表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/29

19話 アイテムを強くしてみよう

 


「ダンジョン内のしかも第二階層に家を建てるなんて、お兄ちゃんは変わってるよね。けど、ここなら生活できるかも」


「あのー、ルミナさん……もしかしてここに住む気なんでしょうか?」


「こんなに広いお家で、一人は寂しいよね? 部屋もたくさんあるみたいだし、ルミナが一人増える分には問題ないでしょ?」


 家のスペース的には確かに何の問題もない。


「食べ物も家具もお風呂もトイレもないし、女の子が住むには厳しいんじゃないかなぁ」


「大丈夫! 家の後ろの方から水の流れる音も聞こえるし、食べられそうな実がついてる木もたくさん生えてたし、なんとかなるんじゃないかな」


 『獣人化』のスキルで犬のような姿をしているルミナは、目も耳も良くなっているらしい。

 まだここに来て間も無いはずだが、俺が気づかなかった情報を多く知っている。


 この子、頭は弱そうだけど中々役に立つんじゃないか? 頭は弱そうだけど。


「しょうがない、少しの間面倒を見てやるか……」


「やったぁ!」


 俺のしぶしぶといった許可の言葉に、ルミナは飛び上がって喜んだ。





 ◇





『日付が変わりました。カトウさんの本日の日替りスキルは『強化(リンフォース)』です』


強化(リンフォース)

 対象が持つ特性を強化する。同じ対象に重ね掛けすることはできない。


 次の日、俺が目を覚ますとホームの中にルミナの姿が見当たらない。

 寝ている間に何処かに出かけて行ったのだろう。


 こういうときに女の子がどこに行くのかを俺は知っている。

 何も言わずに女の子がいなくなる時は、大抵水浴びでもしてるんだ。

 だから、俺は何があってもホームの裏手にあるとかいう川にはいかないからな! 絶対に!


 けど、今の時間はチャンスだ。

 ルミナのいない間に新しいスキルを試す事ができそうだ。


 早速、俺はホームの外に出る。

 運良く売らなかったアイテムもたくさんあるし、街で買ったものもいくつかある。


 まずは「ナイフ」で試してみるか。


 右手にナイフを持って力を注ぎ込んでみる。

 すると、ナイフの刀身が先ほどまでより輝き出した。


 俺はナイフの威力を試そうと、手頃な物を探した。試し斬りといえばやっぱり木がいいか。


 幸いホームの周りには木が無数に生えている。

 一本くらいどうなったって問題ないはずだ。


 俺は手のひらサイズのナイフを振り被り、木に向けて軽く投げてみた。


 ヒュン、っと風を切って進むナイフが木の幹にあたる。


 すると、


 ガッ! と音を立てながら木を貫通して、後ろの硬そうな岩に突き刺さった。

 その凄まじい貫通力はまるで木が発泡スチロールでもなったかのような感触だ。


 本気を出して投げていたら後ろの岩も貫通していただろう。


 安物のナイフでこの威力。

 今日の日替りスキルもなかなか使えそうなスキルだ。


 他にも試してみるか。

 そう思いついて、俺は持っていたアイテムをひたすら強化してみた。


 強化によって、羽織っていた毛布は柔軟性を保ったまま鉄のような硬度に、懐中電灯は太○拳にも負けないくらいの明るさに変化した。


 魔物の素材にも『強化』スキルを使ってみる。

 まずは第二階層で拾った「巨大蛇の皮」だ。


 皮に向かって強化を使用すると、マダラ模様だった皮は硬く真っ黒な皮に変化した。

 皮は強化したナイフで突いて見ても傷一つ入らない。


 たぶんこの素材を使って防具を作れば申し分ないほどのの防御力が得られるはずだ。


 すべてのアイテムを強化しようとした俺だったが、


「きゃあああっ!!」


 ホームの裏手から聞こえてきたルミナの悲鳴で、アイテムに伸ばした手が止まった。


 この悲鳴は、何か事件があったに違いない。

 たけど、こういう悲鳴はきっと小さな虫が出たとか、狐に水浴びを見られたとか、そんな可愛い理由だと相場が決まっている。


 俺が心配して見に行ったとしても、ルミナの水浴びをみた代償で頬にビンタを喰らうのが目に見えている。


 だから、俺は絶対に行かないからな!


 意思を強く持った俺が、再びアイテムに手を伸ばそうとした時だ。


「きゃあああ!! おっきなスライムの体が、そんなところに入るわけないよぉ!」


 切羽の詰まったようなルミナの悲鳴がまた聞こえた。


「お、俺は絶対に行かないからな」


 そう小声で呟いて、俺はホームの裏へと急いで向かった。



 

第二階層攻略までの間(あと10話くらい)感想欄閉じます。

申し訳ありません!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ