第28話 「波乱を呼ぶ幼馴染」
連続投稿2話目です!
「――というわけで、こちらが僕の幼馴染の櫻井蓮ちゃんです」
僕達四人はお正月にも来た駅の近くのファミリーレストランに移動していた。まあ理由は分かると思うけど、蓮ちゃんについての説明を求められたからで……。
「なるほど、話は分かった」
「分かったけどさあ……」
二人はいきなりのことで未だに困惑している。それは僕も同じ。
唯一蓮ちゃんだけは平然といちごパフェを口にしている。
「で、蓮ちゃん。二人のことも分かってもらえたかな?」
「うん、大体はね。けどまさかいっくんがこんなに女の人と仲良くなってたなんてねえ」
蓮ちゃんが引っ越す前、僕は蓮ちゃん以外の女の子とは仲良くなることはなかった。蓮ちゃんと仲が良かったのはお父さん同士が友人だったり家が向かいにあったからというのもあるけど、一番は趣味が全く同じだったのが大きい。
「昔は蓮ちゃんくらいしか仲良くなかったもんね」
「そうそう。よく男女間違えられたりしてさ!」
「……で、櫻井君? 随分と仲が良いんだな」
「そりゃあね! だってボク達は幼馴染で、それに――」
この瞬間思い出した。昔蓮ちゃんと僕の関係を。幼馴染とか友達とかを超えたものがあったことを。
「相棒同士だもん!!」
「あ、相棒……?」
「いや、これには……」
昔誓い合ったことがある。僕と同じように特撮ヒーローが好きだった蓮ちゃんは、僕達の関係をずっと『相棒』でいようと。
「当時は仮面ドライバーMがやってた頃だったからさ、主人公二人の関係に凄く憧れてたんだ!」
「相棒……」
「それはつまり……」
犬飼さんと先輩は二人でひそひそと話し合っている。
さすがに距離が近いので僕の耳にも入ってくる。反対に蓮ちゃんは気にする素振りもなく残り少ないパフェをかきこんでいた。
「「……ペットより上!?」」
確かに……考えてみると相棒というとペットより上にある立ち位置なのかもしれない。
「く……!」
「まさか……!?」
「さ、櫻井!」
「ん~? 何~?」
口についたクリームを拭き取りながら返事をする。
「も、もしかしてあんた……わんこのこと……!!」
「ちょ、犬飼さん!」
その質問の意味はすぐに理解できた。二人が何を聞きたいのかも。
けど、それは僕はその質問の答えを聞くのが怖かった。
だってもし、万が一にでも蓮ちゃんが僕のことを――。
「うん、大好きだよ!!」
「…………」
一気に空気が凍り付く。まさか……そんなことがありえるなんて……!!
僕自身固まってしまって動けそうもない。
「そ、そんな……」
「また恋敵が……!?」
「まあそういうことになるかな? ま、ボク負ける自信ないんだけどね。だっていっくんのこと、誰よりも知ってるもん!」
そう言って蓮ちゃんは僕の腕に抱きつく。
昔は距離が近くても何とも思わなかった。子供だったし、女の子を好きになる感覚も分からなかったし。
でも、今は違う。だって……今僕は明確に感じたんだ。胸がドキッとしたのを。
再会した蓮ちゃんは中身は昔とそう変わらないけど、外見は物凄く可愛らしく成長していた。それに何よりもお互いのことをよく理解している。
そんな相手が僕のことを……。
「な……負けるものか! 私だって……」
「あ、あたしも……」
反論しようとしても縮こまってしまう。幼馴染という二人にはない関係にどんな反論も押し込まれてしまうのだろう。
「れ、蓮ちゃん……もうやめ――」
「昔っからボクが引っ張っていってさ~。色んな所に連れまわしてたっけね。他にもあんなことやこんなこと……」
蓮ちゃんはあえて含みを持たせた言い方をしてきている。もしかして二人をからかってるんじゃ……。
さすがにこれ以上は……と思い蓮ちゃんを止めようとする。
「蓮ちゃん、もうそのくらいに――」
「ちょっと! あんなことやこんなことって何よ!!」
「そうだ、そんな……いやらしい言い方を……!」
ああ、もう駄目だ……。もう僕には止められない……。
「そりゃあねえ。だって一緒に寝たこともあるし」
「な……!!」
「いや子供の時ですよ!?」
僕の言葉には三人とも耳を貸さない。
蓮ちゃんは気にも留めず続ける。
「それに……一緒にお風呂も入ったし!」
「お、お風呂……だと……!?」
「いや、だから子供の頃ですって!」
先輩はショックでフラフラしてきている。だけど犬飼さんはその発言にはダメージを受けていなかった。
その理由は分かる。けどできるならそれを言って欲しくはない。
そんな僕の願いは儚く散ることとなる。突然犬飼さんが勢いよく立ち上がった。
「ふん、そのくらいあたしだって! 何なら……わんこの〇〇〇〇だって見たことあるんだから!」
「「えっ?」」
静寂が僕らを包み込む。僕はすぐにはっとなり顔を赤くし座り込む。最早手で覆ってしまうくらい真っ赤になっている。
そして案の定、僕達を待っていたのは二人からの質問攻めだった。
「ど、どういうことだ!! いったい何をしたんだ君は!!」
「ねえ! どういうことなのいっくん!!」
さっきまで余裕たっぷりだった蓮ちゃんもさすがに動揺している。二人からの質問攻めに僕達は何も回答できなかった。それどころか僕は蓮ちゃんと先輩の顔を直視できないくらい恥ずかしい思いでいっぱい。
「そ、そうよ! あたしはもうあんた達より先にいってんのよ!」
「き、君……まさか……!」
「ねえいっくん!! まさかエッチなことされてないよね!? いっくんの初めては守られてるよね!?」
「……」
「あの、お客様……」
この後、店員さんから注意を受けて僕らは解散した。
蓮ちゃんが帰ってきたことは素直に嬉しい。けど、僕の日常はいっそう波乱万丈になりそうで……。
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