賭け
『しんちゃん:食堂にいるー』
翌日、私より先に講義が終わっていたらしい彼からのメッセージを見て食堂へと足を運んだ。
食堂には数人が勉強をするために残っていた。
その中に彼も1人4人かけの机でペンを走らせていた。
彼を見つけ、少し足を速めると足音で気づいたのか顔を上げた。
「お疲れ〜、しんちゃん勉強してたんだ。えらいじゃん笑」
「いや、俺明日本試あるからさ〜笑笑」
という彼の前には明らかに今まで手をつけていなかったのであろう分厚い講義資料が並んでいた。
「えっ…笑、それ、大丈夫なの…?」
「んー、、、やばいかな笑笑」
「落ちてもしらないよー」
いつも通りの緩い会話を挟みながらお互い明日へ向けて勉強を進めた。
「…、そういえば話ってなに?」
「いや、別に話ってわけでもないんだけど〜、
最近舞どんな感じ〜?」
抽象的な質問に戸惑いながらも
「べつに、、、いつも通りだけど?なんかあった?」
「なんか最近連絡ないなーと思ってさ。
なにもないんだったらいいや〜」
彼は軽く話を流し、違う話題に話を移した。
そんな彼に少し違和感を抱きつつも、あえて触れずにスルーした。
そのあとは少し話をしつつも、お互いペンを走らせるのに結構必死だった。
そんなこんなでいつの間にか時間は経ち、時計を見ると学校の閉館時間30分前だった。
「はやっ、もうこんな時間じゃん!全然頭に入ってないよーー」
「それなー、てかお前さっきからそのページしかやってなくない?他のところ大丈夫なのかよ笑」
確かに彼と勉強をやりだしてからずっと同じ範囲しかやっていない。それくらい集中できていた。
「しんちゃんみたいに前日ギリギリで始めてないし!それにどうしてもここの範囲が覚えられなくてさ〜」
「じゃあさ、賭けない?」
彼はSっ気たっぷりの顔で口を開いた。
「賭けるって?」
「明日のテストでどっちか再試に引っかかったら相手の言う事1つ聞くっていうやつ。
どっちも引っかからなくてもお互い1つ相手の言うこと聞くっていうのどう??」
「なにそれー!どちらにせよ言うこと聞かなきゃいけないんじゃん!!」
「でも必死にはなれるだろ?
俺はなにお願いしようかな〜♪」
急に機嫌を良くし始め、ニヤニヤしながらこっちを向いてくる。
これは逃げたら負けな気がする。
私の心がそう呟いた。
「いいよ、賭けようじゃん!!」
そう言った私に彼はまたSっ気たっぷりの笑顔でこっちを見て
「来週、楽しみにしてるわ」
そう呟いたと同時に閉館時間となり食堂の電気が全て消えた。
真っ暗な中、スマホのライトを頼りに机を片付け学校を後にした。
私は彼の異様なニヤつきが気になり、帰りの電車内で聞いてみた。
「賭けるって言ったけど、あたしへのお願いって もう決めてるの?」
「うん、決めてるよ〜♪」
「なになに?ご飯奢るとか?サークルの仕事押し付けるとか?」
「んー、なーいしょー」
聞き流すように彼は適当な返事を私に返しただけだった。
今思えば、賭けの意味を履き違えてますよね笑笑
2人とも馬鹿だったんです笑