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第3話 「お散歩へ行こう!」

連続投稿3話目です!

 寒さが日に日に強くなっていくのを感じるこの季節、朝はかなり肌寒い。そんな寒空の下、僕は駅で人を待っている。約束の時間は八時で今はその十五分前。

 

「ちょっと早かったかな?」 

 

 僕達高校生にとっては早すぎるくらいの時間だったかもしれない。

 学校には八時四十分までに登校すればいいわけだけどここから学校までは歩いて二十分程度。余裕で間に合う時間だし、今学校に行ったとしてもほとんど生徒はいない。

 こんな時間に呼び出して、本当に何をする気なんだろう?

 

 ……とはいえ、そんな呼び出しに十五分前から待っている時点で僕も何だかんだ楽しみな部分があるのかもしれない。

 だって……あまり大っぴらには言えないけどあの人はかなり可愛い人なんだもの。今までああいうタイプの人はそこまで得意ではなかったけど、あの人は違う。昨日初めて会話した身分ではあるけど心のどこかにそう確信させるものを感じたんだ。

 

「はあ……寒いなあ……」

 

 気温と反比例してなんだか顔が暖かくなってきちゃった……。こういう感情は何て言うんだろう。恋……とはちょっと違うよね。僕には不釣り合いだろうし。なら何と言えばいいんだろうか。

 そんな考えが頭の中を駆け巡っていた時――。

 

「なに真っ赤になってんの?」

「ひいっ!! あ、おはようございます……」

 

 そうこうしているうちにあの人が来ていたようだ。全く気が付かなかった……。いきなり声をかけられたから心臓が飛び出そうなくらいびっくりしちゃった。

 

「おはよう、わんこ!」

 

 この人が僕のご主人様 (ということになる)である犬飼織姫さん。

 犬飼さんはいわゆるギャルというタイプの人だ。ウェーブのかかった長い髪は茶色に染められていて、この寒さでもかなり短くしているスカート。先生から指導されそうな格好を平然としている。うちの高校は私立の中では校則は緩めな方だけど。

 

「しっかし寒いね~まだ十一月ってのに」

「朝早いですしね……」

 

 そんなスカートじゃ寒くないですか? とは言えなかった。いや、言えるわけがないよ。

 

「あの、何でこの時間に?」

「いや、学校行くまでまだ時間あるじゃん? だからさ、お散歩しよ!」

「お散歩……?」

 

 お散歩……確かにペット、それも犬には欠かせない。どうやらペットになるといってもえ、エッチな方向じゃないらしいみたい。べ、別にそういうのを望んでいたわけではないけど……。

 

「ほら、行こっ!」

 

 そう言って犬飼さんは手を差し伸べる。それって手を繋ぐってこと……?

 そうだよね、それ以外にない。けど僕にはそれだけでも刺激が強いみたい。

 

「え……えっと……」

「まさか、手繋ぐのが恥ずかしいとか?」

 

 モジモジしている僕の様子から察したのか、軽く微笑みながら問いかける。

 僕は何も言えずにキョドキョドとしてしまう。さっき以上に顔が熱い。高校生にもなってそんなこと言っているなんて笑われてもおかしくないよね……?

 

「ぷっ……はははは!!」

 

 犬飼さんは笑いだす。やっぱりそんなに面白かったのかな……と思っていたのだけど、どうやら違ったみたいだった。

 犬飼さんは僕を両腕で引き寄せ思いっきり抱きしめる。そして頭をこれでもかというほど撫で回してきた。

 

「え、ちょ、ちょっと……」

「ははは……やっぱ可愛いなあわんこは!」

 

 周囲には僕達はどんな風に見えているのだろう。イチャイチャしているカップル……というよりは仲の良い姉弟に見えているのかな。

 

「さて、時間ももったいないからさっさと行くよ!!」

「わ、わ!!」

 

 そう言って僕の手を握り引っ張っていく。僕は男なのに力は完全に負けているようで、抗うこともできずに流されるように走る。

 駅から数分、着いたのは芝生の生えた広い公園だった。大きな池があるのんびりとした場所で、心地よい風が気分を和ませてくれる。

 

「じゃあ行こうか、わんこ♪」

 

 今更だけど僕の呼び名はわんこで決まったみたい。まあ嫌とは思わないけど……。そうこうしている間に犬飼さんは手を握ったまま歩き始めた。

 

「あの、え、このままなんですか?」

「そりゃあね。本物の犬だったら首輪つけるとこだけど」

「く、首輪……」

 

 思わず想像してしまう。僕の首に首輪がつけられリードを握る犬飼さん。あまりにも危ない絵だよね……。すぐにぶるぶると首を左右に振る。

 ダメだ、そんなのしたらもう外に出れないよ……。

 

「安心して、あたしSの気はないから。それともそっちの方が良かった?」

「い、いえ!!」

 

 その問いにすぐさま首をブンブンと横に振る。当然僕はそんな趣味はない。それに、そんなのより……手を握ってもらえる方がよっぽどいいや……。

 

「ふふ、じゃあこのままでいよ。ね?」

「は、はい……」

 

 この人といるとタジタジになっちゃうなあ……。やっぱりからかわれてるのかな僕。けど不思議と嫌とは思わない。これまでのどんな人とも違う魅力がこの人にはあるから。

 まあ、しばらくはこういう関係でもいいかな……。というより僕は選択できるような立場でもないんだし。

 

「気持ちいいなあここ」

 

 楽しそうな犬飼さんとは違い僕は顔を真っ赤にしながら隣を歩くのだった。毎日続くのかな、こんな日々が。

閲覧ありがとうございます!

しばらくは数話連続投稿する予定です!


感想、評価、レビュー、ブクマ大歓迎です。

次回もよろしくお願いします!

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