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魔術学園の女神様(読切版)

作者: Shirousagi

魔術学園の女神様(読切版)です。宜しくお願い致します。


 俺はスマートフォンを眺めながら、はぁ、とため息をつく。


 「おはよう、緋彩さん」


 ふわりとした挨拶を受け、反射的に返してしまう。スマートフォンからは視線を外し、彼女、水無月に向けた。


 「おはよう、水無月」


 水無月雫。それが、彼女の名前である。目鼻立ちの良く滲み一つない白雪のような肌。触れなくても分かる程、肌艶はよく、はりがある。身体は女性らしい丸みがあり、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。彼女を見て、100人中100人が印象に残るのは彼女が持つ髪だろう。白銀の艶やかな髪は太陽の照らされれば綺麗に透けるほど。その白銀の髪はショートボブでカットされ、とても可愛らしいものだった。そんな美貌を持ちつつ、学力においてはテストを行えば、学年一位なのだから、天から与えられた二物と云われても仕方がない。彼女自身、自らを律し、努力してきたものであろうとも。性格は女性からも、男性からも受けがよく、優しさのあるところから与えられた称号は”女神”。


 そんな彼女は俺と同じクラスに所属するクラスメイトである。さらには、窓際の一番後ろにいる俺の席の隣に座るお隣さんである。俺はそのせいで男子生徒からは常に恨みがましく見られているのだから、早く席替えしたいななどと俺は常に考えてもいる。それでも、彼女は俺の隣の席に必ずなることを今の俺には知る由もないことであるのだが。


「今日はとても天気が良いですね」


 俺は窓のほうを向く。そこには一面がスカイブルーの蒼い空があった。雲一つない綺麗な空。もう、あの季節になるのか。


「だな、傘というお荷物を持たなくて済むしな」


「それでも、折り畳みは持っておいたほうがよろしいかと」


「そうか?俺は少しでも鞄は軽くしておきたいんだが」


「そうですか、であればロッカーに閉まっておけばいいだけなのでは?」


「なるほど」


 そこまで考えたことなかったな。


「失礼かもしれませんが、その鞄には何が入っているのですか?」


「別に失礼ってほどでもないんだが。見るか?」


 俺は黒いリュックサックを開く。そこに入っているのは……


「残念だが、何も入っていない」


 彼女の眼が一瞬残念そうにしていたがそれは見なかったことにする。


「俺はどこぞの阿呆と違って変な雑誌とか漫画本とか持ってきていないんだ」


「だれが阿呆だ」


 俺のボケにちゃんと反応してツッコミを入れたのは、風流翔。俺の友人である。茶髪の短髪は整えられ、好青年を思わせる。イケメンの分類に入るほうだと俺は思っている。彼は俺の前の席に座り、身体をこちらに向けていた。


「あ、いたのか、翔」


「ずっといたんだが」


「気づけなくてすまんな」


「お前、殴っていいか?」


 彼は右腕で拳を作り、アピールする。


「暴力ではなにも解決しないぞ」


「俺が満足すれば、それで構わない」


「そう奴がいるから、犯罪は増えるのか……」


 こんな話をしている間、水無月は楽しそうに聞いていた。


「仲がよろしいようで、何よりですね」


「仲が良すぎても色々大変なこともあるがな」


「仲が悪いよりはいいだろ?」


「まぁ、それはそうだな」


「それはそうと、先程、ため息をつかれていたような気がしますが、どうされました?」


 彼女が俺に近づき、スマートフォンを注視する。あまりにも近いため、彼女からは甘い香りとレモンのような柑橘系の香水の香りがした。それが、あまりにも俺のような年頃の男子高生には刺激が強すぎて、心臓がばくばく、と高鳴る。俺は心臓の鼓動を抑えるため、スカイブルーの空を見て鎮めることにする。


「ゲームですか?」


「あぁ、そうだよ。今日からゲームがリリース一周年記念でな。アニバーサリーガチャが始まった

ものだから、ため込んだ石を使ったんだけどな、爆死だった」


 俺の隣にいた翔はけらけらと笑うものだから、俺は右手で小突く。「痛ッ」という声が前のほうから聞こえるが、無視する。お前が悪いんだから


「爆死と云うのは?」


「欲しかったキャラクターは何一つ当たらなかったんだ」


「そうだったんですね、それは残念でしたね」


「あぁ、二百連分だからなぁ」


「二百連の価値がよく分かりませんが、どれ程のものだったんですか?」


「あぁ、俺は課金勢、現実の金を使ってゲーム内のアイテムを買うことまではしていないが、二百

連分は、石が十連分で三千個を使用するから、六万個の石を使用したんだ。もし、課金で手に入れた

ものだとしたら、五千個あたり三千円だから、三万六千円だな」


「三万六千円もするんですね、学生にはなかなか手が出せない金額ですね」


 彼女は驚きが隠せない表情であった。


「だろ、それをクエスト報酬やらログインやらで半年間ため続けたんだがなぁ、それを……」


「でも、いいだろ結果的に手に入ったんだから」


「あれ、そうなのですか?」


「まぁ、そうだな手には入った。天井って呼ばれるいわば200連したときにポイントがもらえてそれで交換したんだ」


「なら、良かったですね」


「できれば、ガチャで取りたかったな。救済措置で手に入るのとガチャで手にはいるのでは、その

時の高揚感とか達成感が違いすぎるからなぁ」


「天井まで引いているのを初めてみたけどな」


「うっせ」


 取り敢えず、翔をもう一度小突いておき、話題を変える。


「にしても、この学園にいると異世界って感じだよな」


 そう、ここは異世界と呼ぶに等しい場所である。理由は至極簡単。ここは魔術学園であるのだから。


 魔術、それは人類が自らに架せられた進化の限界を試行錯誤による研鑚を続けた先に限界の枷を外し生み出された神秘の力である。昔はその強大な力故、魔法と呼ばれていたが、科学の進歩と共に誰もが使える程となり、価値を落とした結果、魔術と呼ばれるようになった。今なお、現代の科学を以てしても起こせない現象もあることから、魔法も存在するが。それは兎も角、その魔術が日本に伝来したのは戦国時代の有名なお話により、ヨーロッパから技術を授かった。そこから、日本では少しづつだが、魔術者と云われる魔術を行使する者が増えるのだが、影の第二次世界大戦ではその殆どが戦死し、魔術者人口は減少傾向にあった。減少にあった原因は他にも、一家相伝と魔術を外部に見せることを嫌うという風潮があったということもあった。だが、近代の日本政府は今後起こるであろう第三次世界大戦、や周辺諸国からの防衛という目的で秘密裡に魔術を教える学園を5年前から始めた。その第一高校であるのが、ここ桜花学園である。ちなみに桜花の意味はここが元は無人島であったときに桜花島といい、桜の木が数多く植えられていたからとのこと。


 俺たちはこの学園に入る際、幾つかルールがあった。


”一つ、魔術は国家繁栄と防衛の目的のためであり、いかなる理由であっても他の行使を禁ずる。


 一つ、この学園入学後、外部に魔術を流出させないこと。


 一つ、魔術を日常生活において行使しないこと。


 一つ、魔術を行使できる区域は指定区域のみとする。


 一つ、魔術発展のため、指定区域内であれば、他生徒との決闘を可とする。


 以上、魔術学園五箇条は未来永劫、追加、削除を不可とする。”


 これがこの学園にある五箇条である。この五箇条を基に作成されたのがこの学校の校則であるのだが、校則上、階級クラス制度や、決闘デュエル制度が生まれたわけだが、まぁ、そこは俺たちには関係のないことだ。なんせ、俺と雫は魔術の階級制度にも決闘制度にも興味を示していないのだから。まぁ、そこにいる翔は階級制度によるBクラスであるのだが、どうでもいい。

 

「おい、いま内心俺のこと考えなかったか?」

 

「お前って自信過剰じゃないのか?」

 

「いや、いま絶対俺の事だった!」

 

「うっせ」

 

再び小突く。

 

「おまえいい加減小突くのやめろ、脳細胞が減るだろ」

 

「小突く前からないだろ」

 

「それは失礼過ぎませんかね、おい」


 俺は翼を無視する。


「魔術なんて架空のお話の中だけだと思っていましたよ」


「俺もだ」

 

「でも、魔術が日常的に行使できないので、こうしていると普通の学園生活ですよね」

 

「だな、まぁ、毎月10万円支給だから、日常生活でも少しは違うけどな。それでも、治安がいいのはいいことだ」

 

「ですね。私としては魔術の授業で皆さんよりも機敏に動けないため、お邪魔になっていないか心配ですが」

 

「水無月のこと邪魔なんて思ったことなんて俺含め誰も思っちゃいないと思うぞ。水無月は身体的なハンデを背負いながらも全力で取り組んでいる。定期考査前はクラスメイトに勉強も教えている。そうやっているから、みんなのやる気も上がるんだと思う」

 

「そう……ですか」

 

 彼女はやや視線を外す。その仕草からも明らかに照れていることが俺にはばればれなんだが。




 お昼になると、俺は朝買ったコンビニ弁当を机に上げる。

 

「緋彩さんはコンビニのお弁当なんですね」

 

「まぁな、学食は人が多くてゆっくり出来ないしな。特にランチルームのテーブル争奪戦が面倒だ」

 

「窓際の席は人気がありますからね」

 

 ランチルームは窓際からは自然の滝と木々が伺え、和の趣があるのが特徴である。見ていると心が安らぐとのことで絶大な人気がある。特に夏は窓を開けるだけで涼しい風が流れてくるのだから、学園側は電気代も浮き、一石二鳥である。

 

「にしても、水無月はいつも手作り弁当だよな」

 

「えぇ、弁当にしたほうが。栄養もバランス良く採れますし、経済的で良いんですよ」

 

「そうなのか?」

 

「そうなんです」

 

「俺は料理が出来ないから、経済的とはいえ、難しいな」

 

「そうですか?私もそこまで得意とは云えませんが料理本を見ながらそれ通りに作れば味は良いものができますよ」

 

「そうか?料理本って結構大雑把な表現がされていて俺みたいな奴にいは理解不能なんだが」

 

「料理の経験が足りないからだと思うので経験を積んでください」

 

「はい」

 

 俺は彼女の弁当をやや気づかれぬよう見る。まじまじと見たら失礼だしな。彼女の弁当は確かに栄養バランスが良さそうだ。そして、彩どりよく構成されているため、食欲が増す。特に卵焼きが丁度良い黄の色。旨そうだ。

 

「あの、卵焼きお好きなんですか?」

 

「まぁ、そうだけど。なんで?」

 

「ずっと見られていたようだったので」

 

「俺そんなに見ていたか?」

 

「えぇ」

 

「悪い、食べづらかったよな」

 

「いえ、そこまででは」

 

「そうか」

 

「もしよければ、食べます?」

 

「え、いいのか?」

 

「えぇ、良いですよ。緋彩さんの弁当を見ていると栄養が偏っていますので」

 

 確かに俺の弁当は唐揚げ弁当である。唐揚げが五つ入り、後は白米と少しのポテトサラダ。

 

「ブロッコリーもあげますよ」

 

「いいよ、水無月に悪いし」

 

「いいのです。緋彩さんの栄養が少しでもバランス良くなればそれで」

 

「分かった。じゃあ、頂くよ」

 

「はい」

 

「えっ」

 

「違いました?」

 

 彼女は卵焼きを自らの箸で取ると、俺に向けて差し出す。

 

「いや、水無月。それは……」

 

「私の箸では嫌でしたか?」

 

「そんなことない!だが、水無月はいいのか?」

 

「えぇ、気にしませんよ」

 

 まじか。俺だけなのか、ここまで鼓動が高鳴り、頬が熱くなっているのは。

 

「じゃあ、いただきます」

 

「召し上がれ」

 

 俺は意を決して彼女が差し出す卵焼きを口にした。

 

「どうですか?」

 

「……旨いよ」

 

 甘さは控えめでありながら、出汁の効いた卵焼きはとても旨かった。が、しかし、恥ずかしさのせいで、味覚と脳がフリーズして麻痺しているが。

 

「それは良かったです」

 

 彼女の微笑みは”女神様”の名に恥じないものであった。それだけはキオクしている。このキオクはたとえ、どんなことがあってもこれからも残り続けるだろう。


End Ep00 prologue


 


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。本作はファンタジーとホラーを書く私がなにも考えずに書いた物語です。10分程度で書いたショートストーリーであるため、本作のタイトルである魔術学園らしさが全くありませんが機会があれば、書こうと思います。つまり、PV次第の投稿と云うことで。

今後もよろしくお願いします。

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