2話
(私のような...騎士?)
頭痛がする
頭はないのだが、何かが締め付けられるような感覚がある
これはだめだ
一旦考えることを強引にやめることでしばらくすると痛みは治まったが、疑問は尽きない
ここにきて自身に関する記憶への取っ掛かりができたのだ
これを逃してはならないという気持ちと痛みへの躊躇いが同居している
しかしながら迷ってなどいられない
意を決して、自身が騎士であったということに対して意識を集中させる
再び思い出せるかというときに、またあの痛みが体を訪れる
しかし、先ほどのような激痛ではないことが助けとなった
(そうだ、私は..騎士、騎士としての責務を全うして、そして...)
いまいち思い出せない。
だが痛みと引き換えに、自分の使命、そして命をもってそれを果たしたことまでは思い出せたか
殿下は、
そうだ
姫殿下はご無事なのだろうか
なぜ忘れてしまっていたのか
思い出して真っ先に、身命を賭して逃がした殿下の安否が気にかかる
彼女が生きてさえいれば、国は滅んではいない
再び研究者を集め、新たな国を興すのだ
人類の力をもってあの災厄を打ち倒さなければならない
・・・・
殿下の行方を追おうにも体が動かないのでは話にならない
どうにかして動く方法を考える必要がある
精霊の体なのであれば魔導核から離れて行動ができるのではないか?
(試してみるか)
ふと思い立ったら即実行である
精霊の体に意識を集中し、移動を試みる
だが
(..半分も抜けられない)
橙色の光の玉が白色の石から分離を試みているが、上半分も離れないうちに石に引き戻されてしまう
なんとなく予想はしていたが、魔導核は精霊を強制的に定着させたものだ
通常の精霊人形と違い、今のこの身では精霊自身の意思で自由に離れることなど到底叶わない
方法を変えよう
精霊兵は予め鎧として加工された魔法金属を多少変形させる機能しかもたず精霊自身の意思で元素を纏うことはない
しかし今の自分は魔導核と、それに入り込んだ...意思を持つ精霊が一匹である
もしかすれば本来の精霊人形のように周囲の物質を纏うことも可能かもしれない
可能な限りの手段を尽くす
恐らく今の自分は、微精霊でしかない
本来精霊の自我というものは、発生してからそれなりの時間がたち下位精霊になることでようやく芽生えるものだ
おそらく中位魔導核に宿ることで魔導核に宿る魔力と蒼水銀による親和性強化の影響で存在が一時的に強くなっているに過ぎないと推測している
自身が魔導核に宿る精霊だと認識したことで、するべきことは明確になった
偶然だとして、ならばこれを全力で利用すべきだ
随分劣化しているものの、中位魔導核の頑丈さは下位とは比較にならない
どうせ核から離れられないのならばより定着するまで
精霊兵の人口精霊は意思を持たないようにできている、なんらかの機構によって今の自分の意思が抑制されるということはあるまい
魔導核に使用される魔力結晶は複数の元素の結晶であるから、地の精霊であっても力の行使に多少苦労するかもしれない
蒼水銀は減っているようだが、これを利用してより核と親和性を高めより性能を引き出すべきだろう
魔導核の中に集中し、宿る魔力とのつながりを残されている蒼水銀を使って高めて...
吸収と同化を始めてすぐ、流れ込む記憶
これは魔力ではない、これは
生命だ...




