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準備

服を購入して、馬車に乗り物酔いをした次の日。

理乃は午後から中庭を散歩していた。


シューの屋敷はさすが領主の屋敷らしく、建物も大きいが敷地も広く庭も前庭、中庭、裏庭とあった。

寝込んでいた期間が長かった為体力を戻そうと毎日なるべく散歩をしていた。

また、理乃は花が好きで初夏の花が咲き誇った庭を歩くだけでも楽しかった。


芝生を見つけたので足を伸ばして座る。

爽やかなそよ風に乗ってくる花の香りに無意識に笑みを浮かべながら持ってきた本を広げる。

シューに頼んで花の図鑑を借りたのだ。図鑑なら字が読めなくても楽しめると思って。




中庭からはシューの居る執務室が良く見える。

もちろん、部屋の中で仕事をしているシューは見えないが近くに居るだけで安心する気がする。

理乃が庭にいる間は、エミリアは部屋の掃除等をしてくれるので基本一人だ。

のんびり図鑑をめくりながら楽しんでいると、エミリアが呼びに来た。


「リノ様、シュランブルード様がお呼びです。執務室までおいでください」


「わかった。何の用かな?」


首をかしげながらエミリアと共に執務室に向かう。

初めて入る執務室の様子に、ついきょろきょろする理乃をシューが迎える。


「リノ、神殿から手紙が来たよ。一ヶ月後に王宮と神殿に招かれた。 それで、リノは昨日馬車に酔っていたよね。実は王都まで、馬車で三日かかるんだ」


「三日も!」


青くなった理乃の顔を見ながらシューは提案する。


「それで、馬車に慣れる為に毎日少しづつ馬車で出掛けようか。明日から始めようと思っているから」


「わかった・・・頑張るね」


「いや、ゆっくりで良いよ。神殿側もリノの体調の事は分かっているから王都への召喚は一ヶ月後なんだし」


とりあえず、毎日少しづつ馬車に乗る時間を増やしていく予定をたてた。




次の日から、馬車に乗っての練習が始まった。

御者はもちろんマシューで、必ずシューかエミリアがのどちらかが同行してくれた。

体調を見ながら、近場を一周から毎日距離を伸ばしていき段々馬車の揺れにも慣れていった。



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