3 孤児院の子供達
本格的に子供達の紹介をするのは次あたりからの予定です
「先生!お姉ちゃん!」
娘と共に孤児院に来ると真っ先に出迎えてくれる金髪の少女。最年長のその少女は孤児院の子供の中心でもあり、いつも来ると真っ先に出迎えてくれるので俺は微笑んで言った。
「ミモザ。元気していたかい?」
「はい!」
「そうか。なら良かったよ」
そうして頭を撫でると嬉しそうにするので微笑ましく思っていると、娘が少しだけ拗ねたような表情で言った。
「もう、お父様はミモザばっかり可愛いがってずるいです」
「リリスのことも可愛いと思っているさ。なにしろ私の自慢の娘だからね」
「お父様はお口が達者ですね」
そうは言いつつも嬉しそうにするので、娘とのコミュニケーションはこれでいいだろう。そうしていると他の子供達も俺達に気づいて近寄ってくる。この孤児院には現在10名の子供が在籍している。親に捨てられた、あるいは劣悪な環境から引き取った者が多いが、何人かはすでに巣立っているので、現在はその子達だけが残っている。
まあ、本来孤児院なんて機能しない方がいいのだろうとは思う。親の手で愛情を持って育てるのが一番いいが、現実問題それが不可能なことは間違いないので、俺はこうして孤児院に子供を引き取って、それぞれの道を目指せるように愛情を注ぐことしかできないだろう。
「そうそう、今日から私とリリスはこちらに住むことになるからよろしく頼むよ」
「本当ですか!嬉しいです!」
「ただし、今日からは授業もそれなりに多くなるけど覚悟はいいかな?」
その言葉に嬉しそうにしていた子供達が若干不満そうにしていたが、全く反対しない辺り素直な子供達なのだろう。
「そういえばお父様。お父様はあまり荷物が多くありませんがよろしかったのですか?」
「うん?ああ、私はあまり物は持たない主義でね。妻の形見と愛用の剣だけで十分なんだよ」
「お母様の形見・・・」
そう言いながらリリスは胸元のペンダントをそっと触る。この年頃になるとその仕草すら妻にそっくりに思えてくるが、受け入れたことでそれすらも懐かしく思える。
リリスのペンダントは生前妻が愛用していたもので、最後にリリスに渡したものでもある。妻はそのペンダントには何かおまじないがしてあると言っていたがついぞ俺には教えてくれなかった。リリスは知ってるようだが、妻との約束で教えてはくれないので、結局わからないままだが、それくらいの秘密は許そう。
「さあ、リリス。早く荷物を運んでから授業をしようか。リリスにも女の子達の教育を手伝ってもらいたいからね」
「わかりましたお父様」
そうして、荷物をそれぞれの部屋に運んでから授業の準備をする。元々この孤児院には子供達の部屋とは別に俺達が泊まれるように部屋を用意してあるので、生活には困らない。侍女もリリスの専属の侍女は本人の希望で一名連れてきたけど、俺にはいないので、本当に貴族の頃とは違う生活になりそうだ。
まあ、でもこうして子供達と過ごせるなら、きっと楽しい生活になるだろうと確信できたのだった。