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0話 プロローグ

拙いですが、1話だけでも最後まで読んでいただけたならうれしいです。


 冷たく静まり返った廊下

 重苦しい空気がまとわりつく


 街を焼く炎の赤が雲にまで映り、その明るさが窓から足元を照らす

 空を覆う雲からは微かに雨も降り始めているが、炎はより一層勢いを増している


 遠くから迫る音から逃げるように響く足音が2つ

 近衛の証である精霊兵の鎧を身に着けた騎士

 彼に手を引かれるようにして走るのは、齢14にも満たない姫


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一刻の猶予もない

 既に帝都守護の要たる魔導天蓋は破壊され、暴走した精霊兵も殆どを切り伏せ残っていない

 仲間たちは姫を逃がすための囮となって一人また一人と減り、ついに自分だけが残っている


 愚かだったのだ

 近年の目覚ましい技術の発展は人類の力を飛躍的に高め、古より続く人と魔物の生存域の境界線

【魔の領域】を彼方へと押しやった、それで満足すればよかったのだ

 そのままの勢いに任せ奴らのすべてを殲滅せんとした、それが間違いだった

 領域の奥地に住まう魔の住人達もまた、強い力をもってこちらを押し返した


 焦った人類は未完成の技術に手を出し

 そして今、人類栄光の象徴たる帝都は炎に包まれている

 もはや誰の責任などと問う暇もなく、それをしでかした者たちはとうにこの世にはいまい

 これは人類全体の驕りが招いた結果なのだ

 誰もが人類こそがこの世界の頂点であり、全てを手に入れるのだと信じていた


 災厄の迫る音が近づいてくる

 人が生み出したあれに人が滅ぼされるのはもはや必然なのだろう

 だが国の精鋭たる騎士として、最後の勅命を果たさねばならない


 城にはいくつかの避難用の地下通路が存在する

 あれの破壊の規模を見れば、地下に潜ったとて無事で済むとは思えないが

 まっすぐ西へと向かう通路であれば、あるいはこの災禍から逃れ得るかもしれない


 ほどなくして回廊に出て奥まった倉庫までたどり着く

 積まれた荷をどければ、そこには隠し通路の戸がみえた


 長く使われていないのだろう、軋む戸を床から剝がすように開ける

 そこまでたどり着いて、しかし私は行くことはできない


「なぜ共に来てくれないと言うのですか」


 通路の前で姫が私に問うが、最もな理由がある


「恐れながら姫殿下、私の精霊兵(エレメンタル・ガード)では王族であるあなたの精霊兵の速度に追いつくことなどできませぬ

 私を置いて先にお逃げください」


 まだ成人前の子供だが、王族用の精霊兵に用いられる高位魔導核は近衛用のそれと比較しても性能が違う

 精霊との親和性と機体の性能、双方ともにが姫について行ける理由にはならない


 一人で行けというのか?という感情が姫の表情に現れて消える

 理解しているのだ

 皇帝からの逃げろという願いと逃がせという命令はここで別れる時だと


「必ず、追いついてください」


 背後からかかる言葉に私は何も返せない

 そして姫が去る音が聞こえたのち、荷物を上に戻し通路を隠す


 立派になられた

 私が護衛の任に就いたころはまだ弱く幼い子供だったというのに


 まだ成人前だというのに、いつの間にあれほど大きく


 別れ際に見えた横顔

 決意に満ちたその凛々しさはまるで在りし日の母君のようでした


 「どうかご無事で」


 それからどれだけたったか、たとえ数分でもこの時ほど人生で最も長く感じたことはない


 遠く東

 避けようのない死の迫る方向から、この国で最も偉大な魔力の波動さえも、より大きなものに飲み込まれたのを感じ取った


 ああ陛下

 

 御身の願いは無事果たされましたと、心の中でつぶやく

 そして、


 来た。


 全てを覆い隠すような闇のヴェールをまといながら、嵐の音を引きずってそれは現れた

 帝都全体から見える中央広場の時計塔

 それを見下ろすほどに巨大な黒い竜巻が、いまだ街に広がる炎さえも飲み込みながら迫る


 あれは魔力の大きいものに惹かれる習性があるという、であれば大型魔道炉のある帝都に当分は留まるだろう

 だからこそ陛下は御身を盾に姫を逃がしたのだ。遠く離れればこの怪物とてすぐには追うまいと


 私は騎士だ、ゆえにあれと戦わねばならぬ

 陛下と共に先に逝った仲間に報い、最期の勅命を果たすべく姫の梅雨払い程度はしてみせよう


 暴走した魔力に曝され正気を失った精霊兵と切り結ぶ

 奴の意思が影響するこの兵たちを残せば姫を追う可能性がある以上、一体たりとて残すわけにはいかない


 長年付き合ってくれた精霊兵に、自身の魔力(マナ)を注ぐ


 しかし近衛騎士の魔力といえど上位精霊でもなければ奴に意思を持っていかれるかもしれない


 ...

 弱いな


 たとえそうなったとしても全力で抗ってみせよう、それが騎士というものだ

 これが私の最後の戦いなのだ、弱気になってどうする


 体に纏うように展開した精霊兵から光が走り、全身が生命の輝きで満たされる


「相手にとって不足なし!!!!」


 あれの魔力にあてられ正気を失った精霊兵の群れが、殺到する


 波のように迫る敵へ、水面へ投げ込まれた石のように立ち向かい




 どれだけ戦ったか

 地面に膝をつく男のそばには無数の精霊兵の残骸が散らばっている

 数十か、あるいは百にもとどくか


 しかし全てを破壊するには至らなかった


「ある程度の役目は果たせたか...」


 散らばる亡骸を踏み砕きながら、周囲からはじわりと敵が迫る


 ふと思う

 死ねば魂はどこへいくだろうか


 色々な考えが巡る


 また皆に会えるだろうか


 この戦いが終わったら、まずは仲間に戦果を伝えよう


 特に私は大金星だろう、なんせ姫殿下を守り通したのだ


 それからやれどちらが倒した数がおおいのと自慢しあって、酒を交わして、喧嘩をしよう


 それから・・・




 何をしている

 こんなことを考える余裕が残っているとは、笑える話だ

 目の前にはまだ敵がいるというのに


 鎧が砕けてもまだ手足はついている

 振るえる剣はある


 先ほど己を叱咤したばかりだというのに

 最後の最後でみっともない姿を見せるところだった

 これでは皆に笑われてしまうだろう


 まだ終われない

 心が叫んでいる


「ーーーーー!!」


 声にならない叫びをあげて、体を奮い立たせる

 もはやどこに力が残っていたのかわからない


 身が引き裂かれるような痛みに気が遠くなる

 今全力を尽くさずいつして何が出来ようか

 歯を強くくいしばり今にも折れそうになる膝を奮い立たせる


 限界を超えた力の行使に精霊兵を通して体が生命(オド)の輝きに包まれる


 本来、生命を自らの意思で力として行使することは不可能である

 生命は己の命であり寿命そのものでもある、後天的に回復はしない


 しかし極限まで追い詰められた肉体と精神が、強烈な意思の力によって最期に応えた

 燃え尽きる直前の灯が、終わりを迎える魂が、まだ燃え尽きんとより一層煌めきを放つ


 生命も魔力も限界を迎えて

 それでもなお体に湧き上がる衝動のすべてを崩れた鎧に注ぎ込み、


 目前へと迫っていた黒い嵐に向かい叩きつけ


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








加筆修正。。。。

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