第5話 「帰り道の災難」
連続投稿2話目です!
「うっわ、チョー降ってる」
下駄箱へ着いた僕らのは外の天気の崩れ具合に見とれていた。確かに今日は朝から曇り空ではあったけど、ちょうど下校という時間にここまで降ってくるなんて運がないのかな。
一応傘は持ってきているけど濡れないで帰るのは諦めざるをえないみたい。
「はーっツイてないなあ~。まあいいや、帰ろっ!」
「は、はい……」
あの日の放課後以来、僕達はこうして登下校を共にする日が多くなっている。最初は距離を離れて歩いていた。僕なんかが一緒にいるとこを見られたら犬飼さんに迷惑がかかると思ったから。
けど犬飼さんは全く嫌な顔もしなかった。
『もっと近くに来なよ。悪いことしてるわけじゃないんだから』
『い、いいんですか?』
『もちでしょ! あたしのペットなら堂々としなさい!』
そう言われて以来僕の距離は近くなった。さすがにぴったり隣とまではいかないけど……。
「う~寒いな~」
十二月に入り寒さが本格化してきたうえにこの雨。肌がひんやりと冷えている。この時期の雨は一気に体温を奪ってしまう。
「そういえば、もうすぐ期末じゃん」
「そうですね」
「は~ダルいなあ~」
片手で髪をいじりながら気怠げな表情を浮かべる。
聞けば勉強はほぼしていないらしく前回のテストでもあまり点数はよくなかったらしい。
「ちゃんと勉強しないとダメですよ」
「え~めんどい」
「赤点取ったら補修ですよ」
「って言われてもなあ。あ、そうだ!」
何かを閃いた様子でこちらの方をばっと見る。僕はそれだけで何かを察してしまった。
「じゃあわんこが勉強教えてよ!」
「やっぱり……」
……まあ予想はできました。
僕はそれなりにいい点数はちゃんと取れるように毎回勉強している。部活やアルバイトをしていない分勉強に時間を回せるのも大きい。
そのおかげか、自慢じゃないけど学年でトップ二十くらいには入れている。
「まあそれくらいならいいんですけど……」
「マジ? ありがと、さすがわんこ!」
僕に近付き頭を撫でてくる。この人のこういうとこにはいつまで経っても慣れそうもないや。
その時だった。後方からもの凄い音を立て車が猛スピードで走ってきていた。
「あ――」
車が凄いスピードで走ってくる、そして道には雨のせいでできた水たまり。このままだと……。
僕は深く考えるよりも先に体が動き出していた。
「危ない――」
車が通ると同時に車道側へ出て傘を犬飼さんの方へ盾にする。
それと同時に僕の体に冷たく汚れた大量の雨水が飛んできた。
「あ~あ……」
「――っくしゅん!!」
なんて運がないんだろう……。制服がずぶ濡れになっちゃった。とにかく風邪を引く前に着替えないと。
けどそのおかげか、犬飼さんは一切濡れていないようだった。濡れていないならよかった。
「大丈夫?」
「ええ……はっくしゅん!!」
寒い……このままだと本当に風邪をひいちゃう。
幸い今日は体育で体操着を持っているので着替えはあった。あとはスーパーかどこかのトイレで着替えれば――。
「わんこ」
「は、はい?」
寒さで震えてきている僕を見かねたのか犬飼さんが話しかけてくる。
「すいません、このままだと風邪ひいちゃうんで――」
「ウチに来なよ」
…………!?
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