第7章第2節第2款 発生後
船は30日の間浮かび続けていた。
とある山に引っかかるようにして止まり、それから、水が引く様子がよくわかった。
村長は、
「神よ、我々は、船を降りるべきでしょうか」
スワキサルザ神は、
「いや、まだこれからだ」
そして、再び嵐を巻き起こした。
それを5回繰り返すと、ちょうど半年となった。
村長は、
「神よ、我々は、船を降りるべきでしょうか。村民もそろそろ食料が付き始めております」
スワキサルザ神は、
「ああ、次に船が着いたところに、新たな村を作るのがいいだろう。これからは、おぬしらがこの世界を我らの代りに治めていくのだ」
水が引き始めたと村人の誰かが叫ぶと、一斉に船の両脇から、陸地がないかを探した。
だが、陸地は見つからない。
確かに、雲が遠のいているから、水は引いているのだが、いつまでこうなのかがわからないのだ。
だが、村長は、強く待った。
神が言った通りに、船が着く時を待っていた。
ガコンとなにかにぶつかるように船は止まった。
そこは、岩山の上ではあったが、周囲も平原に近い、なだらかな稜線を描く丘だった。
村長は、
「神よ、我々は、ここでこの世界を治めていきます」
まず村長が行ったのは、周囲の調査だった。
[著者注釈:現時点では、ここがどこかというのは判明していない。だが、エルハンドラ皇帝陛下がおられる宮殿は丘の上に建てられていることが知られており、そこではないかという説が、最有力である]
そして、ここに、初めての家を建てることにした。
ちょうど、船から降りる直前、三つ子が産まれた。
妻がその三つ子を連れて船から降りると、どこからともなく、白い馬、黒い馬、灰色の馬が現れ、それぞれの子供の頭にすり寄った。
村長は、
「この子らが、これからを担っていく者たちです。名前を付けてくれませんか」
馬は、蹄で地面をえぐった。
それは、文字となった。
村長は、
「これは、何と読むのですか」
だが、子供らがそれぞれの名を叫んだ。
曰く、第一子はスワキサルザ・エルハンドラ。
第二子はジルサンデル・エルハンドラ。
第三子はイカルムード・エルハンドラという。
第一子は村長の後継ぎとして育ち、第二子は人々を治めるために育ち、第三子は神々と話すために育った。