シュランブルード 妹
二階の客間では少女が目を開いていた。
毎日心配で、早く早くと待ち望んた目覚め。
彼女の目をのぞき込む。
曇りの無い瞳。
やっと見る事が出来た。
不安そうな表情を浮かべている。
少女は自分を指さし、
「林田理乃、理乃」
と言った。
俺は頷き「リノ」と繰り返す。
俺も自分を指差し、
「シュランブルード・オブライェン」
と名前を伝えたが、
「シュリャンビュルード」
俺の名は発音しにくいようで困った顔をして言い直している。
もう一回
「シュランブルード」
「シュリョンブルード」
うーん、どうするべきか・・・と考えていると、リノが、
「シュー」
と俺を指差した。
俺は、安心させるためににっこりしながら頷くとリノはほっとしたような笑顔を浮かべる。
その笑顔にどきりとする。
それを悟られないように、エミリアと場所を交代する。
リノが再び眠った後、エミリアにこのままリノの世話を頼む。
エミリアもずっと見守っていた少女が、目覚めた事が嬉しいらしく快く引き受けてくれた。
しかし、言葉が通じないのでしばらくはこの屋敷でリラックス出来るように、そして体力回復を目標にする事にした。
次の朝は、リノに庭に咲いていた花を土産に持参した。
「******」
嬉しそうな笑顔とお礼の言葉に心が和む。
こんなに小さくて、言葉も通じず心細い筈なのに涙も見せない。
リノはここが異世界だとは知らない筈だし、体の調子もまだまだだ。
稀有な渡り人という以前に、この屋敷の皆と共に守ってやらねばなるまい。
次の日はエミリアに絵本を預けた。
リノが暇そうにしているとの相談に、ウィンドゥワークスと相談して挿絵が綺麗で文字の少ない絵本を取り寄せたのだ。
また、エミリアが刺繍を教えたいと申し出て来たので、体に障らない範囲で許可を出す。
毎朝のお土産に喜ぶ顔を見たくて、次の土産を考えるのも楽しみだ。
妹がいればこんな感じだろうか?
俺には二人の弟がいるが、二人共に既に独立している。
やはり弟と妹では全然違うのだろうな。




