第26話 「風邪っぴき一和」
連続投稿4話目です!
高校の春休みは短い。ほんの二週間程度でもう新学期が始まる。
その間、みんなはめいっぱい遊ぶみたい。
だけど――。
「う~ん……」
僕は春風邪をひいてしまっていた。
微熱程度だけど頭が痛くてベッドから動けそうもない。咳も止まらないし、汗も沢山出てくる。
「一和、大丈夫?」
「うん……」
「こんな時にあの馬鹿夫婦は……」
お父さんとお母さんは一昨日から桜を見に京都へ行っている。
でも僕が風邪をひいたのはお父さん達が出発した次の日からだからしょうがないこと。二人には楽しんできてもらいたいもの。
「困ったわね。あたしももう出かけないといけないし」
「大丈夫だよ。お姉ちゃんは楽しんできて」
お姉ちゃんは友達と出かけるみたい。せっかくの予定を僕のせいでキャンセルさせるわけにはいかない。
「ま、熱もそこまで高くないから大丈夫だとは思うけど。悪いけどあたしもそろそろ行くわ」
「うん。ごめんねお姉ちゃん」
まさか春風邪だなんて。
酷くはないから大人しく寝ていれば大丈夫なはず、だからお姉ちゃんやお父さんお母さんには心配しないで楽しんでもらいたい。
僕のせいで楽しみを奪うわけにはいかないから。
「分かった。帰りに薬とアイス買ってきてあげるから」
「うん、行ってらしゃい」
部屋を後にしようとする瞬間、お姉ちゃんが足を止めこちらへ振り替える。
「一和」
「何?」
「本当に辛かったらすぐLIMEしなさいよ」
「ありがとう……」
それだけ言い残しお姉ちゃんは出かけて行った。こういう時に本気で心配してくれる、優しいお姉ちゃんでよかった。
「はあ」
せっかくの春休みなのに風邪をひいちゃうなんて、新学期も間近なのになんて運がないんだろう。
新学期……か。二年生になったら、僕はどんなことがあるんだろう。高校生活の華、修学旅行も控えている。
けれど、何よりまずは答えを出さないと。
それにしても新学期を目前にして風邪をひくなんて、何かの前触れなのかな。嫌なことじゃないといいんだけど。
「……クラス替えもあるんだよね」
クラス替えと聞くとどうしてもこの前のことを思い出してしまう。修了式の日のことを。
『……新学期、同じクラスになれればいいね♡』
犬飼さんのあの言葉に僕は小さく返事をした。
『……はい……』
僕自信もう確信している。あの人と同じクラスになりたいんだって。
今まではクラスが離れていたから学校では中々会う機会もなかった。それこそ放課後と登校前の時間くらい。
もし同じクラスになれたら、今以上に触れ合う機会もできるのかな。でも他の人達に見られてしまったら? 僕なんかじゃ……。
いや……もう寝よう。今は体調を治すことだけ考えないとね。
僕は目を閉じ眠りについた。これからの期待と不安を感じながら。
◇
「やっぱり今日行っても……いや、いない可能性もあるしな。やっぱり学校で会うまで待とう! その方が驚くだろうし!」
彼の家の目の前まで来ていたが、すぐに方向転換し来た道を戻る。
よく考えれば別に今日無理に会う必要はない。だって、これからは同じ学校なんだから!!
もうすぐ……もうすぐ会えるんだ! 彼は覚えててくれるかな? もしかしたら忘れちゃって――いや、そんなわけないよ、彼に限って!
「早く会いたいよ……いっくん!」
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次回からは新学期、2年生編です。本作はこの2年生編がメインになります。
そして1話目にして早速何かが起こります。
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