第39話 「それぞれの前夜」
「こんなこと初めてだとはいえ……」
自室に散乱した服の数々。いったいどうすればいいんだ?
私の持っている服の中で一番の組み合わせを選ばなければならない。だがオシャレなんかとは無縁な人生だったからな……。
ああ、こんなことなら格闘技だけじゃなくファッションやらなんやらも身に着けておくんだった……。
「う~ん……」
なんとかその……可愛らしい服装で一ノ瀬君の心をつかみたい!! だがあの二人は強敵だ、私のベストチョイスを出さなければ霞んでしまうだろう。いや、それでも太刀打ちできるかどうか……?
だが一体どれが一番組み合わせがいいのだろう? それすら私は分からない。
そんなことをしているうちに夜は更けていき気が付けばもう十一時を過ぎていた。早く寝ないといけないのに……!!
「ああ~!! どうすればいいんだ~!!」
「……姉ちゃんうるさい……」
「おい、何を騒いでるんだ!」
「るか! 何時だと思ってるの!」
家族総出で怒られてしまった。
こういう時に何の力もないのか私は……。本当に格闘技以外も身に着けておくんだった……。
◇
「よし、これでいこう!」
この数週間練りに練っていたプランがついに完成した。これでボクといっくんの思い出ができるはず! 明日が楽しみだなあ。いっくんを昔から知っているボクだからこそ楽しめるようなプラン、これは先輩達にはないボクだけの武器!
「楽しみにしててね、いっくん!」
電気を消し勢いよくベッドにダイブする。
いよいよ明日、胸の高鳴りが収まる様子がない。それもそのはず、いっくんとディスニイに出かけるんだから。ずっと夢だったんだ、こっちに戻っていっくんと遠出するのが。……まあ二人っきりじゃないのはアレだけど、とにかく夢が叶うんだ!
ボクは学校行事前日の小学生のような気持で布団をかぶった。
◇
「さて、寝ようかな」
明日に備えて早く寝なきゃ。だって明日はみんなでディスニイランド。ああ、わんことディスインするの何度夢見たことか……。
あたしにとっては何度も行っている場所ではある。中学時代の彼氏とも行ったし、一年の夏休みにはあやと比奈と岬の四人で行ったっけ。
けど今までのとは違う。だって――。
「わんこと一緒に……」
だってわんこがいるから。
それに先輩と蓮も。何だかんだ仲良くしてるあたし達。思えば四人で遊びに行くなんて初めてじゃん。
考えれば考えるほどおもしろいなあ、あたし達って。
「……ふふっ」
明日のことを考えるだけで超楽しくなってくる。
だからもう寝よう。
「楽しみだなあ……♪」
◇
「もう眠いよ……」
「バカ、あんたの一世一代の大勝負じゃないの」
夜十一時、明日の服装をお姉ちゃんがコーディネートしてくれている――のだけれど、かれこれ一時間くらいはもう経過していた。
そこまで付き合ってくれるのはありがたいけど、さすがにもう眠い……。
「ああ、こんなことなら昔からもっとあんたにオシャレを叩き込んでおくんだった……」
確かにそういうのには今まで興味はなかった。実際改めて見てみると僕の持っているものはほとんどが無地でシンプル過ぎるような……。
「う~ん……確かにちょっと地味すぎるかなあ……」
「まあこの時間じゃどうしようもないし。これが一番マシかな」
お姉ちゃんが選んでくれたそれは青い長袖シャツに紺色の長ズボン。
就職活動中でも付き合ってくれたんだ、感謝しないと。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
いよいよ明日かあ。これで僕の気持ちに進歩ができたらな。
「じゃあ寝るね……」
「はいよ、頑張りな」
重たい瞼を擦りながらベッドへ向かう。
でも心の中には明確に高揚があった。こういう風に誰かと遊びに行くのなんてそうそうなかったしまして女子と、それもあんなに素敵な人達となんて……。
そう考えるとさっきまであんなに眠かったのが嘘のようにドキドキが止まらなくなる。
「……」
唾をゴクリと飲み込んだ。こんな時間に緊張してきちゃった……。
でも早く寝ないと。
「どうなるんだろう……」
今の僕はワクワク半分、不安半分ていうところ。
様々な感情を抱きながら僕は眠りについた。
そして、夜が明ける。アラームを止め僕は顔を洗いに行くのであった。
閲覧ありがとうございます!
次回は大晦日ということで総集編出します。夢の国編は年明けからになります!
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