第78話 「モヤモヤ」
「よおし、学園祭まであと五日間! 気合入れてくぞお!!」
「おおおお!!」
もうあと五日で学園祭本番。厳密にはその前日に一般客を入れない生徒達だけで行われる日があるけど、本番は一般開放される土曜日の方。
みんなやる気が漲っているのが凄く伝わってくる。僕も張り切って……。
「……」
張り切れないところがあったんだ。昨日の先輩の話が未だに離れなくて……。
「よおし、今日も作業に取り掛かれ~!」
「うおおおう!!」
みんなと同じように気合を入れたいとこなんだけど、どうしても今の僕にはそれはできない。そんなことじゃあだめなのは分かってるんだけどね。
やりきれない気持ちの状態でいるのを見透かされているのか、背中をポンと押された。振り返ると訝しげな表情の犬飼さんがいた。
「なんかあった?」
「あ……いえ……」
先輩のことを言うわけにはいかないよね、本人に許可も取ってないし。もしかしたら蓮ちゃんは知ってるかもしれないけど。
「そう」
犬飼さんはそれだけしか言わなかった。
僕の言うことに納得はいっていないようだったけどあえて深くは突っ込まないでくれたんだと思う。
「姫ー! ちょっといいー?」
「あー今行く! ま、なんかあったら言ってよね」
そう言い残してクラスメイトの方へ。
あそこまで言ってくれてるけど、先輩のことで悩んでるなんて言っていいのかな? そう考えるとなおのこと悩んでしまう。
う~ん……どうしたらいいのかな……? なんか輪をかけてモヤモヤしてきたような気がする……。
とはいっても先輩のことはどうしようもないんだよね。日曜日は片づけがあるし応援には行けないけど勝ってくれると僕は信じている。
僕にできることはただ応援することだけ。
「いっちー!」
「あ、はい!」
今はクラスの出し物に集中しないと。先輩のことは応援してるしきっと勝ってくれる。だから先輩の分も頑張ろう。約束も守って出し物を見に行かないと。
僕にできることはそれだけなんだ。だからできることを全力でやらないと!
◇
「え……!?」
その言葉はあまりにも衝撃的で信じられなかった。
「ほ、本当なんですか!?」
「ああ」
知らずのうちに息が荒くなっている。
そ、そんなまさか……!?
「し、試合が中止!?」
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