第7章第3節第9款 若者
1日かかり、老人を家まで届けると、さらに1日かけて元の木のところへと戻った。
すると、こんどは若者が倒れていた。
イカムルードは、
「大丈夫ですか」
若者は、
「いや、大丈夫だ。何ら問題はない」
だが、若者は2、3歩歩くと、倒れこむを繰り返していた。
イカムルードは、
「どうであろうか、このような怪我人を、ここに置いていくわけにはいかない」
ジルサンデルとスワキサルザは、
「その通りであり、イカムルードの言うとおりである」
イカムルードは、二人の答えを聞き、若者へ手を差し出した。
「どうでしょうか、あなたの怪我を診させていただけないでしょうか」
「あなたは医者なのですか」
「その類です」
この当時は、神官は医者であり、託宣によって治療を行うということが主流であった。
イカムルードは、木の根のところへ若者を寝かせると、足の様子を診る。
数分でカバンの中の物を使って、治療を施す。
イカムルードは、
「これでどうでしょうか」
若者は、よろめきながら立ちあがったが、まだ頼りない足取りだ。
イカムルードは、後ろに控えていたジルサンデルとスワキサルザへ、
「この者は、まだ足取りが良くない。家にまで付き添いたいと思うのだが、どうであろうか」
ジルサンデルとスワキサルザは、
「イカムルードよ、それは正しい選択であろう」
そう言うと、イカムルードが肩を貸し、その若者をイカムルード、ジルサンデル、スワキサルザの3人が家まで連れて行った。