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12話 第一階層の街オラクルベルに行こう

 



 第二階層に来て三日目の朝。

 俺は日が昇るとすぐに昨日集めたアイテムを持てるだけ持ってホームを出た。


『日付が変わりました。カトウさんの本日の日替りスキルは『雷撃(サンダーボルト)』です』


 《雷撃(サンダーボルト)

 十億ボルトの電気を自在に操る。



 朝起きた時に聞こえたアナウンスで、早めに街に行く事を決めたのだ。


「今日の日替りスキルは当たりだな」


 今までは『消滅』や『透視』、『切断』といった事象を操る一風変わったスキルだったが、今日のスキルはオーソドックスなものだ。


 雷使いと言えば、どんなアニメや漫画でも活用性の高さが売りの万能スキル。


 第一階層まで行くとなると自然と他の冒険者に会う機会も多くなる。それなら、活用性が高いスキルで行くに越した事はない。


 もしも今日のスキルがハズレだった場合、予定を明日に持ち越す事も考えた。

 ただ街に行くだけなら構わないのだが、行く途中に魔物にでもあったら大惨事になるからな。


 常に死の危険が付き纏うダンジョンに戦えないスキルで行くなんて馬鹿げてる。




 晴れた空の下を歩きながら、俺は今日の予定を考えた。お腹の減り具合はそろそろ限界だ。街に行ったらすぐにアイテムを売って、暖かなダンジョン飯でも食べたい気分だ。


 アイテムそれぞれの相場はわからないが、高く売れる物もこの中にきっとあるに違いない。


 第一階層の街オラクルベルには以前騙されかけたように、相場を誤魔化す奴もいるから、できればクリスに会って査定してもらいたいな。


 俺は空腹をごまかすように鼻歌を歌いながら道を歩いた。

 ホームから階層移動の扉はすぐ近く。歩けば数分でつく距離だ。


 快晴の空の下、浮き立つ足で扉を目指した。




 ◇




 歩き始めて数分、木々に囲まれた森の中でも特に迷う事もなく扉のあった場所に辿り着いた。


 そこにあるのは相変わらず自然という言葉からかけ離れた扉。

 真昼間にも関わらず光を発して圧倒的な存在感を出している。


 しかし、扉の近くには以前と変わった点が一つあった。


 扉の横には大学生くらいのガタイのいい男が二人いたのだ。男の一人は扉の前で仁王立ちをして、まるで通せん坊をするように扉の前に立ち塞がっている。


 おいおい、あれじゃアイツらに声をかけなきゃ通れないじゃん……。

 第二階層に冒険者が少ないのはもしかしてコイツが原因じゃないのか?


「なんか、めんどくさそうな事が起こりそうな予感……」


 小声で呟いた俺が遠くから眺めていると、ガタイのいい男は俺に気がついて声をかけてきた。


「ああ? テメエ何ガン飛ばしてんだ? 俺らを馬鹿にしてんのか? それとも喧嘩でも売ってんのか?」


 声は聞こえていなかったはずだが、俺の視線が気に入らなかったのか、一人が俺に絡んできた。


 ダンジョンにはこう言った輩が多いとは聞いていたけど、早くも遭遇したようだ。あれ、初日にもこんなことあったっけ?


「なあなあ、あの膨らんでるポケットにレアなアイテムでも入ってるんじゃないのか?」


「違いないな。おいお前! 今すぐ痛い目見るか、持ってるアイテム全部置いてくか、どっちか好きな方選べや!」


 早速、男が頭の悪そうな二択を迫ってきた。

 その理不尽さは以前勤めていた会社にいた先輩、コジマに引けを取らないほどだ。


「あれ? そういえばコイツ、バンドウさんが言ってた男に似てないか?」


「ダンジョン内じゃあり得ないリーマン風の服装に、あの冴えない顔……間違いねえ、コイツが三千万だ!」


 二人が急に俺の顔をまじまじと見る。そして、程よい悪口と懐かしい名前を口にして、なぜか盛り上がる男達。

 え? 俺が三千万だって? 絶対にロクな意味じゃないだろ。


「二人で盛り上がってるとこ悪いけど、俺は早くそこの扉に入りたいんだけど……」


「ああん!? テメチョシノッテジャナゾ!」


 コ、コイツ……ちょっと俺の希望を述べてみただけなのに、とんでもなく低い沸点だ。


 何を言っているかは早口で聞き取れないが、男が怒っていることだけはわかる。


「お前のした事は全部聞いてるんだぜ? 汚え手を使ってバンドウさんの仲間を何人も殺したなんて、許せねえよな」


 冷静な方の男はそう言った後、腰に刺していたナイフを引き抜いた。

 その様子を見てもう一人も同じくナイフを構える。


「いやいや、君たちなにも理解してないよね! それ、バンドウに騙されてるだけだから!」


「うるせえ! バンドウさんが俺らに嘘つくわけないだろ!」


 とうとう怒りを堪えきれなくなって、一人が俺に向かって構えたナイフを持ち突進してきた。


 ナイフは風のような膜を帯びながら、俺の腹を狙ってくる。

 おそらく、男のスキルだろう。風の力でナイフの切れ味でも上げたに違いない。


 向かってくる男に対して、俺は今日初めてのスキルを試してみる事にした。


 

 体の奥から湧き出てくるエネルギーを突き出した左手に集め、それを前へと飛ばすイメージを思い浮かべる。


 すると一瞬、


 ビカッ!! っと周囲一帯に閃光が走った。


 同時に俺の手から放出された雷の矢は目にも止まらない速さで男の頭を目指す。


 だが、


「うおおおッ!」


 最初の光に反応して、辛うじて体を捻った男の鼻先を掠めると後ろにあった大木に直撃した。


 バギバギバギィッッ!!!


 轟音を轟かせて再び光が迸る。


 眩しさに目を瞑った俺が再び目を開いたとき、雷の矢に触れた木は跡形もなく消え去っていた。


 一欠片の炭すら残さず、木のあった場所に残っていたのは木の影だけだった。


 この威力はヤバすぎる……。コイツらに当たらなくて本当によかった!


 俺のホッとした顔などもはや見る余裕もなく、雷の威力に呆気に取られている二人の男。

 目の前で起こった現象を見て、声を出すのも忘れているらしい。


 その隙をついて今度は慎重に威力を絞った矢を二本、男達に向けて射出した。


 矢が男達の体に触れた瞬間、二人の体はビクビクと震えた後その場に倒れ込んだ。


 うん、きっとこれは正当防衛だ。俺は決して悪くない。悪くないよな?


 そう自分に言い聞かせると、気絶した二人の体を扉の中に投げ捨てて俺も光る扉の先へ進んだ。





 ◇





 無事に第一階層に降りた俺はオラクルベルに辿り着いた。


 街入り口の看板には今や懐かしいオラクルベルと書かれた看板が掲げられている。


 そのまま街に入り中を見ると以前来た時よりも多くの人で賑わっている。今日ここでなにかのイベントでもあるんだろうか?


 いや、人だかりも気になるが、今はアイテムを売るのが先決だ。

 希少なアイテムは出回る前に売ってしまいたい。


 入り口に立つ俺が周りをぐるりと見ると、入り口の最前列にある露店で暇そうにあくびをするおばさんを見つけた。


 俺はこのおばさんには一度騙されかけた事がある。

 少し仕返ししてやるか。


「ねえ、このアイテムを売りたいんだけど、何処で売れるか知らない?」


 俺はポケットからゴーレムのコアを取り出しておばさんへと見せる。


 それを見て途端に目を輝かせるおばさん。

 しかし、おばさんが口を開く前に、


「ストップストップ! ストーップ!!」


 俺の背後からどこかで聞いたことのある大声が聞こえてきた。




今日の更新はありまぁす!(すみません、寝坊しました)



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「ホームから階層移動の扉はすぐ近く。歩けば数分でつく距離だ。」  9話では数キロあったはずですが。 冒険者になって基礎体力が上がったのでしょうか?
[良い点] 戦闘ばっかりじゃないので、落ち着いて読めて最高です! これからも頑張ってください!
[良い点] 主人公のスキルはチートなんだけど、日替わりなのでそうで無い日もある。っていうバランスが絶妙で読んでて楽しいです。 真面目に生きてるのにこの世の悪意が勢揃いしたかのようにざまぁ要員が来るの…
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