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怪物たちVS  作者: 樫屋 Issa
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狂気VS忍 中編

相変わらず遅いですがお読みいただければ幸いです。

「洗脳薬?」

「ええ、私の母である“毒使いのくれない”が作り出した強力な洗脳薬、通称“案山子かかし”があなた方黒龍による襲撃のドサクサでとある男に盗まれてしまったんです」

「ふ~ん、中々面白そうな話じゃないか(耳掃除しながら)」


馬場は相変わらず妃の方を向かずリボルバーを弄り続けている。それが未だ拘束されている妃に恐怖を与え続けていた。


「男の名はもり浩大こうだい、私の母を殺害し案山子を奪って行方を眩ませてしまいました。本来正義の執行者である玄武からこのような者が出てしまった事は非常に残念ですが・・・」

「せ~ぎのしっこうしゃ~?人様を暗殺しょうとしておいてそりゃまた随分身勝手な正義もあったもんだなオイ」

「黒山様に市井しせいの者と関係を結ばせてしまってはどんな混乱が生じるか分からなかったのですあの方にはもっと素晴らしい血を・・・」


コツンと銃口が妃のひたいに押し付けられた。


「さっきから聞いてれば何?俺達の巫女様が俗人の凡人で血がけがれてるってか?そ~言うテメェはさぞ綺麗な血が流れてるんだろ~なぁ?今すぐ穴開けてどんな血が流れているか確認してやるよ」


馬場が引き金を引いたが弾は出なかった。


「ロシアンルーレットだ。運が良いな」


そう言って馬場はリボルバーのシリンダー部分の“6つの穴”から“5発分”の弾丸を外して近くのパイプ椅子に置き今度は懐から大きなオートマチックを取り出した。妃は真っ青な顔でその様子を見つめていた。


「でだ、俺にその案山子って薬を取り返して欲しいんだな?」

「え?・・・ああ、はいそうです」


妃は怪訝な顔で馬場を見つめた。


「何だよ、そんな変な顔をして」

「いえ、てっきりとんでもない対価を要求されるのかと・・・」

「対価ね・・・じゃあ命でいいや」


そう言うとオートマチックを妃に向け引き金を引いた。『パン』と安っぽい音がして心臓が止まる思いをした妃がよく銃口を見てみると「BANG!!」と書かれた旗が飛び出ていた。


「ぎゃははははっあはははははっあ~っはははははは!!」

「もうヤダ~~~~!!怖い~~~!!帰らせて~~!!」

「帰ってもらっちゃ困るな、お前はこれからずーーーーーっと俺の助手として働いて貰うんだから」

「私、明日ガッコウが・・・」


すると馬場は携帯端末を取り出し電話を掛けた。


「ああ、どうも龍泉高校の校長先生。そちらの生徒の妃玻璃って奴を“自主退学”って事にしといて下さい。そうあの玄武衆の・・・理由は性格の不一致?音楽性の違い?まあ何でもいいや」

「ちょ・・・・・」

「オメデトウ♪今日から君も試験も何にも無い社会人の仲間入り。就職先はウチ、売れっ子建築デザイナー馬場丈の秘書だ。低賃金?ブラック企業?高校を自分探しの旅で中退したお嬢ちゃんにはお似合いだろ?さあ!!忙しくなるゾ~」


この時妃は自分達“玄武衆”と“黒龍”とでは最初から勝負にならない事にやっと気づいた。触れてはならない怒らせるなどもってのほかだと、余りにも遅すぎた話ではあるが。


「安心しろ、殺しはしないさ。死ぬような目に遭うかもしれないがそうだとしても俺の知ったこっちゃないけどな」


最早全てに絶望しきった顔で拘束されているので首しか動かせないがうなだれている。忍びである自分は日向には出られない人間なのだと自覚はしていたが余りにもあっさりと終わりすぎた。こんな事なら最初から協力の要請になんか来なければ普通の生活が出来たのでは?とも考えたが・・・。


(違うわね、黒龍は学校関係者の中にも・・・そもそも校長が関係者だったのだ。ならばそのまま生活していたとしてもある日突然同じ目に遭っていた可能性は高い、私が玄武衆として活動していた時点で詰みだったんだ。数年前、一人の少女が抜忍となって行方を眩ませた時誰もが彼女を腰抜けと馬鹿にしたが恐らく彼女はこの未来を既に予見していたのかもしれない)


そんな事を考えていると馬場はあっさりと妃の拘束を解いた。


「う~ん、素材は悪くないがその辛気臭いツラは頂けないな。俺に似合ったハッピーな女にしてやるよ」


そう言うと妃の髪の毛をツインテールにして異様に派手なリボンで縛ってしまった。


「後はコレに着替えな、その後はスマイルだ。後先考えずどこまでも馬鹿っぽくな!」


用意されたのは真っ赤なブラ・Tバックに赤・白・黒三色の所謂ゴスロリ服、着替えの間馬場はどこかに行ってしまった。


「逃げるのは・・・無理そうね」


ここから逃げられたとしても自分の動きは必ずどこかで監視されているだろう。出た瞬間に即、交通事故(に見せかけた暗殺)なんて事になっても何ら不思議ではない。当初の目的に協力的なだけまだ幸運だ。

着替え終わった妃のところに再び馬場が顔を出した。


「う~ん100点、1000点中な。二階にお前の部屋を用意してやったから今後はそこで暮らせ」


妃が案内された2Fはヒドイ有様だった。不潔ではなくむしろ清潔な部屋だ、埃も無く壁紙も真新しく寝具も新品が用意されていた。だが中には無数のコスプレセット・大人のオモチャ・ゴム製品が大量に保管され、更に照明が目に痛い真っピンクに切り替え可能でミラーボールも飾られていやらしさが際立っている。


「鍵掛けて誰も入れないようにしてあるとは言え表向きはフーゾク店だからな、メンバーの皆がシャレで色々置いてったんだよ。おっと誤解するなよ?半分は女性メンバーの持ち込みだからな、ククク」

「うう・・・、部屋は自分で探します」

「見つかると思うか?土地・建物の管理は俺の管轄だ。不動産関係にも知り合いは沢山いるからな」


完全に退路を絶たれてしまった妃はおとなしく頷くしかなかった。その光景を満足そうに見て馬場は早速仕事に向かうことにした。


「それじゃあ他のメンバーに挨拶回りに行くか」

「案山子の奪還は?」

「気が向いたらやってやるよ」

「そんな~」

「先ずはオカルト姉さんに挨拶に行ってみるかね」


◇ ◇ ◇


~久郷家呪物ノ蔵~


ここに住む久郷くごう美香みかは前髪で目元を隠し黒い服を好んで着る妖しい空気を纏う女性だ。呪いを愛し呪いに愛されるが故に彼女自身は呪われることも無くさりとて普通の人生を送ることも出来ない難儀な女性であったがその才能を黒山くろやま竜也たつやと魔法使い新堂しんどう英一えいいちに見出されてからは黒龍の中でもかなりの実力者となり前任者からオカルト部門の代表者に指名されている。


「これはこれは馬場様よくいらっしゃいました。そちらのお嬢様もどうぞこちらへお掛けになってください」

「やめとけ、座ると死ぬ呪いの椅子だぞ」


危うく座りかけた妃はバッと椅子から離れそれを見た久郷は「チッ」と舌打ちした。


「それで今日は夜霧邸に関しての打ち合わせのハズですが何故・・・嗚呼、そういう事ですか。ならば多少の事は我慢しましょう」


久郷は勝手に納得してそしてあまり妃の方を見ずに話を進めた。


「決行は今夜です。事前に新堂様と月下高生徒会兼オカルト研究会のみんなにも呼びかけておりますので」

「こちらも工事の手配は済んでいる。作業人員はオカルト事件に対応出来るメンツを集めたから問題無いはずだ」

「あの、何のお話ですか?」


妃が遠慮がちに問いかけた。


「ついて来ればわかるさ」


~深夜~


黒龍の古賀と天川構成員のキリエから激しく殺気をぶつけられまたも妃は動揺してしまった。


「ヒヒヒお前等、天川の連中にも何かしたのか?」

「知りません・・・そもそも天川って何ですか?」

「だってさキリエちゃんコイツ等なにかやらかしたのか?」

「別に、タダ同じ忍として玄武衆は無能過ぎて腹立たしいだけです!!」

「ああ、そういう怒りかハハハッ」

「玄武衆の上忍とやらの実力ならば我ら天川の事務員にも及ばないだろう、実際お前達の動きはこちらに筒抜けだがお前達は我らの存在にすら気付けなかったのだからな」


そう吐き捨てるとキリエは古賀と共に夜霧邸に向かって行ってしまった。


「元気出せよ、忍者の才能が無ければきっと他に何か・・・あ~すまない今のは忘れてくれ、未来ある月下高校の諸君と違って夜尿症で自主退学したお前さんは何をどう考えてもお先真っ暗だ。安い同情は人を傷つけるだけなんだぜヒヒヒ♪」

「心が折れそうです」

「いっその事折ってしまえば新しい世界に目覚めるかも知れないぜケケケッ」


◇ ◇ ◇


~次の日の夕方街中の路地裏にて~


「まあ、次に会う連中は第二次四神の反乱以降に加入した奴らだからあんまりビクビクすんなって」

「あの後、屋敷から出てきた機械のゾンビ軍団を屋敷の残骸ごと消し飛ばしたヒトが怖すぎて・・・あのヒト確か龍泉高校(ウチ)の生徒会長の新堂君ですよね?新堂君も黒龍なんですか?」

「アイツはガキ様の友人で協力者だが黒龍じゃないよ、っと着いたぞ予定ではこの場所のハズだな」


そこは何も無い袋小路だった。だが一歩足を踏み入れた時景色が一変した。

背中を預け合う高校生位の男女二人、男子は白い西洋甲冑とロングソードを持ち女子は奇妙なコスプレ変形修道服みたいなものを着ていた。彼等が対するは無数の黒い影、悪意を持ったそれらは一斉に二人に襲いかかるかあるものは男子の刃に、あるものは女子の拳に倒されていく。


「あれ?あの二人って・・・」


全ての影が消滅した時男子の方が馬場達の存在に気づいた。


「うん?人避けの結界の中に入って来たって事は同業者か?」

「よお、お二人さん今日も仲いいね」

「アラ?馬場センセじゃないデスカ、この前の番組モ観ましたヨ」

「あなた達確か隣のクラスの・・・」

「おう、海野うみの竜久たつひさだ(こんなツインテールいたっけ?)」

「ワタシはマリア=ダイダロスですネ(こんなツインテール居たカシラ?)」

「俺達は新堂や黒山に何かと世話になってるからなちょっとしたお手伝いをしてるんだ」

「悪霊退治ですネ、この街ハ特殊ですからまた夜霧邸みたいなのが出来たら目も当てられマセン」


馬場が周囲を見回して積んである木箱に腰掛ける、他のメンバーもそれぞれ思い思いの場所に腰掛けた。周囲を見れば壁に斬撃の跡や何かがぶつかってコンクリートが崩れているところが何箇所かある。


「いや、助かるわ。ワケあり物件とか俺じゃどうしようも無ぇから少しでもオカルトに強い奴が出てくれると管理が一気に楽になるぜ」

「馬場先生は非戦闘員なんだからヤバイ場所には来て欲しくないんだけどな」

「えっ非戦闘員?」


妃がパッと馬場の方を向くが馬場は知らんぷりでノーコメントだ。


「ちょっと前から俺の助手をやってもらってるんだ。お前らとは同じ高校みたいだから仲良くしてもらおうと顔合わせだよ」

「ソウでしたか、よろしくお願いしますネ」

「そんじゃあ顔合わせも済んだしそろそろ行こうか“妃ちゃん”」


その名前を聞いた瞬間二人がピクっと反応した。


「ちょっと待った・・・。以前、根岸先輩に根も葉も無い悪い噂が立ちそうになった事がある」

「ソノ時は未然に防ぎマシタが、犯人は亀石黒衣ともう一人居た事が分かってイマス」


二人が異質な覇気を纏ってゆっくり立ち上がる。妃は馬場の方を向いたが口笛を吹きながら明後日の方角を見ている。


「今日、事実確認を行おうとしたが・・・」

「長期旅行デ自主退学というコトで取り逃してしまいマシタ」


出口に向かおうとする妃に瞬時に回り込んだマリアが退路を塞ぐ、竜久がゆっくりと剣を抜き近付いて来た。


「その生徒の名前は確か妃玻璃とか言ったか?」

「ワタシ達、根岸先輩とは仲良くしていただいたのデ犯人は許せないデスヨ・・・まさか向こうから来てくれるとは好都合デス」

「できれば避けないでくれたら早く済む」

「私は僧侶(モンク)なので刃は使いマセン、ですが私の身体全てがアナタに痛みを伝える武器と知りなさイ」

「そっちを頼むぜマリア、雷呪法:サンダー=フラワー!!」


竜久が剣を真横に振ると小さな光が妃の周囲に生まれては次々破裂して妃を足止めしてしまう、その隙にマリアは攻撃の体勢に入る。


「オーケーですよリュー君!秘技:チャクラム=ロンド!!」


マリアの蹴りから放たれたのは三発の光の輪、それらが不思議な軌道を描きながらも妃に殺到する。ダメージ覚悟で無理やり横っ飛び回避して光の破裂と光の輪の隙間から抜け出すも無様に地面を転げ回ってしまう、当然二人の追撃が終わる訳もなく好機と見た二人は大技の体勢に入る。


「俺のいかづちは海をも切り裂く、秘剣:麒麟・・・」

「神の怒りを受けナサイ、奥義:大神爆裂・・・」


だがそこに大きく腕を横に広げた馬場が割って入ってきた。


「ストーーーーーープ!!」


その瞬間二人の闘気はあっさりと消え失せた。


「オイオイオイオイ、こんな狭い所でそんな大技ダメダメよ~!!せっかく除霊したのに肝心の物件がオシャカになちゃうじゃ~ん」

「ソレは考えていなっかったですヨ」

「・・・・・」


馬場がやれやれといった感じで肩をすくめる。


「へへへっ、せっかく俺が仲良くなるかと思って連れて来たのに、お前達テンション上がりすぎだぜ?オジさん悲しいわ~」

(嘘つけ)

(ウソですね)

(絶対嘘だ)


竜久は妃を一瞥すると「フンッ」と鼻を鳴らした。


「コンナ厄介者をワザワザ連れてきたって事は・・・」

「妃、お前“まきえ”だな」

「???」


二人は路地裏から出て行ってしまった。


「何なんですか?」

「気にすんなって、キシシシ。それよりもどんどん次に行ってみよ~」


◇ ◇ ◇


~一週間後、馬場のアジト~


「今日はバケツプリン作ってみた・・・って何でグッタリしてんだ?」

「そりゃ、毎日毎日黒龍の団員に追い掛け回されたり、密売の現場に無理やり乗り込んで銃弾の雨の中駆けずり回ったり、怨霊の群れに囲まれたりで大変だったからですよ」

「プリンでも喰っとけ」


馬場はスプーンですくったプリンを妃の口の中に放り込んだ。


あま美味うま!!何これ?」

「丈おじさん特製プリンだ、疲れた時はコレが一番だぜ」


紅茶を差し出しながら相変わらずオーバーな身振り手振りで小粋で危険なトークを馬場がしていた。


「そろそろ俺達の付き合いもイイ感じだから愛称で呼ばないか?俺の事は気軽に(ジョー)おじさんとでも呼んでくれ」

「ん~~~、プリン美味しいからプリンさんじゃあダメですか?」

「なんだそりゃ?パッとしねぇ~なぁ~」


そんな時、馬場の携帯から着信が鳴った。曲名はよく知らないが巨大ヒーロー番組の最終回で聞いたことがあるクラシックだった。


「・・・わかった・・・ヨロシク」

「どうしたんですか?」


携帯を懐にしまいながら馬場はニンマリとこれ以上無いくらい怪しい笑顔を妃に向ける。妃は嫌な予感しかしないが諦めて流されることにした。


「喜べ相棒、お前の目的の物が見つかったかもしれないぞ」

「えっ」


それは長い夜の始まりだった。

次回は早く投稿できればいいな。

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