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第96話 「三日目 その四」

「や、やり、って!?」

「まあなんていうか、端的に言っちゃえばH?」

 

 いくら僕でもそこまでいけば言葉の意味くらい分かる。そこまで疎くはないくらいの自信はあるんだ。

 こ、これって……。

 

「そ、そんなこと、軽く言っていいことじゃ……!」

 

 真っ赤に染まった顔で目を泳がせあたふたしている僕に対してムッと頬を膨らませてくる。

 

「ぶー。あたしそんな軽い女じゃないんだけど?」

「で、でも……」


 僕の言葉に小さく息を吐く。僕を見る顔はうっすらと赤くなっていて、瞳はどこか艶めかしい。思わず唾を飲み込むほど目の前の美しさに圧倒されていた。

 

「あたしだって、こんなこと言うの……初めてだし……」

 

 これってもしかして……試されてる……!?

 こ、こういう場合どう答えれば……。断るのは失礼――いや、そんな気持ちで受けていいものではないはず。で、でも僕にそんな勇気は……。

 いや、そんな弱気じゃダメだ。僕は男なんだから、むしろ――――やっぱりそんなの無理!

 

「で、どうする?」

「え、えっと、その……」

 

 冷汗がダラダラと流れてくる。心臓は一秒後に破裂してしまいそうな勢いで鼓動を打っていた。

 極限という言葉がこれほど似あう状況は僕の人生にはなかったと思う。

 

 そして、僕は――――。

 

 

 

「うっ、ひぐ……」

「が、ガチ泣き!?」

 

 情けないことに、この空気に耐え切れずに泣き出してしまったんだ……。どれだけかっこわるいかは自分でも重々分かっているんだけど、僕にはやっぱり無理で……。

 

「ご、ごめんごめん! ちょっとイジワルだったね!」

 

 涙が止まらない僕をまるで子供を可愛がるかの如く思いきり抱き締めて撫でまわしてくる。この光景だけ見たらきっと僕達は同級生だとは思われないよね……。

 

 

 少しして僕も落ち着きを取り戻した。でも僕が犬飼さんの腕の中から離れることはなくて。

 

「す、すいません……」

「いや、あたしもごめん」

 

 いつの間にか夜も深くなっていった。いつもならぐっすり寝ている時間だけど、さすがに寝れるわけはない。

 

「さっきさ」

「はい?」

「なりたいものとかないって言ってたじゃん?」

 

 コクリと頷く。

 

「じゃあさ……あたしのそばにいてよ」

 

 そう言うと僕を抱きしめる力にほんの少しだけ力が入った。そして僕の耳元でそっとつぶやく。

 

 

 

 

「――――一和」

「……!」

閲覧ありがとうございます!

最近短めですいません。


はい、ヘタレました。

いや、こういう展開はどうかとも思ったのですが多分こうなるだろうとしか自分の中では考えられなかったので。


なのでもしも「誘いに乗ったVerが読みたい!」という方がいたら感想欄にお書きください。

5人以上来たらノクターンでR18版の短編でも書いてみようと思います。


感想、評価、レビュー、ブクマ大歓迎です!

次回もよろしくお願いします!

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