第105話 「これが答え」
久々の投稿です。が、今回は多くは語りません。
「それは……」
いくら僕でもその言葉の意味は分かる。緊張感がいっそう空気を張り詰めさせた。重圧で心臓が今にも張り裂けてしまいそうなくらい。
言葉が出なくなってしまう僕に代わり先輩がそっと口を開く。そこには並々ならない覚悟を感じたんだ。いったいなにがそこまでのものを感じさせるのかは僕には分からなかったけれど。
「君の、ちゃんとした答えを聞きたい。今度じゃなく、今この場で……」
今まで僕は迷い続けてきた。けどそれがいつまでも続くわけもない。それは分かっていた。分かっていたと思っていた。
そう、分かった風に思い込んでただけだったんだ。それを今この瞬間になってようやく実感した。
こんなにすぐに答えを決めなければならないとは確かに想定外ではあったけど――――いや、違う。どこかで分かってた。いつこういう日が来てもおかしくないんだと。
この瞬間になって実感した。僕はただ逃げ続けていただけ。
「私には……君が必要なんだ。私は見かけほど強くないから……私の進む道に、隣にいて欲しいんだ……!」
隣にいて欲しい。それは凄く嬉しかった。そんな風に言ってもらえて嬉しくない人なんているわけがない。けれど何だろう。この頭の中に浮かぶものは。そういったことをすべて受け入れたうえで決めなければならないんだ。
もう逃げることは許されない。
だから、僕がそれに対して出す答えは――。
「せ……」
一度息を落ち着かせる。それと反比例して心臓の鼓動が一秒毎にどんどん早くなっていった。今にも口から飛び出てきそうなくらい緊張している。
でも、逃げるわけにはいかない。真剣な気持ちには真剣に向き合わなきゃいけないんだ。
「先輩は……強い人です」
「そんなことはないよ……いくら私がか――」
「そ、そうじゃなくて!」
思わず言葉が強くなってしまう。だって、僕は否定したいから。
「僕が言いたいのは、人としてです。力じゃなく、人としての強さです!」
「……!」
「だから、僕が――隣にいる必要はないと思います……」
そう、これが答え。僕が出した返答。もう取り消すことはできない、後悔なんてもってのほか。だって僕の意思で、はっきりと答えを出したんだ。
僕は先輩の思いを……断った。