04:幕間
あっ、エル。あの変わった塔は何ですか?
伝令塔。転送陣の応用で音声や文字をやりとりする施設があって、あれはその中継点。
へぇ。今はそんな物があるんですね。
あっ、ではあれは?!
ただの物置小屋だよ。ったく少しは落ち着け。
……そういえば、あんたはどうやって物を見ているんだ? 石の癖に。
石って言わないでください! これは世を忍ぶ仮の姿なんです!!
はいはい。
本当に分かってるんですか? もう!
ともかく、視覚についてでしたね。
今の僕はこの"容れ物"に精神を封じられた存在。
ですが、貴女から力を貰えば封印を解いてここから出られるんですよ。
おかげで石から離れて物を見ることができます。音や臭いもちゃんと分かりますよ。
ん? 私が力を分けているのか? 別に何もしていないんだが。
無意識に漏れている力なので気が付かないのでしょうね。
ですが本当に助かっています。感謝感激です!
そうなのか……まあ助けになっていて何よりだ。
扉なんかもすり抜けられるのか?
うーん、試したことは無いですが、できるんじゃないでしょうか。
そりゃ便利だ。
ただ、すり抜けられると言ってもほんの少しの距離ですよ?
所詮は精神体、大した力はありません。
封印だって一時的に破っているだけで、貴女から離れた途端に囚われの身へ逆戻りですし。
もしかしてそれで昨晩ずっと黙ってたのか。
はい。いきなり真っ暗になって驚きましたよ。そのうち思考も途切れていって……。
つまり、私の近くにいないと静かになる訳だな?
ちょっと違いますけど、そんなところです。
……なんだか「いいこと聞いた」みたいな顔してませんかエル?
そ、そんなことはないぞ。
と・に・か・く! あんまり僕をその辺に放置しないでくださいね。
せめて昼間はちゃんと持ち歩いてくださいよ!
あーはいはい。わかったわかった。
本当にわかってます?
わかってるって。
あんまりうるさいとその辺に置いてくぞ。
!?
……。
…………。
……………………。
………………………………。
すまん、冗談だ。
調子が狂うから普通に喋ってくれないか……?
ぷはっ。どうか後生ですから置いていくのだけは勘弁してください!




