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第52話 「狙われたショタ」

 三連休も終わって今日から学校。いつもと変わらない朝、僕は教室の扉を開ける。

 僕が足を踏み入れた瞬間、冷たさと危なさを織り交ぜたような視線が一気に僕に突き刺さってきた。肌にひしひしと突き刺さり、冷や汗がたらたらと流れてくる。

 

「……!」

 

 唾を飲み込みながらゆっくりと足を進め席に着く。その間もずっと僕は謎の視線を浴びていた。

 何だろう、いったい何故僕が――いや、それは間違いなくあの体育祭が原因だよね……。

 なんていったって下着を丸出しにした蓮ちゃんにみんなの目の前で抱き着かれてしまったんだもの……。ただでさえ蓮ちゃんが僕のクラスに来ることで僕は全員ではないにせよ周囲に冷酷な目で見られてるのに……。確かに蓮ちゃんはあんなに可愛いもんね……。

 うう……視線が辛いよ……。

 

 

 

 

「ふう……」

 

 半日視線に耐え続けてようやくお昼休み。特に何もされたわけではないけど、ただ視線を浴び続けているだけがこんなにも辛いものだなんて。

 けどお昼休みということは今日も……!

 

「いっく~ん!!」

「!!」

 

 やっぱり蓮ちゃんが僕のクラスに来た。それと同時に教室がピリッとした空気に変わる。考えたくはなかったけど、やっぱり蓮ちゃんが原因なんだ……。

 

「れ、蓮ちゃん……」

「お昼食べよっ!」

「う、うん……」

 

 クラスメイトの男子からはいっそう強い視線を浴び、後ろの席の犬飼さんからは怒りのオーラを感じる……。僕は蓮ちゃんを連れ逃げるように教室を出ていった。

 今日は雨だから屋上へはいけない。だから向かった先は人のいない踊り場。

 

「――で、スカウトされちゃってさ~」

「そ、そうなの!」

「うん! 陸上部とバスケ部、あとバレー部にも!」

「さ、さすがだなあ……」

 

 体育祭の結果僕とは対照的に部活からスカウトが来ているみたい。確かにあの時に蓮ちゃんは凄い運動神経を見せていた。僕からすれば今までなかったのが不思議なくらいだけど。

 

「じゃあ、帰りにね!」

「う、うん……」

 

 チャイムが鳴り休み時間も残り僅か。教室へ戻った僕は何かに引っかかって転んでしまう。

 

「うわ!」

「あ、わりーわりー」

 

 どうやら足に引っかかってしまったみたい。これは僕の不注意だよね。僕が入ってきた瞬間に足を出してきたようにも見えたけど、悪いのは僕だ。

 

「ご、ごめんなさい」

 

 頭をぺこりと下げてそそくさと席へ戻る。

 それだけなら良かったんだけど、僕が次の授業の準備をしていると突然水が少量ではあるけどかかってきた。

 

「ひゃっ!」

「あ、悪い!」

 

 違うクラスの人だから名前は知らないけど、まさか今のって……。いや、そんな風に思うのは良くない。こんなことしたって何の意味もないもの。

 

「おい!」

「いや、マジでごめんって」

 

 前の席に座っていた朝桐さんが叱咤する。それを飄々とした感じで反応していた。

 

「だ、大丈夫ですから」

「一ノ瀬……」

 

 ハンカチを取り出し濡れた箇所を拭く。実際僕は気にしてない。間違いくらい誰だってあるし、僕なんかしょっちゅうだし……。今日はついてない日なんだ。

 そんな僕に他の人達とは違った謎の視線を向けている人がいる。その視線を放っているのは僕の後ろの席からで……。

 

 

 

 

 

 五時間目が終わった後、あたしは一年の教室へ来ていた。確かあいつの教室は……あ、ここだここだ。

 すぐに近くの一年生に頼んで蓮を呼んでもらう。

 

「なに? 先輩」

「ちょっといい?」

 

 そのまま階段へ行く。ここならあんまり人はいないし。

 

「蓮、あんたさ、わんこのとこ来るのしばらく辞めてくんない?」

「え? 何急に?」

「まあ気づいてるわけないか……じゃあ教えてあげるよ」

 

 そこから休み時間が終わるギリの時間まであたしは蓮に話した。言っておくけどわんこもあたしも蓮のせいだとは思ってない。けどうちの学年の情けないチョガンブ男子共がなんかちょづいてるから。

 だから蓮には少しだけ抑えて欲しい。

 

「そっか……」

 

 落ち込んだ様子で蓮は自分の教室へ帰っていった。そりゃあ辛いよね。けど蓮、これはあんたが悪いわけじゃない。だからあたしに任せて。あたしも、あいつらは許せないから。わんこに手を出したあいつらを!

 そして放課後、あたしは下校している隣のクラスのあいつに会いに行った。

 

「ねえ!」

 

 

 

「ごめん!!」

「え、な、何のこと!?」

 

 放課後、なぜか蓮ちゃんが僕に頭を下げてきていた。僕には全く身に覚えがない。

 

「ボク……いっくんのこと考えてなかった……」

「だから何のこと? 僕にはさっぱり……」

「き、聞いたんだ」

 

 蓮ちゃんが言うことには今日僕の身に降りかかった不幸は全て蓮ちゃんにああいう行為をされている僕を妬んだ人達による行為だと犬飼さんが言っていたらしい。僕はそんなことこれっぽっちも思っていなかったけど、そうだったのかな……。

 

「だからボク、少しいっくんのとこへ行くのは控えるよ……」

「い、いや、そんな! 気にしないでおいでよ!」

 

 僕は別にどうなろうと気にならない。それに蓮ちゃんに変に気を使わせたくはないんだ。だって蓮ちゃんに好きだと言ってもらえること、ああいう風な行動をしてくれるのは……純粋に嬉しいから。

 だから僕のことを気にする必要はない、そう思っている。

 

「ううん。いっくんがそう言ってくれるのはありがたいけど、ボクは自分のわがままでいっくんに迷惑をかけたくない。今更そんなことを言っても遅いのかもしれないけど……けど、ボクはやっぱりいっくんが好きだから!」

「蓮ちゃん……」

 

 蓮ちゃんはにっこりと笑う。

 その言葉は凄く嬉しかった。僕のことを第一に考えてくれているのが伝わったから。

 

「ありがとう……でも、たまには一緒にお昼食べよう?」

「いっくん……うん!!」

 

 

 その翌日から僕に対する視線はなくなった。蓮ちゃんがお昼に来る頻度が減ったことを差し引いても。

 そして奇妙なことはもう一つ。朝登校した時に下駄箱に謎の手紙が入っていた。そこに書かれていたのは丁寧な文章の謝罪文だったんだ……。送り主は昨日僕が水をかかってしまった人みたい。

 

「な、なにこれ……?」

「おはよ」

「おっはー」

「あ、犬飼さん、宇藤さん。おはようございます」

 

 下駄箱で困惑している僕に声をかけてきたのはちょうど出くわした犬飼さんと宇藤さんだった。

 

「どうしたの?」

「い、いや……」

「さ、早く行かないと!」 

「じゃっ」

 

 僕の頭をくしゃっと撫でて教室へ向かっていく。どこか上機嫌な風に見えるのは僕だけではないはず。

 そうだ間違いない、あの人が……!

 

 

 きっと気付いてたかな? でもまあ感謝はしないでもいい。あたしはただ許せなかっただけだから。自分達がモテないのを棚に上げて八つ当たりで憂さ晴らしするなんて。蓮がかわいそうだし。

 それに何よりもあたしの超きゃわゆなペットを――――超DSなわんこに手を出したなんて絶許!

閲覧ありがとうございます!


全校生徒の前であそこまでやらせて何も起きないわけないだろ!と思い今回の話を描きました笑

設定では私立なのですが、私立でもアホな奴はいますよね(偏見)。


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次回もよろしくお願いします!

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