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怪物たちVS 作者:樫屋 一茶
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先生VS怪奇機械 前編

進みが遅いですがお楽しみいただけたら幸いです。
一日の授業を終え職員室に戻る俺こと小学校教師古賀真一、すれ違う生徒は皆笑顔でさよならの挨拶をしてくれる。職員室に入ると片桐先生が輝くような笑顔で声を掛けてきた。

「古賀先生、今日もお疲れ様です。チョコ食べます?」
「おっ、有難く頂きますよ。頭を使うとどうしても甘いものが欲しくなりますからね」

片桐先生の笑顔とチョコに癒されると俺は素直に「教師になって良かった」と思える。

(片桐先生今日も綺麗だなー、胸も結構なお点前で)

「古賀先生は生徒にも親御さんにも信頼されてて羨ましいわ、私だとそんなに上手くできませんから」
「ゆっくりでいいんですよ、ゆっくりで」

俺は同僚数人との打ち合わせが終わると帰り支度を始めた。

「もうお帰りになられるんですか?」
「ええ、ちょっと今日は私用がありまして・・・先に失礼いたします」

片桐先生とのお話はとても楽しいが今日は“もう一つの仕事”をこなさなければならなかった。
車を走らせアパートに着いた俺はスーツを脱ぎ派手なガラの上着に着替え髪もツンツンに立てて準備万端、片桐先生は彼を真面目な人間だと思っているだろうが

(すまないな、片桐先生。俺は所詮裏で生きるならず者だ)

自嘲的な笑みを浮かべ急いで車を発進させる。
今日の仕事はウチの組織「黒龍」から金を借りていた男がトンズラしたから行方を調査しろと、早い話が借金の取立てだ。ウチの組織は一応この街の自警団ってポジションだから他所より利息はかなり低めになってたハズだけどやらかしちゃう奴ってのは居るもんだ。
俺はまず逃げた奴の元カノってのに情報を貰もらった。よっぽど男に恨みがあったのか色々喋ってくれたが長居は無用なので外部協力組織の情報屋との待ち合わせ場所に向かう、山道をのんびり走らせていると車の屋根にドンと何かが落ちたような音がした。

「来たか、毎度毎度人の車の屋根に勝手に乗っかりやがって」

車を止め助手席の鍵を開けるとソイツは車内に入ってきた。
いつ見ても異様な女だ。真っ赤なパーカー着ていて目元はよく見えないがゆったりした服にも関わらず出るとこ出てる中々いい身体してるがどうも俺は好きになれない、こいつの物言いはとことん気に食わない。

「また貴様と仕事か?古賀」

ほらこれだ。本当に可愛げのない女だぜ。

「そりゃこっちのセリフだ。またテメェと仕事かよ、上は何考えてんだ?ってか毎回車の上に降りてくんじゃねぇよ」

この女はキリエという、ウチと協力関係にある諜報機関「天川」ってところの下忍で何故かよく俺と組まされる。こっちは街の自警団だがあっちは近年急成長した国内規模の情報屋らしい、コイツらのボスもこの街の出身らしいが詳しくは知らん。まあ忍者程度でビビってたんじゃこの街の裏側で商売なんか出来やしないって事だ。

「そんで?テメェがこっちに来たって事は、目的地は一緒かいな」
「件の男が逃げ込んだのは間違いなくこの先の・・・」

キリエが言いかけたところで俺達は道脇のちょっとした広場に重機数台と何人かが集まっているのが見えた。俺は車を広場に止め集まってる連中に声を掛けた。

「何だ何だ?どこの誰かと思ったら建築家先生にオカルト姉さんか?」
「よぉ、真ちゃん。お前さんはまたキリエちゃんと組んでるのかい?へへっ、こりゃまた派手なパーティーの予感だぜ」

最初に話しかけてきたのはド派手な紫のスーツを着たニタニタ笑いの男、名を馬場丈さんという。表の社会では有名建築デザイナーとしてメディアにも顔を出す人物だが裏では俺と同じ黒龍に所属している物件調査の専門家だ。

「あれ?あなた達も来たって事は“あの館”に別件で用事があるって事かしら」

こっちの前髪を目元まで垂らした黒いワンピースの女も同じく黒龍所属オカルト部門担当の久郷美香さん、妖しい空気がビンビンするヤバイ女だ。

「ああ、“あの館”に・・・って今日はタヌキ女は居ないのか?怪奇事件はアイツがリーダーだろ?」
「あの方は旅立たれました。少なくとも数年は戻ってこないでしょう、ですので今は私がオカルト関連の総指揮を執っています」
「ヒヒッ中々愉快なネェちゃんだったが齢千歳超えの化生でも中身は純な乙女だったって事だな」
「ふーん、あのタヌキ女がね」

ふと、俺は馬場さんの後ろに控える女を見た。その瞬間俺とキリエはその女に強い殺気を叩きつけてやったが、馬場さんに割り込まれてしまった。

「馬場さん、その女は玄武の手下・・・」
「おおっと、へっへっへっ俺の助手に難癖つけるのやめてくれよ、今は俺が面倒見てんだからさ」

その一言で俺は殺気を抑えた。キリエはまだ殺気を放っていたが俺が「やめとけ」と声を掛けると渋々引っ込んだ。久郷さんの方を見ると肩を竦めて首を振っている、気にするなって事だろう。俺みたいな下っ端よりも格上の二人の判断に任せるとしよう。

「よくみりゃオカルト姉さんも面白いの連れてるじゃん」

見れば周囲に数人近所の高校の制服着た男女が居る。

「月下高生徒会兼オカルト研究会のみんなよ、将来有望だから仲良くしてあげてね」
「へいへいっと、そうだそうだ。そろそろ本題に入ろうか」
「あれが例の館か?」

キリエが指差す方へ揃って目を向けた。

「そうよ、あれこそが夜霧邸。ウィンチェスター夫人邸なんかとは比べ物にならないくらい激ヤバな幽霊屋敷よ」
「へへへ、ヤバイのなんのってこの俺様が建築物の構造を調べきれなかった位だからな。外からの感触だけでもなんか中身が蠢いてるっていうか部屋が軟体動物みたいに移動してる様な鳥肌立つ嫌な感じだ」
「私達の任務はアレを解体&土地の浄化ね」
「ヒヒッ一応土地は事前に黒山のガキが買い取ってるから後は好きにしてイイんだとさヒヒヒ」
「黒様と巫女様の御好意で若手の社会見学も兼ねてひと暴れしようかというところです」

俺は頭を抱えた。唯の借金の取立てのつもりが結局はオカルト絡みの大事件かよ。

「でだ、俺達はあの館に逃げ込んだらしいアホ男を捕まえに来たんだけど行っていいかな?」
「えっ中に入るの?あと一時間で解体作業に入っちゃうけど」
「夜中にやるのかよ?まあ、俺たちに常識なんて有って無いようなもんだけどさ」
「フヒヒ、非常識な連中だぜ全く」

そんなやりとりしてるとキリエが一言。

「お前らってやっぱ非常識な組織だよな」
「「「忍者が言うな!!」」」
「それはそうと中に入るならこれを持っていくといいわ」

久郷さんが渡してくれたのは紐のついたお守りだった。

「魔法使い特製のアミュレットね」

俺は有難く受け取り首からぶら下げた。キリエはその様子を怪訝な顔で見ていたが彼女も受け取りささっと懐にしまった。

「そんじゃさっさと行きますか」

改めて気合を入れて車を走らせ館に到着、正門の前まで来ると荒れ果てて不気味な洋館がどす黒いオーラ全開で出迎えてくれた。

「一応空家なんだよな?」
「天川の調べでは40年近く前に強盗が入って一家惨殺、家主と娘とそれから押し入った強盗は行方不明でそれ以降荒れ放題と」
「うわ~完全にヤバイやつだこれ」

壊れかけの正面玄関を蹴りで強引に開けてエントランスへ、明かりを用意して軽く見回すとどこもかしこもボロボロで床にはブルーシートやカップ麺の容器が落ちていたりと典型的な廃墟って感じだ。

「空気が粘っこい嫌な感じ・・・」
「中身が蠢いてるだの軟体動物みたいだのってのは言い得て妙だな、こんな感じの探索ゲーム前にやったぜ」

館内を調べようと一歩踏み出そうとした時、コツコツと階段の方から足音が聞こえてきた。俺達が足音の方を向くと暗がりから“ソイツ”が姿を現した。
異質な姿だった。体中に多数の歯車が埋め込まれそれらが規則的に稼働しているまさに機械の身体を持った男がそこにいた。
俺はあまりの異様さに目の前の男が探していた人物だとは暫く気がつかなかった。
男の口?からノイズ混じりの声が聞こえた。

「ザッザザ・・・おおっ部品じゃ・・・部品が来おった。ザザザ・・・バラして組み上げようかのう」

ブツンと声が止まる、20代と聞いていたがまるで老人のような声だった。だがそんな事よりも目の前の機械男から嫌な気配がどんどん膨らんできた。朽ちた館の暗がりの向こうから何かがやってくる妙な感覚、やがて訪れたのは妖しい力で浮かび上がる無数の歯車・バネ・ネジ・時計の長針・短針・秒針だった。
キリエが男を捕らえようと一歩前に踏み出そうとしたが、俺は嫌な予感がして彼女を押しのけた。その瞬間俺の体に部品の群れが飛んできた。
歯車の一つが俺の首からぶら下げていたお守りの紐を切りお守りが俺の体から離れたその瞬間、俺は妖気と部品に飲み込まれ意識を失ってしまった。

???

俺は、いつも通り子供たちを相手に授業をしている。皆一様に歯車で出来ているカワイイコドモタチだ?ふと教室の真ん中にスクリューを回転させたような穴が現れ徐々に金属で出来た椅子・机・コドモタチを巻き込みミキサーみたいに飲み込んでいったが俺は気にせず授業を続ける。しばらくすると天井から鎖で腕を縛られた誰かがゆっくりと降りてきた。その人はいつも俺に微笑んでくれている・・・。

「片桐先生!!」

片桐先生がミキサーに飲み込まれる寸前に俺は彼女に飛びつき

「この、ボケ!いつまで寝ぼけてやがる!!」

ゴスッと盛大に頭を殴られた。
次回は後半キリエ視点からのスタートです。
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