運命の人 第2話
何も変わりなく日が過ぎ……えーっ?
そして私の頭の隅っこに
腕に入れ墨をした男性が
外車を買いに来るのをイメージして押し込んだ。
(記憶しておかないと……)
営業所の所長は
私の動きに何かを感じたらしく嫌みともとれるような話を
昼休みにした。
「鈴木さんは疲れてるのかね?営業の方は辞めて事務だけにするか?」
「いえ……疲れてませんよ。所長さん、私は今は女性に毎月つきものの生理的な現象ですよ。営業は楽しいです。やりがいがありますし…続行したいです」
所長は若い割りには髪の毛が薄くて風が吹くと毛が立っていた。
私は笑いをこらえながら話をしていた。
「そうかあ、生理的な現象はやむを得ないな。悪かったね。少し休みながら営業を頑張って下さいね」
「はい、ありがとうございます。お茶は要りませんか?」
「うん、コーヒーを飲むから要らない」
所長はコーヒーなんか似合わないように感じた。
なんか毎日、顔を合わせて行く内に薄毛も慣れてきた。
ただ換気扇やエアコンの風で
髪の毛が
『フワアー』
と、なると
お腹を抱えて笑いたくなる。
私だけ?
ゴールデンウィークには休みがとれない。
五月になり爽やかで暖かな良い季節になってきた。
私の頭の中に押し込んだ腕に入れ墨をした人……が……えーっ……。
占いを信じて疑わずに生きていた私は
今、営業所に飾られている外車を見ている男性のトレーナーから見える黒い模様に
もしかして……?
ああ……そうだ。
絶対にこの人だわ。
私は占いを信じているから勝手に信じた。
その人は想像外の年輩の人。
40過ぎているかな?
私は愛には年齢は関係ないと
その人に丁寧な話し方をして笑顔をふりまいた。
「あの……お探しのお車は有りましたでしょうか?なんなら、試乗してみませんか?助手席には私が同乗致します」
その人はよーく見たら、金のブレスと金のネックの幅の太いのをしていた。
リッチマンだわ。
バッグは
ブランドの小さなセカンドを持っていた。
「君は感じが良いな。俺を怖くはないか?」
と、言いながら笑っていた。
「怖くはないですよ。素敵な方ですし、リッチマン……いや、失礼しました。じゃ、責任者にkeyを借りてきます」
男性はうなずいた。
この人が『運命の人 』
なんだわ。
間違いないわ。
私は所長にその外車のkeyを借りに所長のデスクに行った。
「うん?アイツか。冷やかしだぞ、前も来たが中々、イエスを言わないからね。試乗は良いが、前に、一時間も走られたからな。鈴木さんが同乗して、その辺りを一周で帰ってきてくれ。はい、keyだ。あれは2000万円の外車だから気をつけてくれ」
私はルンルンでkeyを預かり
「はい、お待たせしました。keyです。よろしくお願いいたします。できたらお買い求め頂くと、私には幸運なんですが」
男性はkeyをとり
「鈴木さんか、ネームプレートだよ。あんたは面白いなあ。営業は売れば幸運だよ。じゃあ、行くか!」
「はーい、了解しました」
外車はスポーツタイプの凄いやつ。
半年間も展示していて売れずに
明日本社に返す予定の車だった。
私は
『運命の人』
との、ドライブのような
気分で助手席に乗った。
凄いわあ!
私はただただ興奮しながら運命の人の脇に座っていた。