10話 アイテムを集めよう
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『日付が変わりました。カトウさんの本日の日替りスキルは『切断』です』
《切断》
視界にある万物に不可視の斬撃を与える。斬撃の威力はスキルを使用後、再び使用するまでの時間に比例する。
いつものアナウンスが頭に聞こえて俺は目を覚ました。
腕時計を確認すると、今の時刻は午前八時。ただ、アナウンスでも聞こえた通りスキルも変わっている事から、日を跨いでの午前八時だ。
寝る前の予想通り、丸一日と数時間眠っていたようだ。
硬い床で眠ったせいで、体のふしぶしから痛みを感じる。
「今日のスキルは切断……か。ガッツリ戦闘向けのスキルだな」
新しくなったスキルを確認しながら、寝転んでいた体を起こして立ち上がる。正直、昨日の透視スキルを使ってお宝探しの気分だったが、変わってしまったものは仕方ない。
どの程度のスキルなのか試しに使ってみるか。
そう思い立った俺は、すぐにホームの外に出た。
ホームの周りを水平に見渡しても木しか見えないが、少し視線を上げると木の頭上から大きな岩山が見える。
遠く離れた位置にある標高三百メートル程の赤い岩山だ。岩山には木が点々と生えている。
スキルの説明では視界内の物を切れるという事だったはず。あの岩山に生える木を狙うとして、目標物まで十キロ以上は離れているとは思うが、果たして遠くにある物でもきれるのだろうか?
疑問を解消するべく、俺は岩山の正面に生える一本の木を視界に入れた。
そして、頭の中でその木に向かって進む一本の斬撃をイメージする。
すると、目標にしていた木が斜めに切断された。
だがその一瞬後の事だ。
予想外の光景に俺は吹き出した。
「ぶっ!! 嘘だろ……?」
木の生えていた岩山に、切断された木と同じ角度の亀裂が入ったのだ。
そして、岩山はゴゴゴゴゴ……と、唸り声を上げながら崩れ落ちていく。
ゴロゴロと何かが転がるような音もして、俺の立っている地面もグラグラと大きく揺れた。
立派にそびえ立っていた岩山は左側半分がなくなって、歪な形で残っていた。
目を疑う結果を見て開いた口が塞がらない俺の頭に、アナウンスが聞こえた。
『ゴブリンソルジャーを討伐しました』
『ゴブリンソルジャー(子)を討伐しました』
『ブルースライムを討伐しました』
『グレムリンを討伐しました』
『巨大蛇を討伐しました』
『メタルゴーレムを討伐しました』
『吸血コブラを討伐しました』
『パンドラボックスを討伐しました……』
その後数分間、アナウンスがひっきりなしに討伐情報を知らせてきた。
偶然にも崩れた岩山の残骸が、下にいた多くの魔物達を討伐したらしい。
さっきの一撃で倒した魔物は優に百を超えた。
強すぎる威力を目の当たりにして、俺の背中から冷や汗が流れた。
切断のスキルは思った以上に強力なものだった。
試したのが遠くの物体で良かった。人にでも使っていたら大惨事だ。
これから新しいスキルを使うときは今まで以上に注意した方が良さそうだな。
今日のスキルは使わなかった時間に比例して威力が上がるらしいから、あれで八時間分の威力ってことか。
任意で威力を調整できないこのスキルで不要な物まで切らないように、なるべく使用回数を増やした方が良さそうだ。
もう一度、今度は弱めの威力を確認する為、目の前の木を見て切断スキルを使ってみる。すると、太い木でも難なく両断できた。数秒のクールタイム程度でも大木を切る程度の力はあるようだ。
今日は今倒した魔物のアイテムを回収するついでに、魔物狩りにでも行くとしよう。
切断した岩山の方向へ俺は歩みを進めることにした。
◇
ホームからまっすぐに岩山のあった場所へと向かった。進んできた方向の木の根本、目立たない位置に目印をつけたから、帰り道迷うことはないだろう。
しばらく進んでいくと、地面に転がる瓦礫の山を見つけた。その周辺にはいくつかのアイテムが落ちている。
とりあえず近くにあった石を拾ってみる。
「そういえば第一階層ボス討伐の報酬で『分析』のスキルをもらってたっけ」
ふと、思い出した俺は手に持った白く光る鉱石を分析してみた。
【クリスタルコア】
ゴーレム系統の魔物が持つコア。内部に大量のエネルギーを秘めている。
《分散》は人に対してはスキルや装備がわかるくらいだったが、アイテムに使う分には有用そうだ。
地面に落ちている他のアイテム達もついでに調べてみるか。
【ゴールドリング】
鉄でできた腕用のリング。金メッキが施されている。ゴブリン系統の魔物が好んで身につけている。
【スライムの目玉】
ブルースライムの目。豊富な栄養を含む。一粒で一日分のエネルギー。
【スライムコア】
スライムの成分を含んだコア。強い酸性で匂いも強烈。
【巨大蛇の皮】
伸縮性のある蛇皮。耐熱性もあり加工すれば袋にもなる。
【コブラの牙】
猛毒を含むコブラの牙。硬度が高く岩よりも硬い。
だいたい貴重そうなものはこのくらい。魔物はもっとたくさん倒したはずだけど、落ちているアイテムはあまりない。ほとんどのアイテムは岩に埋まってしまったんだと思う。
アイテムを入れる鞄もないから持って帰れる量は限られているし、そんなに気にすることもないか。
拾ったアイテムをポケットに入るだけ入れる。この中に未発見のアイテムでもあれば、第一階層の街オラクルベルで高く売れそうだ。
もうアイテムも持てないし、これ以上無理に狩りをする必要もないだろう。
「さ、今日の仕事は終わりにしますか!」
実働だいたい三時間。これで生活できるくらい稼げるなら、夢のような生活だ。
しかし、俺は浮かれた気分で来た道を引き返そうとした時、瓦礫の山から巨大な鉱石が動き出した。
瓦礫から出てきたのは鋼鉄の魔神、メタルゴーレムだ。
第一階層にいたオークなんて可愛く思えるくらいの威圧感。
メタルゴーレムは俺の姿を見つけると五メートルは超える巨体を動かしながら、手を突き出して突進をしてきた。
でも昨日までの俺ならいざ知らず、今日の俺の相手じゃない。
俺はメタルゴーレムの脚を睨みつけ、横から払うような斬撃をイメージした。
ズバッ!!!
アイテムを拾っている間に溜まった時間、約十分分の威力を乗せた斬撃がメタルゴーレムの両足を切り落とした。
勢いよく前に出て来たゴーレムは足を失って、俺に辿り着くことなくそのまま地面に倒れこむ。
剣や槍では傷すらつかなそうな両足は、ハサミで切った紙のような切り口で切断されていた。
相変わらずとんでもない威力だ。
スキルの強さに感心しつつ、地面に倒れもがいているゴーレムにトドメを刺すべく、狙いやすくなったゴーレムの頭に向けて斬撃を飛ばした。
流石に短いクールタイム一回の斬撃では切り落とせなかったが、何度も同じ場所に斬撃を連打すると、頭は切り落とされてゴーレムは動かなくなった。
『メタルゴーレムを討伐しました』
倒したゴーレムの残骸は次第に消えていき、代わりに現れた「クリスタルコア」を拾い上げる。
第二階層の敵が相手でも、俺のスキルで攻略できそうだ。
少し邪魔が入ったけど今日のアイテム集めはこれくらいにしておこう。
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