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18話 小さな追手を振り切ろう

 

 太陽が沈み出した頃、俺達はオラクルベルまで帰ってきた。

 今の俺には、ホームに戻る前に済ませなければいけない事が二つある。


 一つは日用品の購入だ。

 何もないホームで過ごすため、最低限必要な生活雑貨は今日の内に買っておきたいところだ。


 一つ目については、多少割高ではある物の適当な店で揃えることができた。

 とりあえず、マントにもなりそうな毛布を一枚、ナイフを一振り、懐中電灯を一つ、それと歯ブラシやタオルに下着といった日用品を一緒に買ったポーチに入れた。


 この買い物は一つ目の必要事項だ。

 もう一つは……。


「お兄ちゃん、この後はどうするの? お泊りセットみたいな物を買って、ここで野宿でもするの?」


 どこまでもついてくる女の子、ルミナの処分だ。

 この様子じゃホームまでついて来られそうな予感がする。


 ホームは広いし、一人くらい泊めても問題はないが相手は小さな女の子だ。

 決して手を出す気なんてない。

 でも常識的に考えて少女がよく知りもしない俺の家に泊まるのは良い事ではないよな。


 電撃でもう一度気絶させようかとも考えたが、自分から子どもを傷つけるのは気が引ける。


「暗くなってきたし、そろそろ家に帰ったほうがいいんじゃないか?」


 はしゃぐルミナにダメ元で提案してみる。


「ルミナは今日お家に帰りたくない気分かも」


 もじもじと恥じらいながら、そう口にした。


 俺がデート中に言われたい言葉ナンバー1の「今日帰りたくない」を人生で初めて言われてしまった。


 相手がこんな女の子じゃなければ、二つ返事で返していたところだけど。

 そんな言葉で俺を落とせるほど、ルミナはまだレベルが足りないようだ。


 そんな調子で街を歩いていると、周囲にポツポツと宿が立ち並ぶ通りに出た。


 あ、これ使えるんじゃないか?


「なあ、どこでもいいから泊まる部屋を取ってきてくれないか? 俺はここで待ってるからさ」


「と、泊まるってお兄ちゃんルミナに何をする気なの? お兄ちゃんってもしかして悪いロリコンさん?」


 凹凸のない体をクネクネとくねらせて、ふざけた事を言うルミナ。

 その仕草に少しイラリとする気持ちを押さえ込む。


 ルミナのふしぎなおどりを無視して、二人分の宿泊料より多いくらいの金額を握らせた。


「お兄ちゃん、女の人にモテなそうだもんね。いいよ、今日はルミナが慰めてあげるから」


 悪戯な笑みで言う少女。

 ズバズバと心に刺さる発言を繰り返す。

 いくら子どもとはいえ、超えちゃいけないライン考えろよ!


「それじゃあすぐに行ってくるから、いい子で待っててね! どこかに行っちゃったら嫌だよ?」


 と、台詞を吐いて脱兎の如く飛び出していった。


 ああ、これでやっと一人になれた。

 ルミナが帰ってくる前にさっさと第二階層まで行くとするか。


 俺は、重い荷物を抱えて急いでその場を後にした。








 長い道のりを超えて、俺はようやくホームまでたどり着いた。

 帰ってくるまでは念のため、スキルを使って後ろをつけられていないか確認したが、誰もついてきてはいないようだった。


 木でできたドアを開けて真っ暗な室内入ると、前見た時と同じ殺風景な景色がある。


 持っていた荷物を部屋に投げ捨てて、アタッシュケースを枕にして横になる。


 濃い一日を過ごしたせいで今日はもうくたくただ。


 いやでも最後に、金の確認だけはしておくか。

 アタッシュケースはまだ数回しか開いてないし、持ち上げるとズッシリとした重みがある。

 ただ、心配性の俺には中にある金を見ておかないと落ち着かない。


 起き上がった俺は月明かりの差し込む窓の近くに移動した。


 ドシンとアタッシュケースを地面に置くと、すぐに中を確かめた。


 中を覗き込んだ俺の目に映ったのは束ねられた金の山。一つを手に取ってみてパラパラとめくっても全部が本物だ。


 一安心した俺が金をアタッシュケースに戻そうとした時、背後から声が聞こえた。


「えーっ! お兄ちゃん、どうしてこんなにお金を持ってるの? すっごーい!!」


「な、なんでお前が……」


「ルミナのスキルを舐めないでよね。犬にだってなれるんだからっ。お兄ちゃんの匂いを追ったら、すぐにここがわかったよ」


 俺の背後に立っていたのは、オラクルベルに置いてきたはずの女の子。

 体の至る所が犬のように変化した女の子がそこにいた。

 

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[気になる点] ホームに他人が勝手に入れるのは問題じゃないですか?
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