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竜王様異世界漫遊記   作者: 聡塚聡
姫と魔王と勇者の世界
11/25

竜王様と呼んでもらおう

 勇者が走り出す。

 あの子を連れてくるのだろう。


 だが、それは私にとっても好都合。

 止める必要もない。

 警戒すべきは、魔力も何も測れない、目の前にいる亜人の少女。


「貴様、何者だ?」

「ふふん、この世界を救いに来たピンチヒッターだ」


 新たな勇者……いや、そんなはずはない。

 この世界の勇者は、王族の力でしか呼び出せない。

 どれだけ力があっても、力を手に入れた私は勇者以外で倒せない。


「そうか、いや、貴様が何者でも構わない。すぐここから消してやる」

「せっかくだからもっと堪能してから――」


 少女の体を魔力の槍が貫いた。

 問題ない。

 攻撃が通る、それなら殺せる。

 このまま槍を回して体を引き裂いてやれば終わりだ。


「話してる途中はないだろ。これだからQTEはクソなんだよな」

「なに……?」


 力を込める。

 回転した魔力の槍があの体を引き裂いている。

 それなのに、槍はぴくりとも動かない。


「さて、私では倒せないらしいが……どうなるかやってみるか!」


 少女の背に炎が煌めく。

 即座に魔力の障壁を展開するが、攻撃は来ない。

 こちらの意識を奪うための囮だったか、やはり攻撃は効いているのか。


「ん……そうなるのか」

「……コプ」


 声の代わりに、喉元で泡が弾けた。

 手をやると、首あてに穴が空いていた。

 気づく間もなく、首を貫かれていた。


 しかし、周囲の魔力が集まり、瞬時に空いた穴が塞がる。

 ……問題はない。

 どれだけ力が強かろうと、どれだけ速かろうと、この力は誰にも止められない。


「攻撃が通るけど魔王の概念が崩れない限りは復活ってとこかな。

 支配度がこんくらい高けりゃまぁ無いこともないが……不自然だなぁ」


 少女はあれやこれやと呟いている。

 内容は要領を得ないが、おそらく、本質的に理解しているのだろう。

 なにより、強いだけの力では私を倒せないことも。


「貴様は……この力のことを知っているのか」

「知らんけど予想は出来る。だから勇者とお姫様が必要なんじゃないか」



 危険だ。


 勇者ではないが、それに次ぐ危機、そう認識せざるを得ない。

 問題はこれをどう対処するかだが――


 一度に使えるだけの魔力を使う。


 地面から魔力の槍。

 不意打ちではないからか、刺さる前に弾かれる。


 魔力の星の連続攻撃。

 これも笑い混じりに弾かれる。


 再び背後からの魔力の槍。

 尻尾で掴み、砕かれる。


 ならば一点集中。

 魔力の剣を振るい、叩きつける。

 それでも、素手で止められる。


「ただの亜人でもない、魔族でもない、貴様は……」

「それそれ! そういうの言って欲しかったの! 私は」

「連れてきたぞ!」



 勝った。


 もはや躊躇はない。

 こんな化け物がいる以上はこうするしかない。


「滅ぶがいい。もろともに」



 雲を割いて天から星が落ちてくる。

 戦う最中に集めた魔力をあるだけ使った。

 この地を吹き飛ばすのに十分な魔力の星。

 勇者も、この化け物も……あの子も。


 すべてを消滅させる終わりの星。


「いやこんなん気づかないわけないだろ」


 目を向ける間もなく。

 漆黒の星は跡形もなく消え失せた。


 ただ雲が晴れ、ぽっかりと空いた青空が広がっている。


「なん、なんだ……」


 ふん、と鼻を鳴らして少女は言う。


「竜王様、そう呼んでもらおうか」

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