5話
今できる限りの魔導核との融合を果たしたところで、精霊らしく行動していみようと思う
核だけの今なら堅固な鎧がない代わりに、周囲のものを好きに纏うことが出来るだろう
自身が精霊だと認識してからは早かった
先ほどまで試し試しだった元素の扱いも生まれ持った感覚で巧みに操作していく
地面に潜らせるように自身の中から薄く魔力を伸ばしていく
雨が降ったのか少し湿り気の残る土に浸透させるように、そして十分に染み渡ったところでこちらへと引き寄せる
(成功だ)
両拳ほどの大きさだった核に粘土を練るようにして土がまとわりつけば、ほどなくして頭の欠けた2mばかりの人型ができあがる
この先は予想できているが
試しに立ち上がろうとしたところ
(やはり難しいか)
ぐしゃりと音を立てて、膝も立てれないうちに足から手から崩れてしまう
見た目だけ人型になったとて泥の塊である以上、骨のような支えがなければ歩行はおろか立ち上がることすらままならない
自然発生した精霊人形はどのようにしているのだろうか?
まさか「ほかの素材で骨を作ろう」などという知恵が、進化も迎える前の精霊にあるとは思えないが
あれらは確かに、這うようにではあるものの歩行はしていたはずだ
そういえば腰よりも上は足の側に比べて若干固いように思う
違いといえば、採取した距離...
(そういうことか)
泥でできた足の中心から腰へ、およそ人でいうところの骨にあたる部分をより多くの魔力をで固めるように形成する
地面から体を押し上げるように、垂直に体を構成していく
やがて、2本の泥の柱の上に乗るようにして泥の箱ができる
これではまるで街の門のようだが
まだ拙くあるものの、成功と言っていいのではないか?
かなり遠くから見れば間違いなく2本足で立つ生物に見えることだろう
たぶん
問題は関節がないのでここから動くことができないのだが
骨代わりに他のものを混ぜたとして、別素材があることが前提では精霊人形本来の利点
核を破壊されない限りすぐに再生することが困難になりかねない
いざというとき手足が破壊されてすぐに骨が用意できなければ、使い物にならなくなってしまう
より固い鉱石などで構成されない限り同一の素材で構成した方がいい
慣れるという意味でも今は土や泥が最適だろう
しばらく試行錯誤した結果
魔力を多めに込めた土で細い体を作った後に、全体を薄い魔力で操った泥で覆うことで安定を見せた
土人形と泥人形の混合といった形だが土以外は使っていないので
素材の違いによって起こる、魔力の浸透速度の差による抵抗はほとんどないと言っていいだろう
他の種類の精霊人形がどのようにできていたか考えてみたところ木人形が柔らかい
外皮と固い芯の2層で構成されていたことから着想を得たのだが
大まかに、肘、膝、など大きな関節にあたる位置の土を球のように固める
それを上下からこれまた固めた土で押さえつけただけだ
動かすたびに摩耗するが、周囲の土を貼るように固めなおすことでいくらでも再生できる
実際の土人形がどう動いているかなど中身を割ったことがないので知らないが、いまはこれが精一杯か
無事成功し先に進めそうでひとまず安心した
このまま動けず乾いた土の塊にでもなるかと思っていたが、そうはならないことに対しても
ようやく移動を開始できる