1話 令嬢と詐欺師のプロローグ
ある夜、その男は大金の入った封筒を見つめほくそ笑んでいた。
彼は所謂『詐欺師』というものだ。
今回は老人夫婦を狙ったオレオレ詐欺だった。
その前は架空料金請求詐欺、その前はパチンコ帰りのオヤジを狙ったギャンブル詐欺、
その前は30代くらいの女性を狙った交際斡旋詐欺
このように彼は次々と狙いと手口を変え、金をもぎ取る凄腕と言ってしまうと世の中に悪いが、警察も手を焼く詐欺師であった。
片手に持った分厚い封筒を見ながらニヤつく男こそ「三浦 小次郎」である。
そんな彼にも遂に終わりが近づいているようだ。なぜなら後ろから刃物を持つ人影があったからだ。
突然の痛みと数瞬後からの背中の熱さ。
段々と意識が薄れ、瞼は重い。
冷たくなる指先、そして最後に見たものは赤黒い液体の滴る包丁を持つ男だった。
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そこは魔術と武器がぶつかり合う世界。
フレイスティアという惑星には大陸が3つある。
南方大陸、北方大陸そしてそれらに挟まれるように存在するボーロルイズ大陸である。
ボーロルイズ大陸はフレイスティア唯一の統一大陸でまたの名をボーロルイズ統一国と呼んだ。
フレイスティアの人類の共通認識として魔物は危険であり倒さなければならない。というものがある。
人が魔物を倒すには、斬る、刺す、叩くとただ武器を振るえばいいというものではなかった。
奴らの毛皮や殻は強固であり、その上魔力を纏うせいで物理だけでは討伐することが難しいのだ。
魔物に手も足も出なかったのが500年前のこと。人類は魔物の使う不可思議な現象『魔法』を真似ることで討伐の糸口を作り出した。そしてその技こそ『魔術』である。
魔術を開発した数年後これを更に効果的に扱うために研究を重ね生まれた物が『魔動機』であり、これを応用して人型兵器とした。名を『魔動騎士』と呼ぶ。
魔物を討伐するため魔動騎士に乗る者を騎士といい、その騎士を育成する教育機関がボーロルイズ、南方大陸、北方大陸にそれぞれ存在する。
ボーロルイズは大国なだけはあり他の教育機関と比べると施設が充実しているため、一流の騎士を目指す者はボーロルイズ王都『バルベルデ騎士教育校』を目指し遠方からも足を運ぶ。
そのバルベルデ騎士教育校に一人の令嬢がいた。
名を「アレクサンドラ・マタニエル」
騎士の中でも女性というのは珍しくなく、むしろ貴族の生まれであれば国民のために魔物を討伐するというのも義務である。そのため、彼女がこの学校に通うのも必然ではあった。
しかし、彼女は所謂『落ちこぼれ』であった。
まず彼女には武器を扱う才能がない。いくら魔術で戦うとは言うものの武器が振るえなければ戦場ではすぐにお陀仏だ。
次に魔術の才能もない。なまじ座学は出来るため能力が浮き彫りになりすぎて目立つ。
結果彼女は学校内でも有名な落ちこぼれとなった。
そんな彼女は夏季長期休暇に帰郷した。
落ちこぼれを悩みとした彼女に家族が家庭教師を充てた。
この時が伝説の詐欺師と落ちこぼれ令嬢が邂逅した瞬間だった。
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