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お出かけ

ぽかぽか陽気のある日、気分転換に中庭で文字の勉強を一人でしていると、シューが探しに来た。


「リノ、今から出掛けないかな?」


「行きたい!」


「じゃあ、エミリアには指示しているから部屋で準備してもらって」


私はわくわくしながら部屋に戻る。

エミリアはにこにこしながら、外出着と帽子を用意してくれていた。


準備が出来てシューと玄関まで行く。


玄関にはウィンドゥワークスがいた。


「馬車の用意が出来ております」


玄関の外は初めて出る。


外には二頭立ての馬車が止まっていて、大人しそうな茶色の馬が二頭。

馬の横には十代後半位の、くすんだ青色の髪をした男の人がいた。


「シュランブルード様、リノ様、孫のマシューです」

「よろしく頼む」

「お願いします」


マシューは綺麗なお辞儀で挨拶する。


「御者を勤めさせて頂きますマシューです」


流石ウィンの孫、お辞儀が瓜二つだ。


ウィンドゥワークスが頷くとマシューは御者台に乗り込み、シューと私、いつの間にか来ていたエミリアが馬車に乗り込んだ。





目の前にはのどかな景色が広がっている。

緑の林が所々にありなだらかな丘陵地帯。

ぽつぽつと民家があり、丘の所では羊の群れや牛の群れが草を食べたり座り込んだりしていた。


動物も元の世界と余り変わらないみたいだ。


「シュー、何処に行くの?」


「リノの服を買いに行こうと思って。後は馬車にも慣れて欲しいからね。もうしばらくすると王宮に招待されるからね」


買い物かぁ。

やっぱり女の子だからショッピングは嬉しいな。

エミリアも一緒だし、色々アドバイスしてくれるだろう。


それにしても、馬車の乗り心地は余り良くない。

舗装されたアスファルトに慣れた身体には厳しい。

酔わないようになるべく外の景色を見る。


三十分位すると、景色が変わってきた。

都会みたいな感じかな。今までぽつぽつしかなかった家が道の両側に立ち並んでいる。

道行く人もお洒落だ。


やがて馬車は一軒のお洒落なお店の前に止まる。

馬車を降りるとき、シューが、手を取ってくれた。

なんだかまだ体が揺れているみたい。

シューの顔が心配そうに変わる。

私は大丈夫だよと、シューの手を握ったまま微笑んだ。


お店の中に入ると、沢山の洋服やバッグ帽子が並んでいた。

きょろきょろしていると、女の人が店の奥から出てくる。


「あら、シュランブルード様。わざわざお越し頂かなくてもおっしゃって頂きましたらお屋敷まで伺いましたのに」


「いや、今日は他にも用があったのでね。

紹介するよ。この子はリノ。

今日はこの子の服をエミリアと相談して見繕って欲しい」


女主人の顔が顔が楽しそうに輝く。

「あらー、可愛らしい!腕がなりますわ!」


私はちょっと嫌な予感がしてエミリアにくっつく。

だがエミリアも今に限っては味方では無さそうだ。


「リノは体が余り丈夫でないので無理の無いよう、休憩しながら選んであげてくれ」


流石シューは頼りになるよ。


二人は私とシューを店の奥の椅子に座らせると、まずは打ち合わせを始めた。

その間に店員が飲み物を持ってきてくれる。

シューと喉を潤しながらぼんやりと待つ。


打ち合わせが終わったのか、エミリアが私を呼びに来て更衣室に案内された。

女主人が次々と洋服を持ってくるのを、ひたすら試着する。


ショッピングって楽しいものじゃ無かったっけ。

自分でのんびり選んだり迷ったりする時間が楽しいのだというのが良くわかった一日だった。


疲れてしまったところで、シューの所へ返される。

よろよろと歩いてきた私を見てシューが慌てて抱き上げ、なんと店の中なのに自分の膝にのせてから椅子に座る。


なに!?

これは恥ずかしい。自分で座れると主張したけど離してくれない。


シューは店員に飲み物のお代わりを頼むと、エミリアを呼んだ。


「エミリア、リノの体調を考えて行動して欲しい」


「申し訳御座いません。しかし、今日一回で終わらせたほうがリノ様の為だと思いまして」


「確かにそうだが、リノはまだ体調が戻っていない。最初に注意したはずだ」


シューは私が初めて聞く厳しい口調でエミリアを叱った。

私は慌ててシューの顔をのぞき込み、


「そんなにエミリアを叱らないで。私少し疲れただけだから。ね。」


シューは困ったような顔をすると、エミリアに戻るよう指示する。


エミリアは私の顔を見ながら、


「お疲れでしたら先に屋敷にお戻り下さいね」


そう言うと女主人の所へ戻って行った。


「シュー、私飲み物飲みたいからおろして」


「駄目だ。ふらふらしている」


シューはなんと、グラスをとり私の口まで持ってくる。私は真っ赤になり、慌ててグラスを自分で持つと、なんとか飲まされるのを阻止した。


シューは甘やかし過ぎだ。いや、心配しすぎ?

それとも、子供扱い?

とにかく恥ずかしいので、時間潰しにちびちびジュースを飲む。


エミリアが戻ってきたが、


「シュランブルード様、もうしばらく時間が掛かりそうですので、リノ様と先にお戻り下さいませ」


「わかった。では後は頼む。迎えの馬車はまわしておく」





帰りの馬車では結局乗り物酔いしてしまい、シューの膝枕で屋敷まで帰ってきた。

当然、シューの抱っこで屋敷の中へ運ばれる。


「部屋で寝ているといい」


「ダメ、寝るより座っている方が楽」


すると居間に連れていかれ、またまた、シューの膝の上に。

横座りで、頭をシューにもたれ掛かる姿勢にされる。


「エミリア叱らないでね。酔ったのは馬車慣れて無かったから・・・」


「わかった、約束するから楽にして」


私は頷くとシューの胸の鼓動を聞きながら、いつの間にか眠ってしまった。


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