第一話: 移ろう影の時に
これは8726年、「セイリアット」と呼ばれる世界に起こった前代未聞の復讐劇である。
月下に照らされる塔の頂上にて
「ようやく追い詰めたぞ、テオファニー騎士団」
テオファニー騎士団と呼ばれる組織を追ってきた組織のリーダー、バニラ・シャドウ。
「バニラさん、やっちゃいまスカ?」
意気揚々としたバニラの組織の組織員、オモミ・ポテイト。
「オモミ、勝手な行動は許さんデ!」
厳しく威厳のあるバニラの組織の組織員、ペリアス・ソーシ。
バニラは言う
「落ち着け、我々の目的はテオファニー騎士団の組織員を拘束し、情報を聞き出すことにある」
「その為には、一つずつ過程を慎重にこなしていく必要がある」
「分かってますデ…」
「オイラ、もう我慢できないっス!あいつらは20年に渡ってオイラたちを、この街の人たちを散々奪ってきた…一刻も早く奴らを根絶やしにしたいっス!」
「落ち着け。気持ちはわかるが、まずは奴を拘束することが最優先だ。今のところ奴は一人、数的にはこちらに分があるだろう。ペリアス、オモミ、戦闘態勢を取れ」
「どうするのデすか?」
「三手に分かれ、奴を挟み撃ちにしよう。私は前、ペリアスは左、オモミは右から進行してくれ。私が『虚無魔法』で合図を送ったら一斉に襲い掛かるぞ」
「りょ、了解しました!」
「したっス!」
次の瞬時、テオファニー騎士団の組織員がバニラ達の背後に迫る
「っち!(なぜ分かった?!)」
いち早くバニラが気付く
「君達、All Time of Shadow、通常ATOSだろ?」
「よく我々のことを知っているようだな、テオファニー騎士団」
「おやおや、僕にはしっかりと名前があるんだからそう呼んでくれないと… 『カルタロウ・レイド』、しかと心に刻んでくれ」
「誰スカ?」
「カルタロウ・レイド…聞いたことがありますデ、確か異邦の地にある無法地帯を統治しているテオファニー騎士団の『ベルスタル・ルハイシェン』が率いる精鋭部隊の一人デす!」
「なるほど、ならカルタロウ。お前にベルスタル・ルハイシェンの居場所を吐いてもらいたい。素直に情報提供してくれれば…こちらも武力行使はしない、どうかな?」
「いいや、僕は武力行使だろうが何をされようが…情報は提示しない」
「なら、少しだけ痛い目を見てもらおう」
カルタロウの背後にバニラが移動する
カルタロウは唱える
「雷光!」
稲妻は即座にバニラの目の前まで迫る
「ふっ、雷属性の魔法か… 中々やるな」
即座にバニラは雷光を避け、カルタロウに接近する
「早いっ!」
カルタロウはバニラに殴り飛ばされ塔から落下する
「っち!はぁぁぁぁ!」
カルタロウは全身に魔力を纏わせ、地面に落下した。衝撃で付近の建物にひびが入り、爆風が発生する
「バニラさん、追いますかデ?」
「当たり前だ、行くぞ!」
三人は塔から飛び降りる
《◇》
【 】= ナレーション
【「虚無」、それは8種類ある属性の一つ。他の属性とはすべてを反し合い、吸収する性質がある】
カルタロウは街を走り続ける
「はぁ…はぁ…(この気配、奴らはまだ追ってきているな…)」
「(僕の使う雷魔法……彼らを撒くには充分な性能だ…)」
「はぁぁあ!雷光!」
カルタロウは水溜まりに雷光を放ち、放電させる
オモミとオリガミは足を止める
「ぬをっ!くそっ!進めないッス!」
「オモミ!遠回りするぞ!そう簡単に距離は撒かれないはずだ!」
《◇》
カルタロウは人けのない路地裏に入る
「ふうっ…よし、奴らの気配は消えたな…」
「追い詰めたぞ、カルタロウ」
バニラが路地裏に入ってくる
「くそっ、なぜ追いつけた…まぁいい、なら──」
「雷鳴墜下!」
カルタロウの足元に落雷し、地面がえぐられ下水管が破裂する
吹き出した下水は雷鳴墜下の電気を帯びる
「お前は近づけないだろう、ATOS」
「ふっ、甘い…魔法への知識が足らんな」
「なに?!」
バニラは歩きカルタロウに近づく
「おい!それ以上近付いたら──」
「はぁぁあぁあ!」
バニラは下水を浴びながらもカルタロウに接近し殴り飛ばす
「がはっ!(どうして?!)」
【虚無魔法は他の属性と相殺し合う、その為…虚無魔法を扱うバニラ・シャドウには…全ての属性に対し擬似的な耐性を持つ】
「さぁ、テオファニー騎士団。此処までだ」
「くそっ…」
《◇》
All Time of Shadowの基地にて
バニラ達はATOSのボスに
「ボス、テオファニー騎士団の組織員を捕らえました」
「ご苦労、後は私に任せろ。君達は休んでいるといい」
「分かりました、アツアゲ様」
「あぁ、それと…カルタロウを拘束した時に、彼が君たちに向けて伝言を受け取ったよ」
「なんですか?」
「僕のような月が三度昇る、君達太陽は残りの二つに追いつけないだろう、と」
「私にはなんの事かさっぱりだが…君達なら分かるかも知れないと思ってな」
「意味深ッスね」
「すぐには分からなそうだな、ひとまず…俺達は一息つこう」
《◇》
ATOS基地のバルコニーにて
「ふぅ、一件落着ッスね」
「あぁ、テオファニー騎士団。奴らの尻尾を掴めたのは15年ぶり…あの時の白髪の魔道士を逃したのは…今でも悔やまれる」
「バニラさん、過去にもテオファニー騎士団と遭遇していたのデすか?」
「あぁ、あれは俺が15歳のとき。奴は異邦の無法地帯の統治者、多くの部隊を保有している戦の玄人とも呼ばれた者だった」
「その部隊って、カルタロウもその内の一人…デすよね…」
「あぁ…アツアゲさん達が良い情報を聞き出せているといいが…」
「それより、さっきの意味深な言葉の意味を考えるッス」
「あぁ、確か『僕のような月が三度昇る、君達太陽は残りの二つに追いつけないだろう』だったな」
「三度の月の一つに、カルタロウ自身も含まれているようデすね、後二度昇る…僕たちは太陽?分からないデすね…」
「つまり、計三度の襲撃があるという事だ。一回目はカルタロウ、三度という事は後二度ある。月と太陽は互いに追いつくことは無い。だからカルタロウは俺達を太陽に例えたんだ。私たちは後二回ある襲撃に追いつく事はできないと」
「後二回スカ、オイラたちなら余裕ッスね」
「だと良いがな…カルタロウの自信的に…精鋭部隊の中でも上澄みが来る…いや、もしかしたら部隊自体が襲撃しに来る可能性もあるな」
「でも、なんでカルタロウは遠回しにオイラ達に情報を提供したんスカね?」
「自分の命が惜しかったからか…それとも──」
「考えても仕方ない、俺達は今…俺達にできる事を最大限の準備をしよう。近いうちに大規模な戦いが起こるかもしれない」
「(15年ぶりに奴らの尻尾を掴んだんだ、必ずここで奴らを壊滅させてやる!)」
《◇》
暗い洞窟にて
「ヴラード・ツエペシュ殿、All Time of Shadowがテオファニー騎士団の組織員を捕らえたとの事です。どう致しましょうか?」
「ノイズライザー、私たちの目的を忘れたか?」
「いいえ、あなた様の目的に関しては、嫌でも忘れられません。とても滑稽、ですので」
「随分と軽い口の利き方だな、お前がかつて『あの地』を救った英雄だったとしても…私は序列を、誰よりも重んじている」
ヴラードは自身の血を使い槍を生み出す
「その槍で私をどうしようと勝手です、ただ…それによって、あなたの理想が遠のくかもしれませんが」
「……」
「まぁいい、下がれ。……ATOSも、この世界も…いずれ、私が寂滅させるのだからな」




