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しろがねの翼  作者: 夢屋満月堂
chapter4「猫と輝石と海の街」
22/36

21:子猫の憂鬱

 きらめく太陽と海風の運ぶ潮の香り、そして脳天気な海猫の声に包まれたヴァッサノーツは今日も今日とて快晴である。

 だがそんなご機嫌な天候に反して、心に大雨を降らせて歩く人影がひとつあった。

 赤毛にはしばみの目をしたやせっぽっちの幼い子ども。

 先ほど教団の門番に水晶を奪われてしまった、泥棒の少女ティオである。


 彼女は街の片隅で立ち止まり、つま先をじっと見つめて考える。「ああ、失敗してしまった」と。

 反省と後悔がぐるぐると巡る。せめて中には入りたいと思っていたのに完全に失敗した。一連の顛末を思い出した少女は、胸が空っぽになりそうなくらい長いため息をついた。

 輝石の欠片を貰えるのは金持ち連中だけ。教団は貧乏人に冷たいからそれは予想できた。しかしどうにか門をくぐれたならば、石を盗み出してやろうと思っていたのだ。たとえそれが無理だったとしても、内部を探ったり侵入の足がかりを作ったりとやりたいことはいくらでもある。


(でもなぁ。門前払いだったなぁ。入り込んでどうするとか以前の話だよね)


 少女は俯いたまま、はぁ、と溜め息をつく。浮かれ過ぎて先走った。あの水晶と情にほだされて、ちょっとくらい中を見せてくれるかと思ったのに。

 貧乏に見えるのがまず問題なのだろう。あの水晶を売り、見た目をどうにかすることが先決だっただろうか。

 良い家の子どもに見えれば、あそこまで無碍にされないだろう。大人の協力者がいたらもっと良い。沢山の工夫をしなければならないだろうが、次の方針はそんな感じで行こう。ひとまずの結論を出すとティオは顔を上げた。

 落ち込んでいる時間は無い。彼女の弟は既に病魔に冒されているのだ。


(よーし、さっさと稼がなきゃ。それでキセキのカケラを手に入れて、ジャスを治すの。ぼんやりしてるヒマなんてないんだから!)


 両手でぱちんと頬を叩くと、彼女はしっかりと立ち上がる。

 はしばみの瞳には強い輝きが戻ってきていた。



* * *



 だが、悪いことは重なるらしい。


「待ちやがれクソガキ!」

「くそ、路地に入りやがった」

「お前はあっちから行け。今日という今日は逃がさねえぞ……!」


(待てって言われて待つわけないでしょ!)


 ティオは小さな脚で懸命に走っていた。

 頭の中の地図を広げる。抜け穴、障害物、目立たない隙間……見つからないよう、狩られないよう、調べて集めて記憶していった彼女だけの地図。

 街の地形を味方に付けなければ、ティオのような子どもなどすぐ踏みつぶされてしまう。

 ここはそんなところなのだ。


(右に行ったら突き当たりをくぐって、壁を登って……)


 小路を曲がり、壊れた壁穴に潜り込む。更に道の先にある壁から飛び降りて、これでどうにか撒ける。

 そう思った瞬間、身体に強い衝撃が走った。


 一瞬、何が起きたかわからなかった。

 視界が真っ赤に染まる。


「か、は……っ」

「お。命中命中っと」


 壁に叩きつけられた彼女のすぐ脇で、砂利を踏む音がした。

 ティオの上に暗い影が伸びていく。

 背には石壁。前には追っ手。痛みと共に、染み入るように状況が飲み込めてきた。


(先回り、されてた……?)


 身体中が激痛に軋む。口の中は金臭い味でいっぱいだ。

 だがそれよりも頭の中を満たすのは、血が凍りつくような恐怖だった。


 ――とうとう、捕まってしまった。


 かちかち、かちかち、とうるさい音がする。何かと思えば、ティオ自身が小刻みに震えるせいで噛み合っていない歯の音だった。

 見上げた視線の先には、逆光に照らされた男がいる。

 顔には見覚えがあった。しばらく前に財布を失敬したごろつきのひとりだ。


「お前はこの経路をよく使うんだってなぁ? クソガキよぉ」


 男は嫌らしく唇を歪めた。この笑い方は知っている。

 こういう笑いに捕まって、戻って来れなかった子を沢山知っている。


「お、ようやく捕まえたっすか」

「くっそ手間かけさせやがって。だがまあ情報屋の言葉は正しかった訳だ」


 後ろから、別のごろつきが次々と顔を出す。

 どの目にも嘲りと愉悦が浮かんでいた。


「さあて観念しろ。テメエはちょいとここらを荒らしすぎたな」

「あ、ああ……!」


 髪の毛を遠慮なしに掴まれ、男の目の前にぶら下げられる。ぶちぶちと毛が抜け、頭皮の引っ張られる痛みに涙が滲んだ。

 ああ、ここで終わりか。千切れる思考の下で彼女は思った。

 脳裏に浮かぶのは大切な家族の顔。こんな街で生きているのに、いつだって優しくて暖かい、奇跡みたいな笑顔だった。


(ジャス……!)


「さぁてどう料理してくれようか」

「やっぱ肉屋っすかねー。ガリだけど顔は意外といい感じじゃないすか」

「こんなんで客取れるようになんのかよ? ババア共はどいつもこいつも出し渋りそうだ。まぁ、擦られた財布分にはなるか……。よっと!」

「ぅぐぅっ」


 荒っぽく地面に放り出され、ティオは受け身も取れずに転がった。

 蛙の潰れたような呻きが唇から漏れる。


「よし、どうせ買い叩かれるんならちょいと意趣返しさせて貰おうか。生きてりゃ一応売れんだろ。……この手癖にゃ苦労させられたなあ本当に」


 地に倒れた彼女のちいさな手。そこに大きな足が乗せられる。遠慮も躊躇もなにもない、相手は弱い者をいたぶることに喜びを覚える人間だ。

 腹の底に絶望が冷え固まる。背筋を這い上がる寒気がした。


「悪いガキにはお仕置きが必要だよなァ?」

「あ、あああ、あああああッッ!」


 耳に生々しく、肉と血管の弾け飛ぶ音が聞こえた気がした。だがソレは止まらない。止まる筈がない。これはまだ始まりにすぎないのだから。

 痛覚が沸騰する。喉が裂けるほど泣き叫ぶ。けれど止まらない。止まらない。


(痛い痛いイタイイタイイタイ――!!)


 少しずつ骨を砕くように、ゆっくりと、じわじわと、男の体重が掛けられて――


「全く、胸糞が悪い」


 凛とした声が耳を打つ。

 一陣の風が吹き抜け、手の上の圧力が消え失せた。





 目線を上げると、どこかで見た覚えのある女のひとがいた。



* * *



「乱暴なのは感心しないな」


 淀んだ空気を払うように、玲瓏な声が響いた。

 一体どこからやってきたのだろう。倒れ伏すティオの横にいるのは黒髪の女性だった。腰に剣を携え、背筋を綺麗に伸ばして立っている。

 さっきティオの手を踏みつけていた男は、呻き声をあげながら路地の奥に倒れていた。果たして何がどうなってそうなったのか。

 まさかこのひとが、大の男をあんな場所まで蹴り飛ばした?


「だっ、だだ、大丈夫っすか兄貴ィ!?」

「う、うぐぐ……痛ぇ、痛ぇよ。なんだあのアマぁ!」


 突然の闖入者に色めき立つごろつきたち。黒髪の女性は、彼らを静かに見つめている。

 彼女はティオを庇うような位置に移動しており、背を向けていて表情は見えない。けれどその立ち姿は冷めた気配を纏っていた。 


「おいおい、姉ちゃんよぉ。一体どういうつもりだい?」

「邪魔すんじゃねぇ。刻むぞオラァ!」

「どうもこうも、不愉快なモノが見えたから退けただけだ。放っておいたら殺しそうだったし」


 凄んでくる悪相を気にもせず、肩をすくめて答える。先ほど蹴倒したらしき男も起き上がり、彼女を囲むのは総勢五名。

 すらりとした姿は男たちとの対比でより一層華奢に映る。だが、凛々しい佇まいの中に臆したところは少しも見えなかった。

 男のひとりがずい、と前に出る。


「姉ちゃんよぉ、そいつはシマをさんざ荒らし回ったスリのガキさ。ドロボーだよドロボー。つまらん正義感でしゃしゃり出るのは勝手だがね、ウチの頭から放置すんなって言われてんだ。……こっちの獲物だ。素直に寄越しな」


 ごろつきの中で一番貫禄のある男は低い声で言った。ティオはその内容に、崖から突き落とされたような心地になる。

 裏組織に手配が回る。それはつまり、街の孤児への死刑宣告だ。

 固まる少女をよそに、大人たちのやりとりは続いている。

 

「正義感なんぞ微塵もないが、こっちもその子どもに用があるんだよ。しかしまあ、裏の偉いさん相手にやり合おうって気もない。横槍を入れる以上タダでとは言わんさ――ほら」


 そう言った女性は何かを放り投げた。何か……何か?


(……え。ええええ、あれ、ま、まままま、魔石っっ?)


 ティオは状況も忘れて目をまん丸くした。魔石だ。あの青い光、みなぎるマナ、間違いない。しかも大粒で純度が高い!


「そいつでこの子どもの身柄を買い取る。それで手打ちだ」


 周囲の驚愕をよそに女性は平然と告げる。まるでそこらの石ころでも投げたような様子だ。だがあれは、断じてそんな価値では無い。

 たった今、下手な宝石よりも余程価値のある石を放り投げたと、このひとはちゃんとわかっているのだろうか?


 男は口をあんぐりと開け、手の中の魔石と目の前の女性とを見比べている。そんな視線は我関せずと、黒髪の彼女は呆然とするティオを抱え上げた。

 少女の手を取り、状態を確かめるようにひっくり返す。


「……辛うじて骨は折れてない、か。手酷くやられたな」


 女性は、涼しげな目元を少しだけ歪めてつぶやいた。

 その時になって、ようやく驚きから覚めた男が動き始める。

 勿体をつけた仕草で首を振りながら石を懐に収め、嫌らしく口を歪めて笑った。見るからにろくでもないことを考えている顔だ。


「おお、びっくりしたびっくりした。いい心掛けだ。だが、こんなんじゃ足りねえなぁ。姉ちゃん、あんたこの街のことをよく知らねえだろ。こっちにゃ面子ってもんがあるんだなあ……」


 粘つくような声でそう告げる。

 けれども男の表情を見たティオは、直感的に嘘だ、と思った。大人の顔色を窺い続けて十年と少し。生死に直結している分だけ見立てには自信がある。

 ちらりと見えた魔石は、輝きも大きさも、薄汚れた子どもひとりには破格だった。だからこれはいいカモだと思ったのだろう。おまけに石を放ったそのひとも、ちょっと見ないくらいの美人なのだ。

 とどめは、女ひとりに男五人という多勢に無勢だ。男の目にはあからさまな欲の色がある。


「持ってる石を全部、ついでにあんた自身も付けて貰おうか。なぁに、たっぷり可愛がってやるから安心しろよ」

「ぎゃははは、そりゃいい考えだ!」


 ごろつきたちが歯をむき出して笑う。下品さの中には野犬のような残酷さと獰猛さが見え隠れしている。

 恐ろしさと嫌らしさで、ティオはぶるりと身震いした。


「ふうん、交渉決裂か。こちらは別に構わないが……いいのか?」

 

 女性は再び肩をすくめる。欲望にまみれた目に晒されても一向に焦る様子はない。腕の中のティオの方が何倍もはらはらしている。

 けれどその眼差しは先ほどよりもずっと鋭く、触れれば切れそうな冷ややかさで男たちを貫いていた。

 この先どうなってしまうのか。ティオは固唾を飲んで見守るばかりだ。


「イイに決まってんだろうが。野郎ども、やっちまえ! 顔は傷つけるなよォ」


 掛け声と共に、ごろつきたちが一斉に詰め寄る。少女は反射でぎゅっと目を瞑った。

 ひゅ、と鞭を振るような空気の音。次いで重たい打撃音が連続して耳に届く。

 砂袋が倒れるような音がした。


「全く。せっかく穏便に済ませてやろうと思ったのに」


 身を縮こまらせたティオのすぐ近くで、溜め息混じりの声がする。少女を抱き締める腕は変わらず強く暖かい。

 そうっと瞼を開く。


 目の前に、腕を振りかぶる男の鬼気迫る形相がある。


「ひぁっ!」


 だが対する女性はどこまでも平静だった。軽く半身になって突進を避けると、男の腹に綺麗な回し蹴りを入れる。

 滑らかな弧を描く動きは、まるで球蹴り遊びでもしているように軽やかだった。

 

 だというのに。


「ぐぁあぁぁぁぁっ!」


 濁った悲鳴が響き渡る。道端の木箱を大量に巻き込みつつ、ごろつきは景気よく宙を吹っ飛ぶ。

 地面を跳ねて、二転、三転。鞠のように転がって、やっと動きが止まった。

 そうして周囲を見渡せば、伸され、ぼろきれになった男たちが倒れている。這いずるような呻きが地べたに流れていた。


 ティオを抱えたままで五人の男を叩きのめした女性は、かつ、こつ、と踵を鳴らして悠然と歩く。鼻血を垂らしてうずくまる首領格の前に立った彼女は、その顔を覗き込んで冷たく言い放った。


「お前らの頭に伝えておけ。この子どもは"金目"の探索者が買い取った、と。忠告はこれで最後だ。引き際を誤ると……命を無くすぞ?」


 優しげな声に、凄絶な肉食獣の笑み。

 そして――底知らぬ深淵を湛えて"金色"に輝く瞳。


 いつの間にか、鮮やかな色がそこにある。


「ひ、ひィィィイ!?」


 目にした者をどうしようもなく引き寄せ、粉々に挽き潰す"威"と"圧力"。苛烈な眼差しを叩きつけられた男たちは、その意気を欠片も残さず砕かれていた。

 汗と鼻血と鼻水と涙を垂らした面相は惨憺たる有り様だった。ひぃひぃと喘ぎながら、無様な足取りで逃げていく。

 ……手に入れた魔石で結果的に儲けただろうが、心には深い傷を負ったのではないだろうか。


「やれやれ……」


 振り返り、今度は少女に向き直る女性。ティオは縦長の瞳孔を持つ金眼にひたりと見つめられた。

 全身が硬直し、再び震えが走る。それは今までと別種の恐怖だ。

 ちっぽけなヒトの身ではどう足掻いても敵わない、大きな大きな存在に対面している恐怖だった。

 強く光るふたつの金色。底の底を浚うような視線に、心の奥まで刺し貫かれる。

 そうして、冷たい鋼の表情でそのひとは言った。


「さて。私は、盗まれた水晶を探してる。昨日の今日だ、まだ忘れてなんかいないだろう。……お嬢さん、在処を吐いてもらおうか?」



* * *



 ――前門の虎、後門の狼。

 狼は追っ払われたが、虎にがぶりと噛みつかれる寸前。

 泥棒の少女は、今ちょうどそんな気分だった。


「あ、あの水晶はもう、持ってないの。教団のやつに取られて……」

「教団?」

「ひっ! ふ、ふぇぇ……」


 ちいさく固まりながら、ティオは必死に言葉を紡いでいた。涙で目の前が滲む。冴え冴えと光る金眼を前に身体の震えが止まらなかった。

 だがそれを見た異貌の女性はあからさまな困り顔になった。「あー、失敗した?」と零しながら天を仰いでいる。

 そうして息を吐き出すと、少女を抱え直して言った。


「埒が開かないな。詳しい話は、別の場所で聞くとしようか」



* * *



「あんまり目立ちたくないな……」


 世にも鮮やかな色を纏う彼女は、顔に掛かる緑髪を摘んで渋い顔をしていた。次いでちらりと腕の中のティオを見やる。

 途端にびくりと身を強ばらせる少女に、女性は諦めたような深い溜息をついた。


「別に取って喰いやしないから」


 そうして「上から行くか」とつぶやいた彼女は、身を沈めて大きく跳ねた。ティオの体に、ぎゅうと押さえつけるような強い力が掛かる。

 風を切る音が耳を抜け、数拍の後に圧力から解放された。


 ――目の前の風景は一変していた。


 そこは燦々と陽の照る屋上だった。白く輝く光が眩しい。

 空を渡る風が、爽やかに頬を撫でていく。


「……へ?」


 何が起きたのかわからない。

 今いたのは、暗く汚い路地の底だった筈だ。

 それが三階建ての屋上にいるのは何故か。どう考えても変だ。


「頼むから騒ぐなよ」


 屋根から屋根へ、屋上から屋上へ。ティオを抱きかかえる女性は次々に移動していた。たん、たん、たん、と拍子を取るように、軽やかな足取りで跳躍を繰り返す。

 かと思えば今度は尖塔の外壁に身を寄せて走っている。猫くらいしか通らなさそうな出っ張りを、抜群の安定感で駆け抜けていく。


 何かがおかしい。

 いや違う、何もかもがおかしい。


 それはおよそヒトの動きではなかった。道無き道を経て、現在立っているのは時計台の鐘楼である。


「少し休憩しよう」


 言葉と同時に床へ下ろされる。ようやくちゃんと足の着く地面に辿り着いた安心感で、少女は大きく息を吸い込んだ。

 膝はがくがくと震えており、生まれたての仔馬のようだ。もういい……深くは考えまい。今この瞬間ちゃんと生きている、それだけで十分だ。

 そうやって深呼吸をすると、新鮮な空気と一緒に周囲の様子が意識に入ってくる。


 鐘楼は、時を告げる鐘を中心に四方が大きく開けた造りだ。そこからはヴァッサノーツ全体がよく見えた。陽光にきらめく海の色。波打ち際の青緑が、沖へと向かって紺色のグラデーションを描いている。

 陸を見れば純白の壁が眩しい。青空に映える赤煉瓦。その合間に、樹木の緑が瑞々しく葉を茂らせている。

 太陽に愛されし海の真珠。旅人たちがそう言って口々に街の景観を褒めそやす理由がようやくわかった気がする。

 生まれたときからいる筈なのに、こんな景色をティオは知らない。


 空がこんなに澄んでいるなんて。

 海がこんなに青いなんて!


 状況も忘れて見入るティオに、金目の女性はくすりと笑ったようだった。気配を感じて横を向いた少女は、思わず目をしばたかせる。

 混じりけ無く透明で、綺麗な微笑みがそこにあった。

 詰問されたときは本当に心の底から恐いと思ったけれど、実は優しいひとなのかもしれない。


(……というか。考えてみたら、わざわざあいつらから助けてくれたんだよね)


 不思議な色彩と驚くような力を持つ女性だが、その腕の中は暖かい。

 胸に僅かな希望が灯る。

 先行きは今も不透明だけれど、そこまで絶望するようなものでないかもしれない――そう、ティオは思い始めていた。

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