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第87話 「メイク作戦? 前編」

『これであなたも気になる彼のハートを――』

「……ふむふむ……!」

 

 

 

 学園祭を終えた翌日。ボクは誰にも気づかれないようにサングラスをかけデパートへ来ていた。別に万引きしようとかいうわけではないけど、単に見られたくないんだ。

 周囲をチラチラ見ながらパッパッと買い物カゴに商品を入れていく。さすがにこんなとこ見られるのは……ねえ?

 ある程度カゴに入れてレジへ向かおうとする。すると――。

 

「動くな」

 

 いきなり後ろから声をかけられビクッとなる。誰かに見られた!? 

 背中には細い何かを突き付けられている。恐る恐る振り返ってみると……。

 

「ギャル先輩……」

「ぷっ! 引っかかった?」

「そ、そんなんじゃないよ……」

 

 なあんだ、ギャル先輩かあ……。心臓がドキッとなったのを返して欲しいよ……。

 

「で、何してんの?」

「いや、これは……!」

 

 しまった、買い物カゴの中を見られた! 隠そうとも思ったけど、もう後の祭り。ギャル先輩の視線はカゴの中へ向けられていたんだ。

 打つ手がなくなり何も言えなくなってしまう。

 

「これって……へえ、あんたが化粧ねえ」

「わ、悪い!?」

 

 そう、今回の買い物の目的は化粧品。昨日テレビで化粧の特集をしていてその中に異性をオトしたいならメイクが肝心と言っていたんだ。

 だからわざわざサングラスで顔を隠してまで化粧品売り場まで来た、というわけ。

 

「で、なんでサングラスなんて使ってんのよ」

「だって、万が一知り合いにでも知られたらって思うと恥ずかしいし……」

「体育祭の時はどうなのよ……」

「なんのこと?」

 

 ギャル先輩は呆れ顔でボクを見る。

 

「と、とにかく! ボクに構わないで!」

 

 鼻息を荒くしレジへ向かおうとする。けどギャル先輩はそんなボクの裾を引っ張った。急だったためボクも歩みを止める。

 

「バカね、そんな闇雲に買ったってお金の無駄じゃん」

「え?」

「大体どれもあんたには合わないもんばっかじゃないの。化粧するならちゃんと調べてからじゃないとダメよ」

 

 ギャル先輩はズバズバと指摘してくる。正直に言ってしまうと確かに下調べなんかはしていない。そもそも化粧ってそんなに面倒なものなの? CMでやってるようなものを選んでいけばそれでいいんじゃないのかな?

 これまで全く興味がなかったからよく分からないや。

 

「まあいいや。とりまそれ全部返してきな」

「え?」

「で、一緒に来て」

 

 言葉に何かの圧力のようなものを感じ言われるがままにしてしまう。空になったカゴを持ったままギャル先輩に付き添う。

 すると商品を数個手に取り吟味した後、選んだ一つをカゴへ入れていく。それを数回繰り返していった。

 数分経てばカゴの中に商品が溜まる。

 

「こんなもんかな。これなら値段もお手頃っしょ?」

「これって?」

「ん? あんたに合いそうな化粧品」

「え」

 

 これはボクに合うものを選んでくれた……ということだよね? でもなんでだろう?

 

「やり方は書いてあるから大丈夫よね。どうしてもってんならあたしにLIMEしてくれれば教えてあげるけど」

「……」

「ま、最初は失敗してでも自力でやってみなさいな。じゃあね」

 

 それだけ言い残し去ろうとする。

 なんで、なんでそんな……!

 

「な、なんで……」

「ん?」

「なんでここまでしてくれるの?」

「いや、なんか昔のあたしもそんなんだったし放っとけなかっただけ。それに……借りもあるから」

 

 借り? なんのことだろう? さっぱり分からずに困惑しているボクを見てギャル先輩はふっと微笑んだ。

 そしてそのままくるりと背を向ける。

 

「じゃあね。精々頑張んな」

「あ、ありがとう!」

 

 ボクの言葉に返事はせずそのまま去っていく。胸の中にほんわかとした気持ちを抱えたままレジへ向かった。

 

 

 翌日の登校中。ボクは歩きながら手鏡とにらめっこしていた。

 大丈夫、大丈夫……だよね? 昨日から何度も確認したしお母さんにも見てもらった。問題はないはず。自信を持っては肯定できないけれど……。

 

 はあ、朝からもう何回同じことを考えているんだろう……。こんなに不安でそわそわした気持ちになるのはいつ以来だろうか。

 道行く人達がちょくちょくボクに視線を向けてくる。それは良い意味なのか、はたまた悪い意味なのか……。

 

 本音を言ってしまえばどういった反応をされるのかが怖くて仕方ない。もしこれが受け入れられなかったら、そう思うだけで怖くて怖くて……。もういっそのことこのまま引き返してしまおうか、そんな風にすら考えてしまう。

 でも――。

 

「……ううん!」

 

 ダメだよね、そんな弱気じゃ。そんなんじゃ……あの二人には勝てないんだ!

 空を見上げて一息つき気合を入れる。

 

「よし!」

 

 

 それからほんの数分後、目的の人物は視線の先に現れた。

 

「い……」

 

 弱気になっちゃダメだ……!

 

「いっくん!」

 

 意を決して声をかける。いっくんはすぐに気が付いて視線をこちらへ向けてきた。

 大丈夫……今日のボクは一味違う、最強フォームだもん!

 

「おはよ!」

「あ、おはよう蓮ちゃ――」

 

 いっくんの言葉はそこで止まる。きっとボクがいつもと違うところに気が付いたみたい。

 

「ど、どうしたの? お化粧?」

「へへ~ん、やってみたんだ」

 

 やっぱり気が付いてくれたんだ。それもそうだよね。むしろそうこなくちゃメイクアップした意味がないんだし!

 

「で、どう!? どう!?」

 

 ボクがこれ見よがしに近づく。するといっくんはそわそわしながら視線を逸らした。

 はは~ん、これは効果バツグンとみていいのかな?

 

「か……かわいい……と思う……」

「ありがとう!」

 

 よしよし、まずは手ごたえばっちし!

 ギャル先輩には悪いけど、今日一日でボクへの好感度をもっと上げるぞ!

閲覧ありがとうございます!


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