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怪物たちVS 作者:樫屋 一茶
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悪魔VS?

僕が・・・日高ひだか吾門あもんがその日公園で出会ったのは一人の悪魔でした。
夜の公園で少年と同じ高校の制服を着た少女を囲む悪漢達、気弱な少年は少女を助けようとして鞄を振り回しながら突撃し、小石に躓きつんのめる。少年が顔を上げると悪漢達がパタパタと倒れていくではないか、そうして少女は転んでいる少年に手を差し伸べた。

「弱いくせに立ち向かおうとするとは見上げた正義バカね。気に入ったわよ人間、私が貴方に取り憑いてアゲル」
「え?え?」
「私はオセ総統閣下の配下で名も無き悪魔デーモンの一人、世に善と安楽をく為現界した美しきチェシャ猫よ」
(頭がアレな人かな、早く帰ろ・・・)
「私はアレな人じゃないわよ!とにかく今後貴方は私と一緒に暮らすの!アンダスタ~ン?」

少女のあまりにも横暴な発言に吾門は抗議するが少女は何処吹く風。

「家には家族だって居ますし、知らない人となんて暮らせません」
「なによ~、日本には『袖すり合うも他生の縁』て言葉があるでしょ~?」
「それ仏教の言葉じゃなかったっけ?」
「それにほら」

少女から煙が噴出すとなんと少女は掌サイズの2頭身で豹の耳と蝙蝠の羽と無駄にセクシーな衣装に変化してしまった。

「これなら場所を取らないでしょ?」
「うわ~~~~~!!」

あまりの衝撃に吾門は逃げ出した。

「あん、もうせっかちさんね」

吾門が家まで逃げ帰ると母が出迎えてくれた。

「あら、おかえりなさい吾門」
「たっ・・・ただいま」
「そうそう、今日から新しく家で暮らす事になった留学生の子が来てるのよ」
「え!?そんなの初耳だよ母さん」
「あら?今朝言ったじゃな~い、あなたの部屋に居るから挨拶してきなさい」
「そんな勝手な!!」

吾門が急いで自室に戻るとさっきの自称悪魔がベッドに座って本を読んでいる。

「気弱そうな女の子みたいな見た目のクセに結構過激なオカズ持ってるわね」
「うわ~~~~!!」

本をひったくり超高速で元の場所に戻す吾門を可笑しそうに見ている自称悪魔。

「なな、何で・・・」
「知らなかったの?悪魔からは逃げられない」
「そうじゃなくて何で此処に?それに留学生って」

悪魔は得意げに鼻で笑って丁寧に質問に答える。

「先回りなんて悪魔の力を使えば楽勝よ、留学生はホラ、この髪だと日本人っぽくないじゃん?そういう設定の方が情緒があるでしょ?」
「でしょって言われても・・・」

黄色い斑の入った長い髪をふわりと揺らしながら緑の瞳で悪戯っぽくウィンクした悪魔に吾門はドキッとする。

「生活費は心配しないで、魔界で採れるピンクダイヤモンドを1g売ったら鞄いっぱいの札束をくれたから大丈夫よ。お金は大事」

そう言うと何処からか現れた大量の一万円札が部屋の中で悪魔を中心に渦を巻く、そうして悪魔がベッドを指差せば札束のベッドの出来上がりである。
悪魔は札束のベッドに倒れ込みパラパラとお札を撒き散らす。

「ん~~~、この欲望が染み付いた香りが堪らないわ。人間が人間として生きている証、やはり神は正しかった。堕天は地球にとって必要な・・・おっと、話が逸れたわね」
「結局貴女は何が目的なんですか?」
「出会った時に言ったでしょ?善と安楽こそが私の目的よ」
「善って悪魔なのに?」
「人間の感情を司るのが悪魔なのよ、その中には当然善意も含まれているわ。ん~善意や正義は人それぞれだから善行が必ずしも正しいとは限らない、独善って言葉もあるしね。私はそんな人間達の善意という欲望で人間が人間らしく在る世界が好きなの」

そう言った悪魔はまるで天使のように美しかった。いや、悪魔の殆どは元々天使だったのだ、悪魔と変じた現在でも彼女の美しさは損なわれてはいない。

「それで何で僕の家なんですか?何で母さん達は・・・」
「吾門の事が気に入ったからかな。家族には悪魔の魔法でちょいちょいっとね。まあ、ここに来るまで色々と経緯はあるんだけどね」

札束のベッドに転がったまま悪魔はこの家に来るまでの事を話す。

「そもそも私は地上に来る予定が無かったんだけど、一週間くらい前かな?急に悪そうな女に召喚されてさ」

彼女にとっては相当に悔しい話だが、女は悪魔を自分の野望の為に利用しようとしていたらしいが、そんなのは真っ平御免な悪魔は抵抗した。しかし悪魔を召喚した女は中々厄介な手合いで悪魔を受肉させてしまったのだ。

「受肉ですか?」
「そう、本来高次の霊的存在である悪魔や天使ってのは肉体を持つと人間達に干渉し易くなる代わりに能力を大きく制限されてしまうの、それでもなんとかあの女を出し抜いて逃げてきたんだけど、あの手の奴は放っておくと必ず人間社会の害悪になるわ」

そこでやっと本題に入る。

「だから私はあの女の企みを止める為この家を私の拠点として使う事に決めたの!感謝しなさい日高吾門、悪魔が何の代償も無しに使い魔になってアゲルんだから」

ガバッとベッドから起き上がるとベッドの札束を消してゲーム機を起動させる。

「『ナイト・ハンター デラックスパック』ね、今までのシリーズ全作とアレンジモードが追加された完全版だけどやっぱり“2”が最高よね」
「コマンドが難しいから1と2は苦手です・・・って悪魔がTVゲームやるんですか?」
「科学・数学は悪魔が人間に教えたのよ、当然その延長にあるコンピューターなんて人間よりももっと凄いの作れる訳よ・・・悪魔は怠惰だから作りたがらないんだけどね。ほら吾門!何ボケっとしてるの早く2Pを選びなさいよ」

そこへ勢い良くドアを開け妹の英理子が入ってきた。

「お兄やん留学生さんとちゃんと仲良くしとるん?」
「英理子、ノックぐらいしてよっていつも言ってるじゃん」
「別にいいじゃん、そ・れ・に、お兄やんが美人の留学生さんにイヤラシイ事していないか見張っていなきゃ」
「バッ何言ってんだよ!」
「吾門なら別にイヤラシイ事しても構わないわよ?私の身体を見て欲望を滾らせるのは人間として正常に機能している証、好感が持てるわ」
「あう、さ・・・さすが海外は進んでるわね。え~っとあれ?名前なんだっけ・・・そういえば何時から?」
(いけない!矛盾に気付き始めて暗示が解けそうになってる。やっぱり受肉の影響か悪魔の魔法が弱くなってるのね)
(え?え?どうすれば)
(吾門が私に名前を付けて、そうすれば言霊の力で魔法が安定するから)
(そんな事急に言われても・・・えっと悪魔・・・デビル・・・デーモン・・・)
「ディーちゃんだよ。今朝母さんが言ってたじゃないか」

その瞬間パズルのピースが綺麗にはまったかのように掛けられた魔法が安定した。

「え?ああそっか~。うん、そうだったね。ごめんねディーさん」
「ディー・ヘルテイトです。改めてよろしくね英理子ちゃん」

英理子が部屋から出て行った後、相変わらず二人で格ゲーの対戦を続けていた。

「それにしてもディーって名前は少々センスを疑うね・・・っとアスラウォークからのデモンファング」
「隠しキャラのトゥルー・デーモン使うなんて大人気ない!・・・しょうがないでしょ、咄嗟にそれしか思いつかなかったんだから。それよりも苗字のヘルテイトって何処から出たの?」
「私の上司・・・厳密には上司の親戚みたいな方が昔使ってたケニング・・・あだ名みたいなもの・・・よっと!この隠しキャラは強い分体力低いんだから問題無いでしょ!それにさっきからマミン王のピラミッドドライバー強過ぎじゃない?紙装甲だから投げ技だけで4割近く持ってかれるんだけど」
「これでも地区大会10位圏内ですから」
「微妙!!10位圏内の何位なのよ?」
「・・・10位」
「参加人数は?」
「15人ですよ!!」

ヤケクソ気味に出されたマミン王の超必殺技は後出しで出されたトゥルー・デーモンの超必殺技によって綺麗なカウンターの形で返されてしまった。

「吾門よわ~い、ネットは繋がってるわね。次はフレンドの“MANEKI WOLF”ってのと戦って・・・」
『お風呂沸いたわよー』

なんてお母さんの声が聞こえてきた。

「お風呂!?いいわねお風呂、リリム様が生み出した文化の極みね」

ディーは吾門の腕を掴むと物凄い力で風呂場まで引っ張った。

「あら?ディーちゃん、お風呂なら吾門と交代で・・・」
「おばさまごめん」

ディーの瞳が妖しく光るとお母さんは二人を止めようともせず見送った。

「あらあら、二人仲良く入るんですよ」
「ちょ!お母さん!?」

◇ ◇ ◇

「悪魔だ・・・」
「何を今更」

ちゃぽんと揺れる湯船の中で向かい合うまだ少年の域を出ない男の子と胸と尻が身長に合わない程成長している美少女、吾門はディーを直視出来ない、それでもチラチラと見ているのはやはり男の子といったところか。

「別に抱いても構わないわよ?いっそあの本みたいにシてみる?」
「だっ・・・」
「ふふふ、わかってるわ。もっと近しい関係になってからでしょ?でも折角お風呂に入ったんだから使い魔を洗うぐらいはしてくれるんでしょ?ご主人様(マスター)?」
「うぁ・・・」
「勿論その後は使い魔の役目としてご主人様(マスター)を綺麗にしてさしあげます。隅から隅までね」

◇ ◇ ◇

夜、とうとうベッドの中にまで悪魔は滑り込んできた。こんな状態では眠れないどころかきっと間違いを犯してしまう。そう思った吾門だったが疲れていたのかはたまた悪魔の魔法かディーの腕に抱かれながらすんなりと夢に沈んだ。

「ディー・ヘルテイトちゃんの自己紹介コーナー♪」

何だコレ?

「吾門にもっと私を知ってもらおうと思って用意しました~。先ずはドン」

目の前に現れたのは石槍を持った女性だ。

「彼女が私の原型ね。仮にプロト・ディーとしましょう(私も名前知らないし)。彼女は敵対集落との戦で、それなりに活躍をした為、石碑に名前が刻まれる事になりました。そして彼女は残りの人生をHeyHeyBomBom普通に過ごしましたとさ、おしまい」

え?それだけ?

「プロトに関してはこれだけだね。でもその数百年後、石碑を読んだ村の人々は敵対集落を何か凄い魔物と勘違いしてプロトを魔物を打ち破った英雄としてまつりました」

英雄?

「更に数千年後、彼女は守り神とされ本人とは似ても似つかないこんな綺麗な像が立てられました。ドン!」

原型留めてないね。

「笑っちゃうでしょ?当時の集落には冶金技術なんて無かったのに新たに編集された伝承では甲冑とシールドと立派な金属槍を装備してるんだから。ちなみに敵対集落は邪龍っていう扱いで槍の方は凄い魔法が掛かってる『ガエ・・・なんちゃら』らしいわよ」

これがディーちゃん?

「とんでもない、まだまだ赤の他人レベルね。その後、村は統合と分裂を繰り返し町になって都市になってまた村に戻って色んな文化が入り込んで色んな文化が廃れて彼女自身も他の神様と同一視されたり変なエピソードが追加されたり別々の神に分離したりで、やがて現れた某一神教によって零落した彼女が私なのよ」

じゃあやっぱり元は女神様なの?

「う~ん、厳密には私は最初から悪魔ね。原型は同じでも女神の私と悪魔の私は分離した時点で別神べつじんなんだから」

なんだかよくわからないです。

「悪魔なんてそんなものよ。そろそろ起きて、学校に行く時間だわ」

そして吾門は爽やかに目を覚ました。

◇ ◇ ◇

「ディーちゃんも学校に来るの?」
「邪魔だなんて言わないわよね?一応同じ高校に通ってるっていう設定なんだから」

玄関を出た瞬間、彼女はポンと煙を噴出し昨夜見た2頭身モードへと変身した。

「この姿なら邪魔にならないでしょ?私は気配りが出来る悪魔なワケよ」
「姿を完全に消したりは出来ないの?」
「出来る・・・と言いたいけど肉体ボディの問題で無理ね。使える魔法は極端に減って効果も本来より薄いから」

そこまで言って一つの疑問が浮かぶ。

(あの女は私の能力をこんなに下げて何をさせたかったのだろうか?人間に毛が生えた程度の能力じゃ悪魔を召喚する意味なんて・・・ああ、もう演算能力まで人間並みに落ち込んでる)
「それじゃあ行ってきます」
「ふん、遅い!遅いわ!私は先に行って図書室辺りで暇潰しでもしてるわよ?」

ディーはそのまま大き目の昆虫みたいに飛んでいってしまった。その様を見た吾門は新聞紙で叩かれませんようにと祈る事しか出来なかった。

◇ ◇ ◇

~図書室~

「大悪魔のクセに頭打って大穴空けるってバカだよね~。結果的に過労死してるし」

携帯で同業者(人外)と今読んだ本の内容で談笑する悪魔が一人。

「え?この街にそんな素敵なBARがあるの?今度連れてってよ」

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン

「おっとそろそろHRの時間かな?そんじゃ~またね~」

ガラケーを胸ポケットに仕舞い込んだ刹那、ディーは吾門の教室がある方向から不吉な気配を感じ取った。

「何だコレは!?こんなになるまで気付けなかったなんて本当にどうかしてる!!」

ディーが豹のごとき速度で教室に辿り着けば室内は赤い蜘蛛の糸で満たされていた。教師も生徒も吾門も赤い蜘蛛の糸に絡め取られて苦悶の表情で何事かをぶつぶつと呟いている。

「吾門!?催眠術の類か?粘質的で悪趣味で気持ち悪い術式ね!」

ディーが一度瞳を閉じ再度見開けば彼女の緑の瞳に赤い斑が浮かび上がる。その瞳で教室全体を睨みつけるとスルスルと赤い蜘蛛糸は解け千切れ泡となって消え去った。
教室が一瞬で元に戻り教師と生徒達がまるで何事も無かったかの様にHRに戻るが、教室の後方でドサリと何かが倒れる音がした。
吾門が目を向けるとディーが床に横たわっていた。苦しそうな彼女の表情を見た吾門は血の気が引き・・・。

「先生!彼女を保健室に連れて行きます!!」
「あ!?おい、日高君?」

呼び止めようとする教師の声を無視してディーに肩を貸しながら急いで教室を後にする吾門、教室の隅に残った最後の赤い蜘蛛糸が泡と消える様子に気付いた者は誰も居なかった。
ディーが眼を覚ますと夕闇迫る保健室のベッドだった。

「ディーちゃん!起きたんですね!」
「吾門・・・!それはこっちの台詞よ!無事だったの!?」
「なな、何がですか!?」

そこでディーは教室で何があったのかを吾門に聞かせる。

「えっ?催眠?いえでも・・・そう言えば・・・あの時・・・先生の連絡の最中に急に誰かが乱入してきて・・・それで・・・教室中が真っ赤に・・・気がついたらディーちゃんが倒れていて・・・」
「そう、どうやらこの学校に良くない奴が入り込んでるみたいね。それにしてもあの程度の催眠術を解くのにこれ程疲れるなんて・・・」
「ジュース買ってありますよ」
「それじゃあそっちの炭酸で」

甘くて刺激的な炭酸を一気に喉に通してディーはやっと落ち着きを取り戻した。先に消費した分の力が既に戻っているのは流石悪魔といったところか。

(魔力量そのものは受肉前と変わらないか、だけど一回の放出量が少なくて不便ね)

例えるならプール一杯の水を柄杓で撒いたり発電所の電力を単三乾電池で持ち出そうとするようなもので、いくら資源があってもこれでは疲れるし効率が悪い。
そんな事を考えながら炭酸を飲んでいるとまたしても不吉な術の発動を感じ取る。一度目は失敗したが今回は正確に反応出来た。ディーは実習棟の方向を睨む。

「・・・術者は無理か・・・でも、まだ間に合う!!ついて来て吾門」

2頭身モードで飛び立ったディーを吾門が追いかける。
実習棟の屋上のドアを開け放つと椅子を持った男子生徒が何事かを絶叫する。

「それじゃあ、殺さなくっちゃぁぁぁぁ」

椅子が振り下ろされようとした時、ディーは男子生徒に向かって暗黒の球を打ち込んだ。男子生徒はそのままピタリと止まりゆっくりと膝をついて倒れてしまった。

「ふぃ~、間に合ったわね」
「あわわ、ディーちゃん、この人倒れちゃったけど大丈夫なんですか?」

屋上にはさっき倒した男子生徒・既に倒れている女子生徒・二年生の男子と生徒会長が不審な目でこちらを見ている。

「何!?」
「妖・・・精?」

この日こそ月下高生徒会兼オカルト研究会のメンバーが初めて顔を合わせた日であった。
吾門はデビールで有名な悪魔アモンから、その妹英理子は悪魔エリゴール、某ロボットアニメではアビゴルの名前で有名な公爵位の悪魔です。
元名無しの悪魔ディー・ヘルテイトはオセが指揮する悪魔30個軍団の中の一兵卒です。魔界ではオセの魔法の劣化版が使えたのですが現在では大半が失われ、残った魔法も以前よりも弱体化して所有物の魔法の槍(稲妻に由来する武器?)も使用出来なくなってしまいました。マイナー地方神の零落した姿。
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