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草食

作者: 芋姫

初対面からぐいぐい来る男だな、と思った。


そこそこイケメンであるせいか、自信満々なのが手に取るようにわかる。・・・しかし、はっきり言って好みではなかった。


合コンで向かいに座った瞬間から、彼は私に対して猛アプローチを繰り広げてきた。


”絶対、俺ら合うと思う。 一目で気に入った系。 めっちゃ可愛くね? 超マジ運命感じるんですけど~。”


いい年して一昔前のギャル男みたいなしゃべり方も気に食わない。視界の隅で、チャラ男が私を延々と口説き続ける様子を見て、一緒に参加した友人が羨ましそうに私を見つめているのに気が付いた。


が。 人それぞれ好みは違う。 無理な物は無理だ。


(私も超マジでお前が無理なんですけど~。) と、私が心の中でつぶやいていた時だった。


お待たせしました~。と、店員が料理を運んできた。


「”油自慢!こってり、どろどろ!しつこいは正義!!当店自慢の看板メニュー『これでもかよ!?とんこつラーメン定食』でございます。」


斜め前に座る大人しそうな男性が控えめに手を挙げた。


・・・こんなの食うのか。意外だった。皆も私と似たような反応をしている。本人はなんだか照れ臭そうな表情を浮かべている。


その間にも次々と料理が運ばれてくる。


「お待たせいたしました。”大人になっても・・子供心を忘れない♥”『ラブリーキュートでファンタジーなふわふわデミグラスソースオムライス☆デザートにプリン付き♪』でございます。」


反対側の斜め前に座るザ・やり手の営業マン、という感じの話し方も知的な男性が勢いよくバッと手を挙げた。


その様子はまるで子供みたいだった。 ・・・もしかして、仕事、辛いのかな。 

彼のオムライスには旗が付いていた。


料理はどんどん運ばれてくる。 すべて耳を疑うような名前であった。今回セッティングした友人のひとりが”ちょっと変わった店で話題になっているから”、という理由で数か月前から予約したのである。店に来てわかったが、料理自体はおそらく普通なのに、<メニューの表記の仕方>がふざけているのがこの店のウリのようである。


・・・まあ、私の頼んだ料理も負けないくらいの強烈な名前で記されているのだが。



ちなみに私と向かいのチャラ男の料理だけがまだ運ばれてきていない。


お腹すいたよ。


こいつは何を頼んだのだろう。 私との会話がひと段落したチャラ男は、一見気が短そうだが特に気にした風でもなくドリンクを飲みながら、スマホを操作している。


黙っていればかなり好感度が高いのに、なんだかもったいない男である。


そのとき。


「大変お待たせしました~。”気安く触ると火傷するよ!ビリビリ悶絶、脳天直撃、100年の眠りも一瞬で覚めてしまう”『サルサソースたぁっぷり、激辛タコライスBセット』でございます。」


おお、来た来た。 男性陣が引き、チャラ男も目を丸くしているのがわかったが別にどうでもいい。

今回のハズレ合コンは料理を楽しむことにする。


そして、同じタイミングで別の店員がチャラ男の前に料理を置く。


「お待たせいたしました。”健康が一番。カロリー抑え目。”オーガニック野菜”を中心とした丁寧な一品一品は控えめながら見た目にも美しい、料亭の様な<美と和>の競演。上品な味わい”『ヘルシー野菜和食御膳、旬のきのこの天ぷら付きセット』でございます。皆様、ごゆっくり、どうぞ。」


店員が去ると同時に、


さ、皆そろったから食べようか、と誰かが言い出したので私たちは料理を食べ始めた。


誰も突っ込まない。 何か変だぞ、と思いながらも私はタコライスをぱくぱく食べる。


普通。案の定、常識の範囲内の辛さである。 ふと、視線を感じたので顔を上げると、チャラ男が驚いた様子で私を見つめている。


「何か?」と私。 すると彼はこう言った。箸の持ち方がとてもキレイだった。見かけによらないもんである。


「・・・・いや、そんな辛いの食えるなんてすごいっすね。俺、辛いのは全部が駄目なんで。」


男なのに、と言って静かに苦笑した。


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・・・・キュンとしてんじゃねーよ、私!!




































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