7 昼食後のひととき
娘とまったり
「お父様。隣よろしいですか」
昼食後に外で子供達が元気に遊ぶ姿を眺めていると、リリスがそう言いながら隣に座った。
「皆元気ですね」
「そうだね。そうそう、リリスお疲れ様。座学とかを任せっきりにしてすまないね」
「いえ、お父様ほど上手く出来なくて大変ですが楽しいです」
俺が教えるにも淑女の嗜みなどは聞きかじりの知識しかないのでリリスにそういう方面は丸投げしているが、楽しそうに微笑むリリスの姿に一安心する。
「なら良かったよ。私のせいでリリスには大変な思いをさせたからね」
「殿下のことでしたら何とも思ってませんよ。むしろしばらくはお父様と一緒にいられて嬉しいです」
「そう言って貰えると助かるよ。でもリリスも好きな人が出来たら遠慮なく言っていいからね」
父親としては複雑な気持ちになるが、それでも愛娘には幸せになって欲しいのだ。そんなことを言うとリリスはくすりと笑って言った。
「そうします。もしかしたらこの孤児院の子供の誰かを好きになるかもしれませんしね」
「それは怖いな。未来の婿を育てきゃいけないのか」
そう笑いあう。まあ、そんな未来が来ることはあんまりないだろうけど、グリム、カイル、キバの三人の誰かがリリスに惚れるという想定はなくはないだろう。あるいは女の子の誰かが惚れるかもしれない。まあ、それならそれでいいさ。リリスが選んだ人なら俺も素直に受け入れよう。
「お父様は再婚はしないのですか?」
「して欲しいのか?」
「娘としては複雑ですが、私が仮に嫁に行っても誰か側でお父様を支えられる人がいるに越したことはないと思います」
「私は優しい娘を持って幸せだよ」
そんなことまで想定するのだから俺の血筋も確かにリリスには流れてるようだ。見た目も中身も母親そっくりなのに俺の面影がある娘。その娘は優しい笑顔で言った。
「お父様がお母様のことをとても愛しく思っているのは知っています。でも、私も大きくなりました。もしお父様がお母様に抱いた気持ちを抱くような人に出会えたらその時は素直になっていいんですよ」
「本当に良く出来た娘だよ」
父親のことを思っての発言に苦笑する。少し前までもっと幼く感じていた娘が大人になったことに僅かな寂しさを抱きつつもその成長を素直に喜ばしく思う。妻に抱いていた気持ちか・・・そんな感情をもう一度抱ける異性に会えるのだろうか。基本的に妻よりいい異性に出会えた経験がないのでそんなことはないだろうとその時は思っていた。後にそういう感情を抱くことになるとはこの時の俺はつゆほども思っていなかったのだった。