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竜王様異世界漫遊記   作者: 聡塚聡
姫と魔王と勇者の世界
6/25

続・メイドさんの夏休み

 今日も録画していたドラマを見る。


 主人公の恋人が母親の生まれ変わりであることが判明した後、事態は急展開を迎えていた。

 二人はその秘密を周囲に知られないようにしながらも、今までと同じようには付き合えなくなってしまう。

 それを聞いた主人公の父親は、二人を応援しようと食事に誘う。

 だが……ふとしたきっかけで、生まれ変わりであることに気づき、調べ始める。

 ついに生まれ変わった妻だと気づいた主人公の父親は――なんと関係を持ってしまうのだった!

 今の恋人とかつての夫の間で揺れるヒロイン、その行く末は果たして!


「それにしても思い切ったと言うか。

 ずいぶんと攻めた脚本ですねぇ。

 今と昔の恋人、というのは定番ですが……

 業が深いと言うか、薄い本のようと言うか」


 コーヒーをすする。

 急展開に次ぐ急展開で目はさっぱりなので、今度は落ち着けるためにだ。

 今日のお茶請けはお中元で頂いたクッキー。

 こうして毎年少なくない数の見舞いが届くのを見ると、竜王様もそれなりに人脈や尊敬を集めているのだなぁと思う。



 その竜王様は今朝、二度目の異世界転生――というより転移、むしろ旅行――に旅立った。

 前回は実験を兼ねたものだったそうで、今回は少し長くなるとのことだった。

 私では測りきれることではないので、そうですかとだけ言って送り出した。


 竜王様、と私も他の(ひと)も呼んでいるが、実際のところはよくわからない。

 私たち竜や神とかなんとかいう存在は、この星ではだいぶ前に()()()

 人や獣、魚や虫たちに譲り渡して、表と裏の間の世界へと移り住んだ。

 それもまた一つの異世界移動というやつだろう。


 その立役者として「竜王様」と呼ばれるようになったのが、竜王様である。


 つまるところ、竜かも知れないし、神かも知れないし、別の何かかも知れない。

 私が知っているのは、この話と、普段はだらだらしているが本気になると死にたくなるほど強い、ということだけだ。


 間違っても主人公のように扱ってはいけない。

 かといって悪役やトリックスターでもいけない。

 言うなれば、彼女は舞台装置である。


 例えるなら、昼ドラで偶然家に置いてきたスマホであり、たまたま見つけた写真である。

 他にも遠山の金さんの桜吹雪、水戸黄門の印籠、アニメの必殺技バンク。

 それっぽい言葉で言えば、デウス・エクス・マキナ、というやつ。


 話を進め、終わりへと向かわせる装置、あるいはすべてを解決する万能機。

 私が何を言いたいのか分かるだろうか?



 あの(ひと)は、めちゃくちゃにするのである。

 勇者と魔王の戦いだとか国同士の諍いだとか、愛だとか恋だとか、夢とか希望とか。

 そういうものすべてをめちゃくちゃにして、世界は救われた、とのたまう(ひと)だ。


 私がこうして夏休みと称して平和に過ごしている間に、一体何が起こるのか。

 恐ろしい。

 恐ろしいが、少なくとも自分が巻き込まれないと思うとむしろ楽しみ。

 ちょっとゲームで上手くいかないだけでぽきぽき首を折ってくる。

 そういう理不尽が一切ないというだけで、なんと安らぐことか。


 ドラマやアニメも同じ、自分が関係ないからこそ、荒唐無稽で過激な話も楽しめるのだ。


 私は、2つ目のお中元の箱を開けた。


「生菓子は早めに食べないといけませんからね」

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