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14話 オークションに参加しよう

 

「他のアイテムも悪くはないんですが、やっぱりアレをみた後だと……」


 クリスは自分の膝の上に俺の持っていたアイテムを並べて、息を漏らした。


 第二階層で手に入れた全てのアイテムを見てもらったが、新種のアイテムは手のひらサイズのゴーレムのコアだけだった。

 だが、幸いな事にコアは二つもある。


 上で俺が倒したスライムやゴブリンといった魔物は第一階層でも数多くいるらしい。

 一部高価な物はあるものの、弱い魔物から取れるアイテムは数も多く流通していてそれほど価値はないようだ。


「なるほどな、けど一種類でも当たりがあっただけで俺にとっては大収穫だ。ありがとな、クリス」


「いえ、私もたくさんのアイテムを間近で見られて楽しかったです。それにしても、カトウさんはすごいなぁ。冒険者になったばかりなのに、もうこんな活躍をするなんて」


 そう言ってクリスは俺の顔を一瞬だけ見た後、うっとりとした視線で視線を落とし二つのコアを両手で持ち上げた。

 しかし俺の活躍といえば、もっとすごいネタがあるんだけど。

 でも今は一刻も早くこのアイテムを金に変えてしまいたい。


 こうしてオラクルベルにくればクリスとはいつでも会えるだろうし、俺がボスを倒した事はまた今度伝えるとしよう。


 俺が少しだけ考え込んでいると、クリスはコアを見るのをやめて不思議そうな声を上げた。


「ところでカトウさんはこのアイテム、一体どこで手に入れたんですか? まさか最近解放されたばかりの第二階層に行ったんじゃ……」


「そのまさか、だな」


 俺が即答すると、クリスは信じられないといった顔で口をパクパクとさせていた。


 あれ? 俺また何かやっちゃいました?


 常識外れの俺の行動にクリスの思考はオーバーヒートしたようで、うまく声が出せないようだ。


 第二階層は全く情報のない未知の世界。無謀にもダンジョンに入って一週間にも満たない初心者がそんな場所に行くなんて、クリスには到底理解できないのだろう。


 仕方なく別の話題にしようと、最も気になっていた疑問をクリスに問いかけた。


「それで、このアイテムはどこで換金できるんだ?」


「あ、えとえと……ふふん、ダンジョン内の事なら何でも私に聞いて下さい!」



 うすうす勘付いてはいたが、クリスはやはり単純だ。

 俺の言葉にクリスは元気な思考回路に戻ったのか、ベンチから勢いよく立ち上がり胸を張った。


 その拍子で膝に乗せていた俺のアイテムは道路にゴロゴロと転がり落ちる。


「ああっ、ごめんなさい!」


 慌てて落ちたアイテムを拾い集める。

 コロコロと変わるクリスの表情を見て俺は思わず声を出して笑った。




 ◇




 ベンチから離れた俺達は街の中心へと向かった。

 辺りを見回して人混みの中を歩いていると、建物の至る所に白黒の文字で『ZODIAC』と描かれている。

 少し前からテレビのコマーシャルでよく見かけるロゴだ。


「このゾディアックという企業が、ダンジョンアイテム流通の最大手なんです。ここで既出のアイテム買取も行っているんですが、今回はこっちの……」


 CMを見ただけじゃ何をしているかよくわからない企業だったが、アイテム買取の会社だったのか。


 道を進むにつれて前方の建物内から聞こえてくる賑やかな声が大きくなる。


「ここがゾディアックが経営するオークション会場です!」


 俺達はドーム状の建物の前にたどり着いた。

 その大きさは野球を行うドームを超えるほど大きく、外の世界のオークション会場とは比べものにならないほどだ。


「新しく見つかったアイテムは、そのほとんどがこの場所で出品されているんです! ここなら、カトウさんのアイテムもきっと高値で売れるはず!」


 と、得意気に話すクリス。

 会場入り口の透明な門の内側を見ると、既に中には数え切れないほどの人がいた。


「オークションは毎月一度しか開かれないんですけど、カトウさんは運がいいです。と言っても、出品にはアイテムの審査があるので今日の出品はできませんが。アイテムの登録だけなら可能なので、今日は登録だけしてオークションに参加してみませんか?」


 月一開催のオークションか。

 確かにそれなら相場の値段がないアイテムでも、問題なく売れそうだ。


 今日街中に人が多かったのはこのオークションのせいだな。


 まあ、オークションなんて参加したこともなかったし、一度くらい様子を見ておいた方が得策か。


 しかし、入り口周辺は人の海になっていてこのままじゃ中に入れそうもないな。


「アイテム登録をするなら裏口からも入れますので、行ってみましょうか」


 俺はクリスの提案に頷いた。


 早速、裏口に回って小さな扉から中に入ろうとした俺達だったが、受付をしていた男に声をかけられた。

 黒い警備服を着た四十代くらい白髪まじりの男だ。男は申し訳なさそうに、


「アイテムの登録ですか? あのー、今日はもう中のものは手一杯でして、登録は明日以降にしていただきたく……」


「ええ、そんな! 今日に限ってなんでですか!?」


 予想外の展開に悲痛な声を上げるクリス。


「街でも噂になってますでしょう? 最近サトウだったかカトウみたいな名前の方が第二階層を解放したでしょう?」


 ああ、なるほど。

 なんとなく話が読めたぞ。


「それでゾディアックに所属しているパーティが、第二階層に行って一つの未発見アイテムを見つけたらしいんですよ。そのアイテムが今までにないタイプの凄いモノらしくてね」


 へえ、第二階層が解放されてまだ三日しか経っていないのに、俺以外にももう新しいアイテムを見つけた奴がいるらしい。


 だが、気まずそうに謝る男に強く出るのは忍びないな。

 連れてきてもらっておいて申し訳ないが、今日は諦めるか。


 俺はクリスの顔を見て首を横に振る。

 クリスも悲しそうな顔をしていたが仕方がない。


 仕方なく俺達が引き返そうと後ろを振りかろうとした時だった。



「どうしたのぉ? 何かトラブルでもあったのぉ?」



 いつのまにか男が俺達の背後にいた。青色の髪を肩まで伸ばした長身の男が、警備の男に笑顔で声をかけている。


 俺は背の高い方ではないが、俺より遥かに長身の体。顔つきからは男か女かわからないほどの美形。声も中性的で、肌は透き通るように色白だ。


 奇抜な見た目の事は置いておくとして、他に気になる点を挙げるとするならば。


「なんで、服を着てないんですかね……?」


 真っ赤に染まった顔を手で覆うクリスを横目に、俺は正直な疑問をぶつけた。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 雷撃持ってるうちに主人公を3千万の賞金首にしたっぽいバンドウの処刑を済ませたいところ。
[良い点] 面白いです!大変だと思いますが執筆頑張ってください!!
[気になる点] 最後のはオネェ?
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