなもんですよ!? それに主砲無しでどうやってあれを……」


「黙って見てろ! おい、リサ! 援護しながら時間稼げ!」


「はい、畏まりました艦長」


「うぇ? 一体何を……?」


 呆然とするミナの眼前を通り過ぎ、リサが艦橋の壁の端末にパスワードを打ち込む。と、何も無い壁が音も無くスライドし、中に夥しい配管が剥き出しになった小さな部屋が現れた。

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