第9章第3節第6款 何者かの言葉
ジルサンデルは、自室へと担ぎ込まれた。この時の話は、どの書物にも等しくほぼ同じ内容で掲載されている。口裏を合わせたというよりも、おそらくは事実なのであろう。現実とは思えないといえば嘘になるが、誰もが知るであろう、以下がその内容である。
ジルサンデルの周囲には、嘆き悲しむ者が多く集まっていた。ジルサンデルが崩御したことは誰もが知ることとなる。
そして数刻してから、天井から急に光が溢れ出た。その光は天井よりはるか高いところ、すなわち雲のまた上から溢れ出ていた。
何者かは、
「恐るでない。この者は幸いである。我らが望む時に、望むべき場所にいた」
民衆は、
「なぜ陛下は崩御あらせられたのですか。なぜ、我々から、指導者を奪ってしまわれたのですか」
何者かは、
「この者は死なぬ。千と二千と三千と過ぎた時、再び蘇る。それまで眠るだけである」
光に導かれるようにして、ジルサンデルのへそのあたりから光り輝くものが溢れてくる。いわゆる魂と呼ばれるものである。これは光に包まれたままで天へと上がる。
民衆は、
「良き者は良き者となる。天におわします神々よ。我らもそちらへと行けるのでしょうか」
何者かは、
「幸となるべき者よ。汝らは幸となるべき者である。全てを見渡し、全てを見通す者は、我らが求める者である」
今でも、これらの言葉の謎は解き明かされていない。少なくとも、この時より数えて6千年後、ジルサンデルはよみがえるとされている。