第104話 「決着を付けよう」
私の卒業まであと一か月と少しに迫っていた。高校三年間、振り返ってみれば色々な思いでがあった。けどそれはきっとみんなのおかげなんだ。みんなと出会えたから高校生活は楽しかった。きっと何年経っても忘れることのできない日々になったと思う。
声に出すのはこそばゆくてできないが……私は、彼らが大好きなんだ。
でも、そんなみんなに対しても譲れないものがある。それに決着をつける時が来たのかもしれない。
「ちょっとだけ、私に付き合ってくれないかな?」
◇
ここへ来るのは久しぶりだなあ。何回か訪れてはいるけど、未だに緊張で体が硬くなってしまう。
今日、学校が終わった後先輩に声をかけられたんだ。そうして一緒に訪れたのは先輩の自宅だった。ここには二度ほどお邪魔したことがある。
でもなんで僕をここへ……?
「上がっていいよ、誰もいないから」
「お、お邪魔します……」
唾をごくりと飲み込み、何も言わずに後をついていく。
「どうぞ」
「し、失礼します……」
久しぶりに先輩のお部屋に入ったなあ。前と変わらず甘い香りが鼻を刺激する。前に来た時をいやでも思い出しちゃうんだ。
「なんだか、会ったばかりの頃を思い出すね」
「ぼ、僕も思い出してました」
やっぱり思っていることは同じだったみたい。
「その、なんで僕をここへ?」
「実は……」
そこまでで言葉は途切れてしまった。けどなぜだろう、どこか神妙な面持ちなのは。なんというか、何かの決意をひしひしと感じるような……。
それが僕にも伝わってくる。
すると突然僕を後ろから抱きしめてきた。まるであの時と同じように。
「ちょ、先輩――」
「……一ノ瀬君……」
「は、はい?」
「私じゃ……」
緊張が僕にも伝わってきている。ドクドクと早まっていく鼓動がまるで聴診器を当てているかのように感じていた。それにつられて僕も胸が痛いほど鼓動が早くなっていく。
同時に顔が燃えているように熱くなっていった。きっと真っ赤になっているんだろうなあ。
そんな状態で僕は先輩の言葉を何も言わずに待っていた。そうして数秒後、そっと耳元で先輩が囁く。
「私じゃ、ダメかな?」
閲覧ありがとうございます。
そしてお久しぶりです、最近まったく投稿できずに申し訳ないです…。
さて、唐突な展開で驚かれたことでしょう。本作はもう最終章です。
あまり多く語ることはできないので次回を楽しみにしていただきたいです、なるべく早めに投稿します。
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