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怪物たちVS  作者: 樫屋 Issa
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学生VS殺戮者

基本的に話は時系列を無視したオムニバス形式で書いています。

放課後の龍泉高校、部活も無く帰ろうとしていた黒山竜也くろやまたつやは上級生の女子に呼び止められ図書準備室で密談していた。


「どうした白虎?俺は早く帰りたいんだが?」


竜也自身は本来ならば部下である四神の事を毛嫌いしているので話を切り上げたかったのだが白虎こと虎上白衣とらがみしろえは切羽詰まった表情で語り始めた。


「山根さんが朱雀に連れ去られました」

「おい!!どういう事だ?」

「山根さんの両親はロクデナシですから遊ぶ金欲しさに娘を当主に売ったんです」

「・・・あんのクソ親父が~~~~~!!」

「場所は港の12番倉庫、外に足を用意してあります。お急ぎ下さい」

「・・・・・フン、随分用意が良いが詮索は後回しにしといてやる」


竜也の家はこの街の裏側のトップだった。腐り続ける家を嫌って親族は離れて行き母が事故で昏睡状態になると婿養子だった父である秀治が更に暴力性を増して組織を益々凶悪にした。

12番倉庫は竜也にとって初めて父の凶行を目の当たりにした因縁の場所であり、ここから反逆の決意を固める切っ掛けとなった場所でもある。

今の竜也と彼が集めた戦力ならば裏組織の壊滅も可能だったのだがそれでも身内の情が判断を鈍らせたのか、今まで大きな行動は起こさなかった。それも今日までだが。

竜也はメンバーに連絡を取った。


「俺達はこの日の為に集まったんだ、事務所・幹部・末端、例外は無い、遠慮?必要無い!!好きなだけ暴れろ!!」


この連絡を受け取った自警団は関連する構成員達を襲撃、指令通り全てを討滅した。

倉庫に駆け込んだ竜也が見たのは数人のチンピラと初老の男と高校の女教師、下着姿で横たわる山根先輩そして・・・。


「クソ親父」

「何だ?竜也か?お前もおこぼれをもらいに来たのか?待ってろよ俺が遊んだら分けてやるからよ」


その言葉を無視して竜也は取り巻きのチンピラ共を次々と片付けて行った。初老の男と女教師はその光景に驚いている。


「おい、鶴田のジジイ!こりゃどういう了見だ?守護の朱雀も地に落ちたもんだな!」

「・・・・・」

「返答は無しか・・・朱音あかね!!テメェ堅気カタギに手ぇ出して何のつもりだ?」

「彼女の両親は我らに娘を売り渡しました。最早彼女も堅気ではありません」

「それがお前らの最後の返答だな、わかった」


竜也から殺気が放たれ秀治は焦る。


「おい、ガキが!今まで誰のお陰で飯が食えてたと思ってるんだ!」

「ああ、そうだな、だからこれはその礼だ。残さず受け取れ」


山根美子ははっきりしない頭でその光景を見ていた。私を連れてきた先生、私を犯そうとした悪い人、そして悪い人と戦う部活の後輩、飲まされた薬の影響で理解が追いついていないが何故か涙が流れた。


「やっぱりお前だ!初めてその目を見た時にブチ殺しておくべきだった!今からでも死ねや糞ガキが!!」

「死ぬのはテメェだコラ!!」


秀治がナイフを振り回すが竜也にはかすりもしない、竜也の一撃が秀治の左腕の骨を砕きうめき声を上げる。

力の差は歴然だった。


「最初から・・・本当に最初からこうしておけば良かった」


もう一方の腕もへし折ってよたよたと立つ父を見つめ最後の一撃を加えようとした時、竜也の背後で『カチャッ』と音がした。


「黒山君!!」

「!?」


乾いた破裂音と共に放たれた銃弾は竜也の横を通り抜け秀治の胸に吸い込まれた。


「ゴバッ・・・ア・・・アア、折角あの女を・・・事故に・・・見せ掛け・・・・」

「おい!あの女って母さんの事か!?じゃあ事故で昏睡状態ってのはお前が?目ぇ開けろよクソが!!」


そのまま父秀治は目覚める事は無かった。


「鶴田の爺・・・」

「申し訳御座いません、ですが坊っちゃんには罪を背負って欲しくは無かった」

「・・・まあ良い、それより親父が母さんを罠にハメたってのは本当か?」

「証拠は何一つありませんでしたが、不自然な事故ではありました。可能性は十分あるかと」


そんな時倉庫の入り口に全身をコートで包んで帽子を深く被った不気味な二人の小男が現れた。


「親父が利用していた偽装屋か?手が早いな」


この二人は秀治が殺人を犯した時にどうやってか知らないが死体を自然死に見せ掛ける様に細工をする業者だ。本人が細工される事になるのは皮肉であった。


「気味の悪い連中だ。さっさと持って行け、いずれお前等の正体も暴いてやる」


小男達は秀治の死体を運ぶと消え去ってしまった。


「さて鶴田朱音、山根先輩に何をした?」

「私が調合した睡眠薬を飲ませました。ご安心を、副作用等は一切ありません」

「そうか・・・副作用は無いのか」


その瞬間の竜也の動きが見えた人間は誰一人としていなかった。朱音はいつの間にか宙を舞い倉庫の天井に激しく体を叩きつけられそのまま落下した。


「預けた龍牙朱雀を山岸のネーチャンに奪われて、数回俺の意志を無視した行動を行い、そして今回堅気にまで手を出した。覚悟は出来てんのか?」

「ヒッ、ゆる・・許し・・・」

「失せろ!無能な害鳥に朱雀の名は分不相応だ。鶴田家が今後何らかの形で俺の行動に口出しする事は一切禁じる。爺、その女を連れてさっさと消えろ」


竜也は眠ってしまった美子を抱き上げ車まで戻った。


「とりあえずウチが管理するマンションの一室にでも住まわせるか」


携帯には襲撃成功のメールが複数届いていた。この街の闇が一つ晴れたことに一瞬安堵したがそれでも直ぐに気を引き締めた。


「まだたった一つ片付いただけだ」


携帯を取り出し山根家にある美子の荷物をマンションに移動させる様、メンバーに指示を出した。


◇ ◇ ◇


図書準備室に入ってきた男性教諭は虎上白衣に声を掛けた。


「良いのか?このままだと黒山君と山根さんのラブロマンスが展開されるかもしれないが良いのか?お前、黒山君の事狙ってるんだろ?」

「蔵田先生、問題ありません。私は師匠から学びましたから、欲しいものが2つあるなら何も片方を遠慮する必要も無いでしょう?私は竜也様を愛していて美子ちゃんとは親友なんです。二人がくっつくなら両方を私のモノにしてしまえば良い、どっちも欲しいのに片方だけ選ぶなんてナンセンスです」

「山根さんのご両親に彼女を売る事を持ち掛けたのは君だね?」

「ええ、彼女は両親から虐待されていましたから引き離す必要がありましたので」

「その上で俺達“天川”を雇って密かに山根さんを護衛させた・・・いや俺達だけじゃなく遠藤君も出て来てるかな?」

「竜也様を信じていない訳ではありませんが美子ちゃんにはこれ以上傷一つ付いて欲しくありませんでしたから万全の体制でのぞむ必要がありました」

「・・・・・まあ、動機はどうあれ俺達はお人好しだから護衛任務なら喜んで引き受けよう。今後共ご贔屓に」


◇ ◇ ◇


~翌日 桜マンションの一室~


山根美子は目が覚めると見知らぬ部屋に居た。


「おっと、大丈夫?気分悪いところ無い?」

「え?倉田さん?ここは一体?」

「ここは桜マンションの最上階、貴女は助け出され黒山君に保護されました・・・と言えば聞こえは良いかもしれませんが、ぶっちゃけ口封じです」

「口封じ・・・」

「貴女は色々と都合の悪いモノを見ちゃったからどっちか選ぶ事になるかもね?」


倉田有紀はクラスで友達と世間話でもしているかの様に楽しそうに現状を語ってる。


「選ぶって?」

「全部見なかった事にするならこの部屋と一生困らないだけの資金を提供かな?拒めば監禁して一生表には出られないカモ?まあ、私は部外者だから本当のところは知らないけどネ・・・おっと!?お客さんが来たみたいだ」


そう言って有紀は狐のお面を被ってバスルームの方に入って行った。

程なくして玄関のドアがガチャリと開いた。

そこに現れたのは龍泉高校の若き養護教諭、鶴田朱音だった。


「鶴田先生・・・?」


そに手に握られていたのはバタフライナイフ、それを美子に向かって振りかざした。


「はい、そこまで~~。ダ~~メだよ先生、そんな危ないモン振り回しちゃメッ!でしょ?」

「!?誰だ貴様?放せ!!」

「私が誰か知りたければそれなりの実力を身に付けてからまた来てね」

「ここで殺さなくちゃあの子は・・・竜也はまた不幸になる。未だ眠り続ける龍子りゅうこ様の御意志を私が果たさなければ!!」

「勝手な事を!!龍子女史はそんな事望んで無い!もう一度頭を冷やして出直して来いや!!」


有紀がワイヤーで朱音を拘束する。成り行きを見守っていた美子はベッドから起き上がり宣言した。


「先生、私もう決めました。絶対に先生の言う通りにはなりません!!え~~~~~~い!」


気の抜けた掛け声と共にパンチをお見舞いしようとした美子は空回りしてつんのめり頭を思いっきり朱音の顔面にぶつけた。


「い・・・痛い・・・」


朱音は盛大に鼻血を吹き出し悶絶してしまった。


「ちょっとカッコ付かないけど山根ちゃんナイス、このまま外に叩き出してやる」


部屋の外にあるエレベーターに朱音を放り込んだ有紀は満足した顔で戻ってきた。


「後は下で私の部下が処分してくれるでしょう」


そう言ってニンマリ笑った有紀は美子の手を握った。


「今夜、近所のイタ飯屋でご飯食べよ。どんな結論を出したのか聞いてみたいし」


◇ ◇ ◇


~桜マンション一階~


「なんで貴方が私を助けるの?」

「先生が困ったら生徒が手伝うのは変ですか?」

「・・・・・何考えてるか知らないけど礼は言わないわよ山岸君」

「ウチの姉ちゃんに取られた刀、取り返して欲しくないですか?・・・・・詳しい話はまた今度しましょう」


この日以降鶴田朱音は学校で大人しく過ごす事になるが、それはやがて訪れる嵐の前の静けさであった。

今回の話も別作品の主人公“遠藤段蔵”が旅立つ前の話です。

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