第14話 「お悩み相談」
連続投稿2話目です!
お正月三カ日は学校もなく図書館もやっていない。時間を潰す方法が家にいるくらいしか僕にはなかった。お父さんとお母さんは買い物に出かけているので、今は例によってお姉ちゃんと二人でテレビを観ている。
「ねえお姉ちゃん」
「ん~?」
クッキーを口に入れながら返事をする。もっとも注意は僕よりテレビに向けられているけど。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「お姉ちゃんはさ、二人から同時に告白されたことってあるの?」
僕がそう言った瞬間お姉ちゃんはむせて咳き込んだ。そんなに驚くことかなあ? まあいきなりするにはちょっとあれな質問だったかもだけど。
「い、いきなり何聞いてんのよあんた。あ、もしかしてあんた告白され――」
「そ、そんなんじゃないよ! ただちょっと気になっただけで……」
言えるわけがないよ、二人が僕をペットとして争っているなんて……。
その……え、エッチな趣味があると誤解されるのも嫌だし……。
「まあそうよね。あんたにもそんくらい浮いた話ができたのかと思ったけど、あるわけないか」
「うう……」
確かに二人は僕に恋愛方面での好意はないだろうけどさ……そんなことは分かりきってたことだけどさ……。
そんなことより、僕の疑問は同時に告白(違う意味で)されたらどうするかだ。
「まあそうねえ、高二の時に一度だけあったわ。で、何でそんなことを?」
「いや、その時お姉ちゃんはどうしたのかな~って」
「私はぱっと見顔で決めちゃったわ。性格もよく知らない他のクラスの人だったし、他に判断基準なかったしね。ま、一年で別れたんだけど」
「さすがです……」
顔でぱっと選ぶ、か。お姉ちゃんならそれくらいできるだろうな。弟の僕が言うのもなんだけどわが姉ながら昔から美人な容姿だし。
でも僕はそうもいかない。お姉ちゃんみたいに自分に自信もないし、何より相手の二人の方が僕よりもよっぽど美人な人達なんだから。
「うん、分かった。ありがとう」
「一和、何かあったの?」
「い、いや……何もないよ!」
「……怪しい」
姉弟だからか、何かを察してしまったみたい。けど口が裂けても言えないよ、ペット扱いされてるなんて……。
いくらお姉ちゃんでも知られたくないことというものはあるし――――という間にお姉ちゃんはなぜか僕の両脚を持ち足で僕の股間部分を一気に揺らし始めって――。
「いいいい! や、やめてお姉ちゃんん!」
「ほらほら、何があったか言わないと止めないわよ」
「ら、らめええ!!」
◇
「は~ん、そんなことがねえ~」
「はあ……はあ……」
お姉ちゃんの電気あんま攻撃で洗いざらい吐いてしまった。あんなの耐えられないもん……。ちなみに今の僕は腰が砕けてしまい床に座り込んでいる。
「まあ、私今の高校生の事情は知らないけど、あんたがそういうので喜んでるなら私は止めないわ……うん……」
「そ、そんなんじゃないよ! 第一ちょっと引いてるでしょ!」
確かにこれが普通の反応ではあると思う。でも本当に違うんだ。
「でもあんた、何で二人ともペットになるなんて許可しちゃったのよ」
それはごもっともな疑問だ。
僕自身も言われた時は気にしていなかった。そもそも理由がどうこうとか考えなかったし。
でも昨日の一件で初めて気づいたんだ。
「その、僕今まで女性にああいう風に言ってもらえたことなかったから……つい嬉しくなっちゃって……」
「まあ、あんたの言ってることも分からんでもないけど。あんた女の子みたいな顔のくせに全く女子に相手されたことないもんね~。あの子くらい?」
「うん。蓮ちゃんくらいしか仲良い子いなかったし……」
そう、今まであんな風に優しく、それもその……可愛い……って言ってくれた人なんかいなかった。
そこに僕はつい甘えてしまったんだ。
「まあその子達は取り合うってことは、どんな形であっても真剣な気持をあんたに向けてるってことでしょ? ならあんたはそれに向き合う義務があんのよ。それだけは忘れないように」
「向き合う義務……」
確かに……。僕なんかがおこがましいけど、犬飼さんも先輩も僕にまじめに気持ちを向けているのかもしれない。なら僕もそれに応えないと――いや、応えなきゃいけない!
もう甘えないって決めたもの。どちらがご主人様が、しっかり答えは出さないと。僕の中でより一層気持ちが強くなった。
「ありがとうお姉ちゃん」
「別に。まあそのお礼ってことで……」
お姉ちゃんが怪しい笑顔で僕を見る。あっ、こういう時は大体よからぬことを考えている時だ……。
「欲しい雑誌あるんだけど買ってきて。あとアイスも!」
「ええ、僕見たいテレビが――」
「へ~え……」
こ、この感じ……まさか……まさか!
「ほらほら、行くの行かないの?」
「いやああ! 行きます、行くううう!」
「あんたやらしい声出すわねえ」
「らめ、行くからああ!! らめえええ!!」
僕の悲鳴が近所一帯に響き渡っていたことを僕が知るのはもっと後になってからだった。
お姉ちゃんには勝てそうもないや……。
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