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竜王様異世界漫遊記   作者: 聡塚聡
剣と魔王たちの世界
15/25

竜王様と勇者の剣

「この支配度じゃワープはできんが、多少なら空間操作は問題なさそうだな」


 周りには動かなくなった異形の虫がいくつも浮いている。

 ダメージを与えられなかったが、空間を固めることは出来た。


「それにしても……」

「 ぎ ぎぎぎぎぎぎ ぎぎぎぎぎ 」

「会話は無理か」


 この世界の魔物(仮)を倒せる何か。

 それを探そうにも少女には手がかりがなかった。



「遠見が使えれば楽だったが……はぁ、直接見るか」


 周囲に浮かぶ虫を足場にひょいひょいと飛んでいく。

 足場が足りなくなれば、空間固定を解除して近づいた虫をまた固定する。


 しばらくすると、高所で気温が下がっていくからか虫は近寄らなくなってくる。


「もう少し高い方が良かったけどまぁいいか。

 町か道、最悪川があれば見つけやすいんだが」


 足元に広がる大森林は予想以上に広大であった。

 北には山が見え、西はかすかに平地が見える。

 それ以外は、森である。


「うーん……現地の人間から聞くのは無理か。

 なら魔力とかエネルギーとかが濃いところは……」


 ぐるりと見回して、森の中の一角に目を付けた。

 他の木々よりも頭一つほど大きな木が突き出ている。


「周囲から魔力を吸い上げてるんだな。

 何かしらの魔力を使った余りで木も育ってるって感じかな」


 足場にしていた虫からなにもない空中へとジャンプ。

 そのまま見えない足場をぴょんぴょん飛んで大木へたどり着く。

 上から見る限りでは、大きさ以外の違いはわからない。

 地面に下りると、ようやく異質なものがあった。


「大樹に突き立てられた封印の剣! それっぽいねぇ」


 木の根に錆びた剣が刺さっていた。

 少女は近づき、それに触れる。


「ん、抜けるな? これは勇者竜王様の爆誕来るぞぉ!」


 錆びた剣の柄を握り、ゆっくり引き抜く。


 天に向かって掲げてみる――が、何も起きない。

 振ってみる、やはり何も起きない。


「……たまたま刺さってただけか!?」


 少女が叫ぶと、剣が刺さっていたあたりが光り始めた。


「あっ、そっち?」


 光がふわりふわりと集まり、だんだんと眩さを増していく。

 やがて、光が落ち着くと、少女が倒れていた。

 白い髪、整った顔立ち、けれどまだ幼さの残る雰囲気だ。

 倒れている彼女に近づいて、頭をぽんぽんと優しく叩く。


「起きろ。おい、起きろ。たぶん勇者、お前が世界を救うんだ」

「ん……」


 しばらくぽんぽんしていると、小さく声を漏らして少女が目を開く。


「……だれ? どこ?」


「うむ、私のことは竜王様、と呼ぶといい」

「りゅーおーさま?」

「そうだ。敬えよー、いいことあるぞ」


 倒れていた少女は竜王様と名乗る少女より少し大きい。

 纏わりつくように巻かれた、質素な服から覗く体つきは幼く見える。

 あるいは竜王様の方が大人びて見えるのかも知れない。


「で、お前の名前は……ん? どうした?」


 少女が錆びた剣をじっと見つめていることに気づいて、剣を握らせる。

 ぱちん、と光が弾けて、錆びついた剣の表面が剥がれ落ちた。

 白銀の美しい刀身が現れ、少女はそれを見て笑みをこぼす。


「よかった……」


「おーい、挨拶は大事だぞー」


 少女は大事そうに剣を抱えたままゆっくりと身を起こす。

 そして、竜王様へ向き直った。


「わたしは、けん、です」

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