第9話 「二つの顔」
連続投稿3話目です!
私――――颯るかには二つの顔がある。
果たして彼にそれを知らせるべきかどうか……。
◇
「ぺ、ペット?」
まさか犬飼さんと同じことを言ってくるとは……。
と、思ったけど先輩はすぐに顔を真っ赤にして言った。
「…………い、いや、違うんだ! 今のはちょっとしたジョークのうちというか、ふざけてみただけというか! 確かに君は可愛いけど……って違う!! だから――」
と、あからさまに焦っている。
――というか僕を可愛いだなんて……。そんなこと言ってくれたのも犬飼さん以来だ。
「あ、あの!」
僕は意を決した。何だか気が引けるけど。
「な、なってもいいですよ……ペットに」
「……え!?」
急に先輩の動きが止まる。きっと二つ返事で了承するなんて思ってもみなかったんだ。
ある意味当たり前ではある、普通こんなこと言われて了承する人なんて普通はいないだろうし。まあ、僕は了承してるんだけど……。
「ほ、本当かい……?」
「は、はい……」
「あ……ありがとう! まさか快諾してくれるとは思わなかったよ!」
先輩が凄く嬉しそうだ。今までのキリッとしていた先輩のイメージからは考えられなかった表情がそこにはあった。きっとこういう面も先輩の魅力なんだろうなあ。普通の女の子らしさというか。
「いや~、いきなりこんなこと言い出すなんて変な人扱いされないか心配だったんだ。そんな人私の他にいるわけないだろうし」
「はは……」
いるんですよ先輩……まったく同じこと言ってきた人が……。そんなこと断じて口にできないけど……。
こうして僕のご主人様は二人になった。
だけど良かったのかな、引き受けてしまって。犬飼さんが見ればどう思うか……。そんな単純なことにこの時僕は気が付かなかった。
◇
「はあ」
夜、私はベッドの上で今日この部屋で起きたことを思い浮かべていた。彼がまさかあんな無茶なお願いを聞いてくれたなんて……。だって仕方ないんだ、彼を見ているとどうしても思い出してしまうんだもの。
けど、同時に頭に引っかかっていることがある。あの時、私の持っている雑誌を見た時の表情だ。
「期待はしていなかったんだけどな……」
別に好きでいて欲しいとは思わない。好きになって欲しいとも思わない。それに彼は悪く言うようなことはしなかった、それでいいじゃないか。
そう割り切ったはずなのに……!
「ん?」
着信音が鳴る。私はスマホを手に取った。
「もしもし?」
『るかか? 今時間あるか?』
「はい、大丈夫です」
電話の相手は四十代の男性だ。
『実はな、二月に試合のオファーが来たんだ。相手のデータを送っとくから加味して受けるか決めてくれ』
「……そうですか」
『どうした? どっか具合でも悪いのか?』
「いえ、大丈夫です! やらせてください!」
私は二つ返事で了承した。一瞬彼のことが頭をよぎったがそんなことを気にするわけにはいかないのだ。
なぜならこれは私の仕事なのだから。
私には二つの顔がある。
一つは女子高生として、もう一つは……。
「はい、お願いします。会長」
プロ格闘家としての顔が。
閲覧ありがとうございます!
はい、格闘家のヒロインです笑
個人的な趣味をどうしても反映させたかったことからこういったキャラ付けになりました。ちなみに種目はMMA(総合格闘技)です。あまり専門的な話は出さない予定なのでご存じなくても問題ないと思います。
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