第10話 「ひとりぼっちの二人」
「じゃ行ってくるわ」
「うん、気を付けてね」
今日はクリスマスイブ、お姉ちゃんは彼氏さんと旅行へ。お父さんとお母さんは昨日からもう出発し、帰ってくるのは明後日。
こうして僕のひとりぼっちのクリスマスがスタートした。
「することないな……」
僕にもお姉ちゃんみたいに恋人でもいたら暇になることなかったのかな。僕なんかにはそんなの無理なのは十分理解してるんだけど、やっぱり思春期の男子としてはお姉ちゃんがちょっと羨ましい。
「……図書館にでも行ってこよう」
リュックを背負い早速図書館へ。図書館は静かだし暖房も効いていて暖かい。おまけに本を読んでいれば時間なんてあっという間。暇潰しにはもってこいの場所なんだ。
「みんな楽しそうだなあ」
道中駅の近くに行くと街のスピーカーから流れるクリスマスソングをBGMにカップルが何組も目に入った。手を繋ぎ腕に抱き着き……。
道行く人全員がそうではないけど、なんだかひとりぼっちの僕が寂しく感じてきてしまう。僕はこんな容姿だけど、さすがに高校生にもなればそういうものに憧れるんだ。
あまり周りを見ないようにしながら僕は足を進めるのだった。
「寒いなあ……」
◇
「いや、まあしょうがないよ。うん、また今度ね!」
電話を切ると不意に大きなため息が出てしまう。あたし――犬飼織姫は困っていた。今日遊ぶ約束をしていた友達が風邪を引いてしまったというのだ。
「ま、風邪なら仕方ないか……」
マンションの自宅にはあたしひとり、他には誰もいない。パパとママは……仕事で家にいない。ガランとした家の中でたった一人。
今までは思わなかったけど、一人って意外と寂しいもんなんだね。
「どうしようかな」
予定外の出来事で暇になってしまった。せっかくのイブなのに!
あたしに彼氏でもいればクリスマスデートでもしてたんだろうけど、生憎今はいない。過去にはいたこともあったけど、もうここ一年はずっとフリー。
こうなったら一日ゴロゴロ生活になってしまう。まあそれでもいいんだけどさ。でもせっかくのクリスマスイブ、やっぱ楽しみたいじゃん?
「そういえば……」
ふと頭の中に浮かんだのは同じ学校の男子だった。この前あたしがペットにした可愛い彼。今現在唯一あたしの家に上がった男子。
わんこはクリスマス、何をしてるんだろう。もしかして彼女がいたり――いや、それならあたしの頼みなんか聞かないはず。
もしかしたら暇してたり? いや、今は冬休み。さすがに予定の一つや二つあるかもしんない。
「ひとりぼっち……か……」
訳あってあたしは今は一人暮らし。こういう状況には慣れている。けどイブに一人はさすがに寂しいしむなしくなってくるなあ。
誰かを誘おうとも思ったけど仲の良い友達はみんな用事あるって言ってたっけ。ってことは暇なのあたしだけじゃん……。
「……買い物にでも行こっかな」
仕方ないけど買い物にでも行こう。本当はわんこがいてくれたら楽しくなりそうな気もするんだけど、急な話ではそうもいかないか。
けど、今度誘ってみようかな。わんこなら可愛い服とかチョー似合いそうだし、敢えて女の子ルックさせたら面白いかも!
「よし、着替えるか!」
それから何時間経ったかな? お昼ごろに適当にブラついていたあたしの視界がある人物を捉えた。
「……わんこ!?」
「あ、犬飼さん……!?」
まさかの遭遇、あたしのペット――一ノ瀬一和君。背が低く細い体、まるで女の子のような顔。めっちゃかわいいあたしのペット。
こんなとこで会えるなんて。そうか、きっとこれはサンタクロースがボッチのあたしにくれたプレゼントってやつなのかも! なんてね。
なんにせよ、こうなったらやるっきゃないっしょ!
「あ、あの犬――」
「わんこ! お散歩、行こっ!!」
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