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第4話 「お手」

 それはある日の放課後、僕達以外には誰もいない教室でのこと。

 可愛さの溢れた顔をニンマリとさせ、彼女――犬飼さんはこう言った。

 

「じゃあ、ペットっぽいことしてみよ♪」

「ぺ、ペットっぽいとは……?」

「わんこ、お手!」

 

 突如として発せられた犬飼さんの言葉に固まってしまう。そんな僕を気にも留めず犬飼さんは手のひらを差し出し僕にお手をするよう迫る。

 お手って、あのお手!?


「お手!」

「お、お手……?」

「当然でしょ? きみはあたしのペットだもん♪」

 

 戸惑う僕の問いに満開の笑みで答える。それにしてもいきなりなので困惑してしまった。けど断ることはできないんだろうな。

 僕は意を決した。

 

「わ……わん……!」

 

 僕は犬の鳴き真似をしながら手のひらを乗せた。柔らかくて、そのうえ滑らかで柔和な肌の感触が伝わってくる。この前の散歩からちょくちょく触れる機会はあったけど、いつまで経っても慣れることはなさそう。

 女の人の手ってこんな感触なんだ……。

 

「じゃあ次は……」

 

 楽しそうに考える彼女の姿は僕をドキドキさせた。半分は不安、半分は期待。

 何を言ってくるのか分からないけどそうやって悩む姿も可愛い……。こんなこと絶対に口にはできないけど。

 

「じゃあ、お座り!」

「わ、わん!」

 

 体が火照るのを感じながら僕は床に腰を落とした。はっきり言って恥ずかしい。顔が熱くなってきた。こんなとこを誰かに見られたらって思うと怖くなる。

 けど――――。

 

「よしよし、よくできました~!」

 

 僕がこうすると犬飼さんはこれでもかというほど頭を撫でてくる。僕なんかが彼女とこういうことができるのはもう奇跡としか言いようがないと我ながらに思う。

 きっとこうしてもらえるならどんなことでも僕はやってしまうだろう。

 

「じゃあわんこ――」

 

 どこか含みのある目つきで僕を見る。そんな視線を受け心臓がさらにドキドキしてきた。そして犬飼さんは僕に言った。

 

「――チ〇チ〇!」

「……ええ……?」

 

 聞いたこっちが赤くなってしまう。何のためらいもなく(別におかしい言葉じゃないのは分かるけど)口に出せるなんて……。一瞬目が点になってしまった。

 とはいえ僕は犬飼さんのペット……それに……。

 

「わ……」

 

 僕は大きく股を開く。羞恥心でプルプルと震えながら。そして恥ずかしさをごまかすように大きな声で――。

 

「わ、わん!!」

 

 見事に犬の芸の一つ、チ〇チ〇の完成。色んなものが崩壊してる気もする。だけどここまできたらそんなものはもうどうでもよく感じた。

 

「カワイ~! よしよしよし!!」

 

 犬飼さんのこんな表情が見れるのだから。きっと僕しかこんな気持ちは味わえないんだから。そう考えるとどんなに恥ずかしい思いしても受け入れられる自分がいる。

 というよりそう思わせる優しさを犬飼さんから感じるんだ。

 

「さあて、じゃあそろそろ帰ろうかわんこ♪」

「は、はい……」

 

 外は雨が降り始めていた。窓ガラスにはそれなりに強く雨が打ち付けられている。真っ赤な顔のまま僕達以外にはもう誰もいない教室を後にするのだった。

閲覧ありがとうございます!

今日も連続投稿する予定です!


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